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第32話◇
【side*玲央】
クロのおやつを買って戻ると優月が居て。
キスしていいか聞くと、すぐに頷いた。
頷きはしたけれど、本当にいいのか、
触れるだけの、キスを、続けた。
キスを離して見つめると、優月は涙目のまま、見つめ返してきて。
舌を入れても、ちゃんと、受け入れてくれる。
一生懸命、息を吸ってるのが可愛くて、そのままにしておいたのだけれど、少し苦しそうになってきて。ふ、と笑ってしまった。
「……鼻で息しろよ」
教えてからまたキスすると、少し鼻で吸う気配。それとともに、ふ、と声が漏れる。
――――……こいつの反応……ほんと、ツボ。
思うまま、深くキスして、優月の口内をめちゃくちゃ舐める。
激しくすると一瞬退こうとしたので、頭を押さえて、深くキスする。
「……んンっ……ん、う……っ」
また、息ができなくなってる。
苦しそうに、眉が寄って、声が漏れる。
舌を絡めて、思うままにキスしてると、触れてる首筋が、熱くなってきて、じんわり、汗ばんでくる。
…舐めたい。
なんて、思った瞬間。
優月から、ふっと力が抜けて、後ろにかくん、と倒れそうになった。咄嗟に支えて、自分の方に引き寄せると。
倒れそうになったことすら、ちゃんとは分かってなさそうな、とろん、とした顔。 ふ、と笑ってしまう。
「――――……すげえ、気持ち良いって顔」
言って、その頬に触れて、こめかみあたりにキスすると、優月は、オレの服を、きゅ、と握ってきた。
「……優月――――……このまま、部屋、来る?」
「――――……」
「来たら……もっと、色々しちまうけど」
そう言ったら。
優月は、一瞬黙って。 けれどすぐに、「……行く」と言った。
クロのおやつを優月に渡すと、食べさせながら、なんだか丸くなってる。
上からしばらく見ていたけれど。少し屈んで、髪から首筋に触れてみた。
「っあ……」
そんな声が漏れて。
――――……何だか、もっと、触れたくなる。
「――――……お前ほんと、良い反応……」
言うと同時に優月の手を掴んだ。
「――――……行ける?」
「……うん。クロ、またね」
クロに別れを告げて優月が立ち上がったので、そのまま、歩き出す。
「――――……玲央、手……」
「ん。……嫌?」
優月を見下ろすと。
視線が、少し、戸惑うように、揺れて。
けれど、最終的には。
「……や、じゃない…」
言って、微笑んだ優月が、なんだか可愛く思えてしまって。
余計にしっかり手を握って、自分に引き寄せた。
大学の裏手なので、あまり人も歩いていない中、マンションについて、一旦手を離した。エレベーターに入って、ドアを閉めると。
優月が妙に固まってるのに気づく。
「――――……緊張してる?」
聞いたら、とても素直に「うん」と頷く。少し話そうかなと思って。
「……優月って、名字、なに?」
「花宮」
「学部、どこ?」
「教育学部……」
「何年?」
「2年」
「教師になるのか?」
「まだわかんない」
名字聞かなかったな、とか。
学部どこで何年なんだろ、とか。
優月に会わない週末、少し気になってた事を、続けて聞いてみる。
…タメなのか。
教育学部。先生とか。……イメージはあるな。
まじめそうだし。優しい良い先生になりそぅ。
……でも、小学校までかな。それより上だと、優月がからかわれて遊ばれそう。なんて思って、少し笑ってしまう。
優月は、答えてはくれているけれど、心ここにあらずな感じ。
マンションに色々連れてきた中で、優月が一番静か。 感想とかも、一切無い。
リビングに通した後、オレが冷蔵庫に水を取りに行ってる間、一歩も動かなかった。
「ありがと……」
水を受け取って、静かに飲んでる優月に、
「飲んだら、シャワー浴びよ」
と囁いたら。ぐっと詰まって、むせ始めた。
「……大丈夫か?」
…初めての奴って、皆こんなんなのかな。
高校の途中で、普通に付き合うのに疲れてからは、慣れてる奴と慣れた流れで、進めてきたから。
反応がいちいち、新鮮。
今の優月なんて、ディープキスしてからもっと色々する、と宣言して連れて来てるんだから、シャワー位当たり前と、思うのだけれど。
優月にとっては、違うらしい。
むせてる背を、さすりながら、笑ってしまう。
やっとおさまった、優月の頬に、手をかける。
「オレは、優月がシャワー浴びなくても全然いいけど」
「――――……っ」
「そのままでオレに色んなとこ、なめられるの、優月は嫌がりそうな気がして。……平気なら、このままベッド行くけど、どーする?」
そう聞くと。
見ている目の前で、予想していた通り、優月が真っ赤になって。
「……っシャワー、貸して」
と、言った。
「ん、いーよ」
まあ、そうだろうと思ったけど。
くす、と笑って。
その髪を撫でる。
触り心地の良い髪。
――――……セットしてるとかじゃなくて、適当に切ってもらったのをそのままにしてる感じ。でもなんか、さらさらしてて、柔らかくて、触り心地が良い。
……つか、優月って、どこでも触り心地、良いな。
頬も、髪も、首筋も。
さっき握ってた、右手も、触り心地、良かったしな。
もっと、色んなとこ、触りたい。
そんな事を思いながら、なにやら一生懸命見上げてくる瞳を見つめる。
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