51 / 824

第51話◇

【side*玲央】  食事を終えて、寝室に優月を連れてきた。  見るからに、ものすごく、緊張してる。  でも、触れると、嬉しそうに表情が緩む。  ――――……可愛いな……。  緊張しなくていいよ、と言ったけれど。  柄にもなく、珍しく、心臓がドキドキしてるのは、オレも一緒だった。  どう触ろう。  ――――…いつもみたいに、慣れてる相手じゃない。  慣れたように扱ったら、嫌がるかもしれない。  キスは好きみたいで。イかされるのも嫌ではなそうだけど。  触れるだけの、優しいキスをしばらくしてから。  ゆっくり、深くする。  キスすると、すぐ、惚けた顔をする。  ……可愛いよな……。  そう思う気持ちを、どうする事もできない。     「――――……っ……んン……ぅ……」  漏れる、声を、愛おしいと、思ってしまう。 「……っれ、お……」  名を呼んでくる優月が、可愛い。  バスローブの紐を解いて、前をはだけさせる。 「――――……」  肌、やっぱり、触り心地が良くて、気持ちいい。  ――――……する、と脇腹から、背中に触れる。  ベッドに倒して組み敷くと、性急に触れたくなる。  けれど、何とか堪えて。深く深くキスをする。 「……ん、ん……っぁ……」  ――――……上顎、舐められるの好きそう。  息が上がってく。……可愛い。 「……んんっ……ん、ふ……っは、ぁ……っ……」  息するだけできつそう。目を開けて、優月を見つめると、眉根が寄っている。  少し辛そうに歪むそれに、ゾク、と興奮する。  けれど、なんだか……ひたすら優しくしたくも、なる。 「……優月……」 「……ふっ……は……」  涙で滲んだ瞳で、必死に見上げられると。   胸の奥が、暖かくなる。  ……なんでこんな可愛いかな…。 「だから……鼻で、吸ってみろって……」  クス、と笑ってしまう。 「いい? やってみな」  キスしながら、ちゃんと吸えるかを見てると。  視線を外せないみたいで、優月が見つめ返してくる。  すう、と、鼻で息を吸う優月。 「吸えるだろ?……あとはオレに合わせて口でも呼吸して」 「……むずかし……」  は。 かわいい。 難しい、か。 「数こなせば慣れる」  思わずクスクス笑って、またその唇に触れて。 「まあ、声が漏れてんのも可愛いからいーけど。 あんまり苦しくない方がいいから」 「……」  一生懸命見てくる優月の視線。 「……息出来るようにたまに離すから、合わせてみて」  自然と笑みが零れる。素直に、うん、と頷く優月。  キスして舌を吸うと、ぎゅ、とつむる瞳。 「……も……や……」  ……早い……。   「……もう嫌?」  囁いて聞くと。 「……れおの、キス……気持ちよくて、もう無理」  嫌なんじゃなくて、気持ちよくて。という優月。  服を脱いで優月に体を寄せると、縋るように、触れられる。  なんでこんなに――――………。  可愛いと感じることばかり、するんだろうか。  縋り付いてくる優月を見下ろすと、なんだかものすごく、ぎゅっと瞳を閉じていて。ふ、と笑ってしまう。  力、入りすぎ……。  頬にキスすると、少しだけ、力が緩んだ。  どこから、何してやろう――――……。  なんだかものすごく、気持ちが上がる。  心地の良い肌をするりと撫でて。  胸の先端を、爪先で引っ掻くと――――。  びっくりした顔をして、優月が見上げて来る。  自然と、笑んでしまう。……どうしても、可愛く思えて。    オレが、普段、関係を持ってる奴に求めてるのは。  束縛しない。  干渉しない。  会った時に、楽しければいい。そんな関係。  オレが、しないようにしてる事。  可愛いとか、好きだとか、思わないように、セーブする。  もし思っても、言わない。勘違いの元になるから。    普段は、敢えて、言わないようにしている。  なのに。  オレ、優月に何回、  可愛いって言った……?  言葉に出したのは思わず出てしまっただけで。  ――――……言葉に出さず、何回可愛いって思ってるのか。  優月に触れてると、可愛いしか、出てこない。

ともだちにシェアしよう!