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第44話◇

「なあ、優月」 「うん?」 「お前って、どんな奴?」 「え。……どんな奴って??」 「全然しらねえから」 「――――……」 「いまんとこ、名前と、教育学部2年ってのと、双子の弟妹がいるって事しか知らない」  しばらくじー、とオレを見つめて。  優月はクスクス笑いだした。 「そんな事言ったら、オレも名前と学年と、法学部と…バンドしてて、習い事めっちゃやってたって事くらいしか」 「学部言ったっけ?」 「オレの幼馴染が、同じ学部だって聞いたから」 「誰?」 「村澤 智也。知ってる?」  村澤……。  どっかで聞いたような。 「……去年のゼミで名前聞いたよーな…… 顔出てこねえけど」 「そっか……」 「幼馴染が大学に居るんだな」 「うん。2人居るよ」 「優月って、大学からだよな?」 「うん」 「お前の幼馴染は? 大学から?」 「そう。超偶然なんだけどね。第一志望だったり、第二志望だったりしたんだけど、でも結局一緒になってさ」 「ふーん……」  幼馴染、か。村澤。見れば分かるかな。 「高校離れてたし、今またよく一緒に居て、楽しいよ。玲央は幼稚園からあの学校?」 「そう」 「そうなんだね。……ね、玲央、オレもう、おなかいっぱいかも」  優月が、持っていた箸を置いた。 「美味しかった。ごちそうさま」 「ああ」 「玲央は? まだ食べる?」 「もう良い」 「じゃとりあえず蓋しめとく?」  立ち上がった優月が、テーブルの上を片付けてる。  伸びてくる手首に目が留まる。  肌、白い、な、優月。  そんな事を思っていると、触れたくなってくる。 「――――……」  オレも立ち上がって、グラスを流しに置く。 「――――…もう、いいよ。 優月」  優月の手を掴むと。  優月が、じっと、見上げてくる。 「続き、しよ?」  オレが言うと、優月は何度か瞬きをしてから。 「……あのさ」  じっとオレを見つめながら、ゆっくり、話し出す。 「オレさ」 「うん」 「……ほんとに、オレ、初めてなんだけど」 「分かってるけど」 「――――……うまく、できないと思うんだけど……」 「知ってるけど。ていうか、別にうまくとか求めてねえよ」 「……いいの? 玲央」 「――――……つかお前こそ、こないだまで名前も知らなかった奴に、色々されていいの? 男、無理って、最初言ってたよな……?」  クスクス笑って、そんな事を聞きながらも。  嫌だと言われても困るけど。なんて思う。  一度俯いて、優月が、もう一度見上げてきた。 「……玲央が、言ったんだよ」 「……ん?」 「……こういうの、は……感覚だって……」 「――――……」 「……無理な奴とは、どんなに会っても無理だって……」 「ああ……言ったな」 「――――……オレ……玲央には、触ってほしいって……思ったから」  ――――……は。    何だそれ。……可愛い。  全部初めてだったくせに。  ……オレには、触ってほしいって。 「……さっき遅れて、ごめんね。……やめた方が、いいのかなと思って……1回駅の方まで行って友達と居たんだけど……」 「――――……」 「――――……やっぱり……会いたく、なっちゃって、急いで戻った」  まっすぐな瞳。  嘘とか、つけなそうな。  ――――……まっすぐすぎだな……。  ……オレが、こいつの、何に惹かれてるんだか。  よく分かんねえけど。 「……オレ、普通なら5分で帰ってる。1時間なんて絶対待たねえけど」 「――――……」 「お前来たから、待ってて良かったし。……だから、遅れたのはもういい」  優月の頬に触れる。 「ベッドいこ?」  すぐにふっと赤くなった頬に、ちゅ、と口づける。    頷いた優月を確認して。  手を引いて、寝室に、向かった。

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