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第29話◇

「――――……」  触れるだけのキスが何回か続いて。  それから。一旦唇が離れて。すごく近くから、じっと見つめられた。  少し見つめあった後。  また重なってきた唇は、さっきよりも、深く重なって。  舌が、中に入ってきた。 「……んっ」  ……舌、熱い。  玲央の、触れてる部分も、熱い。  つられて体温が、上がってく。  はぁ、と息をついてると、舌を絡めてた玲央が、ふ、と笑って。 「……鼻で息しろよ」 「……っふ……」  言うと同時に、また舌が入ってきて。  鼻で少し息を吸ってみる。  あ。少し、楽かも……。  思った瞬間。待っててくれたみたいに、もっと深く、舌が滑り込んできた。上顎を舐められて、ぞく、と震える。退こうとした頭を、玲央の手が押さえつける。 「……んンっ……ん、う……っ」  鼻で息とか、もう訳が分からなくなって。  玲央の、服を握り締める。 「……っ……」  心臓が、ドクドク言ってて、血が、熱すぎて、のぼせそう。 「ンッ……」  否応なく絡め取られた舌を、玲央の口内に引かれて、吸われて。  その感覚に、体が、しびれる。  ただ、キスしてるだけなのに、熱くて熱くて。  息が上がって、汗が滲んでくる。 「ん……っン――――……」  あまりに力が抜けすぎて、ふっと後ろに倒れそうになって、玲央に支えられた。 「っ と――――……」  支えながらオレをまっすぐ見下ろして、玲央は一瞬黙って。それから、ふ、と笑った。 「――――……すげえ、気持ち良いって顔」  頬にすり、と触れた玲央が、こめかみあたりにキスしてくる。  ぞく、と体が震えて、玲央の服をまた掴んだ。 「……優月――――……このまま、部屋、来る?」 「――――……」 「来たら……もっと、色々しちまうけど」 「――――……」  玲央をじっと見上げて。  もう、素直に思ったのは。 「……行く」  その答えに、玲央は、ふ、と笑って。  オレの手から、クロのおやつを取って袋を開けると、戻してくれた。 「食べさせたら、行こうぜ」 「――――……ん」  しゃがんで、クロに、おやつをあげる。  あげてる間も。なんだか、体が、ぽわぽわと熱くて、奥がしびれる。  あ、なんか――――……変、オレ。  膝を抱えて、きゅ、と体を丸くしてみる。  キスって、こんな風に、なるんだ……。  玲央のキスは、もう、なんか、体をどうにもできなくなる。  自分の体なのに、自分の体じゃないみたい。 「――――……」  もう少しでクロが食べ終わるという所で、横に立ってた玲央の手が、そっと伸びてきて触れた。え?と振り仰いだら、髪を撫でられて、そのまま首筋に手が滑った。   「っあ……」  ぞく、と震えて。  その瞬間。 「――――……お前ほんと、良い反応……」  言った玲央に、右手首を掴まれる。 「――――……行ける?」 「……うん。クロ、またね」  左手で、クロを撫でて、立ち上がる。  玲央は、オレの手を繋いだまま。歩き始めた。 「――――……玲央、手……」 「ん。……嫌?」  ふ、と笑って見下ろされて、ふと考える。  繋ぐのは、嫌じゃない。  ……人もあんまり歩いてないし。  ――――……見られても……別にいいや。  そう思ってしまった。 「……や、じゃない」  そう言ったら。  余計にきゅ、と握られて。  そのまま、すごく、くっついて。  ドキドキしながら、歩いた。   

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