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第26話◇

【side*玲央】  5限が終わって、すぐに約束の場所に来た。  優月はいなかった。  学内は広いし、最後のコマなので延びる授業もある。15分位は許容範囲。  駐車場に向かう人間が側を通る度に、そちらに視線を流す。  30分位経った所で、半分は諦めた。  ……まあ……普通は来ないよな。  オレの噂は、学内でも有名だし。  男女問わず複数セフレが居て、本気になったら捨てられる、だっけか。  まあ、あながち、間違いじゃねえしな。  優月みたいなタイプが、そんな奴のセフレになります、なんて、わざわざ来る訳がない。  まあ。分かってはいたのだけれど。  途中からイヤホンをして、新曲を数回繰り返して聞きながら。  待っていたけれど。  …もうすぐ1時間、か。  何がどう起ころうと、こんなに遅れる訳はない。  来ない、と、選択したんだろうな。  ――――……しょうがない。  ……つか、オレ、よく1時間近く待ったな。  帰ろうかと、立ち上がった時。  こないだの黒猫が現れた。  ニャア、と甘えた声で鳴く。 「クロ」  ……だったよな。そう思いながら呼ぶと、すぐに寄ってきた。  なんとなく抱き上げて、膝に乗せてもう一度ベンチに座った。  少しの間、撫でていたけれど。 「……腹減ってる?お前」  答える筈も無いけれどそう聞くと。  ちら、と見られた。 応えたみたいな気がして、よしよし、と頭を撫でた。  ――――……あっちのコンビニだっけか。 「ちょっと待ってろよな」  ベンチにクロを置き、駐車場の奥に見えるコンビニに向かって、歩き出す。  店に入ると、店員が2人。  おばちゃん達、と優月が言ってたっけな……。 「……あの、すいません」 「はい?」  ……なんて言えば良いんだ。 「あの……この近くにいる黒猫なんですけど」 「……クロの事?」 「――――……優月の事、知ってますか?」  言った瞬間、不思議そうだった2人の顔が、ぱ、と笑顔になった。 「優月くんのお友達?クロがどうしたの?」 「餌をあげるかを、ここで話してから買ってるとか言ってたんで」 「そうなのよ、優月くん、いつもクロを可愛がってくれて」 「良い子よねえ、優月くん。うちの店で人気なのよ~」  2人とも優月を知ってるみたいで、楽しそうに優月について話しだす。  つい、ふ、と笑ってしまう。  人気、ありそうだな。……まあ。可愛がられそうだもんな。 「今日は優月くん来てないから、クロには缶詰あげたわよ?」 「……じゃあ何も食べさせない方がいいですか?」 「あとでキャットフードあげるけど……ちょっと待っててね」  少し待ってると、手に猫用のオヤツを持って戻ってきた。 「これくらいなら、あげても良いけど」 「じゃあ、それ下さい」  会計を済ませ、2人に軽く会釈して、店を出る。  ……友達、か。  ……まあもう、絡む事も無いと思うけど。  クロに食べさせたら、もう帰ろう。  ……誰か呼び出して発散しちまうか、とも思ったけど。  ――――……今日はもう、まっすぐ帰るか。  何となく、疲れた。

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