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第41話◇

「――――……」  連れ込んだ誰かと、こんな風に話す事がほとんどない。  色々話して聞いて、情がうつるのも、執着されるのも、嫌だから。  家に着いて、シャワー、ベット、コトが済んだら帰ってく、てのが常。泊まらせる事も殆ど無い。他人が居ると、眠りが浅くなって疲れる。  我ながら最低だなと思わなくもないけれど、もともとそれで納得した上で関係を持つから、特に文句を言われる事もない。  夜中まで遊んでセフレの家になだれ込み、気付いたら朝だった、という事はあるけれど、それも、余程疲れてる時くらい。  そういえばこないだの金曜、優月と会ったのは、セフレ宅から車で送られた時だった。疲れていて、ベンチで休憩した所で猫と優月に会ったっけ……。  とにかく、普段はあまり話はしないのだけれど。  ……でもなんだか。  やっぱり、聞きたい。 「――――……優月は? 何か習ってたか?」  こいつは、どうやって生きてきたんだろう。  こんな素直な感じで生きてくるの、どんなふうに生きれくれば。  やっぱり、オレは、優月に興味がある。らしい。 「んー……ピアノは中2まで習ってた。習字と絵とそろばんとプールかな。いっぺんには習ってないよ。ピアノと習字とか。ピアノとそろばん、とかって感じ」 「オレもいっぺんには習ってねえよ。何個かかけもちして、級とか段とかとったらやめるとか。ある程度弾けるようになったら終わりとか」 「それでもすっごく大変そうだけど」 「まあ。すげえ忙しかったから、何回かキレたけどな……」 「キレたんだね」 「脱走した」  あは、と優月が可笑しそうに笑う。 「じゃあ、優月、ピアノ弾けんの?」 「うん。まあ、普通には」  「連弾したことある?」 「え、玲央、できる?」 「できる。つーか、最後の方、それの練習ばっかしてた」 「オレも。小6でやめようかなーて時に先生が連弾、楽しいよって教えてくれて。それで中2まで続けたの」  嬉しそうに笑う優月に、ちょっとワクワクする。 「譜面、オレんちのどっかにあるから探しとく」 「うん」  と。そこで、はっと気づく。  探してどーすんの、オレ。  ……こいつと、ピアノ、弾きたいのか?  ………ほんと、何、楽しく話してんだろうか。 「なんかさぁ……?」 「……ん?」 「玲央のその見た目で、ピアノとかバイオリン弾くのって、反則……」 「反則?」 「カッコ良すぎて、ずるい気がする」 「………」  自分で言って、なにやら納得して、うんうん頷いてる。  そんなまっすぐな瞳で、何言ってんだか。 「茶道はちょっと意外で笑っちゃうけど――――……ダンスとかはすごく似合いそ……?」  首から顎にかかった手に、優月が上向く。  話の途中で開いてる唇にキスして、舌を絡め取った。 「……っ……ん……っ?」  ひく、と喉が引きつって。  ぎゅ、と目が伏せられた。 「ん、ふ……っ……」  幼い位の笑顔が――――……また急に、トロン、とした表情に、変わる。  ……なんか、これ。もとからエロイ奴のそれより。  ……たまんねー、かも。

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