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第54話◇二人の関係
ふと目が覚めた。
朝日が入ってきていて、腕の中で寝てる優月の顔が、よく見える。
抱きしめたまま、寝ていた事に気付いて、思わず苦笑い。
人を抱き締めたまま、寝るなんて、いつぶりだろう。
夜見つめていたら、すり寄ってきたので、何となく抱き寄せたまま寝たみたいで。優月はよっぽど疲れていたのか、抱き寄せられた時のまま、ほとんど動いていないようだった。
よく、寝てる……。
そ、と頬に触れた。瞬間、ぴく、と優月が動いて。
ふっと瞳を薄く開いた。
……目覚め、いいな。……つか、結構寝たか。
優月は、目の前にあるオレの裸の胸に、びく、と顔を退いて。
肩を抱いてたオレの手に気付くと、慌てて見上げてきて。
ふ、と笑ってたオレと視線が合った瞬間。
「あ……れお……おはよ」
ほっとしたように、笑った。
「…なんで、ホッとすんの」
起きてすぐ男の胸が目の前にあって、驚くのは分かるけど。
「……一瞬何だか分かんなくてびっくりして……玲央だったから、良かった、と思って」
「――――……」
オレだと、ホッとするのか……。
……オレのこと、ほとんど知らないのに。無防備だなー……。
一瞬、変な奴に騙されそうで心配になる。
がしかし。今ここに居る時点で、相当、優月みたいな奴にとっては異常事態なんじゃないかなとも思って少し複雑な気持ちになりながら、時計を確認した。
「6時だけど……起きるか?」
「……ん」
オレが体を起こすと、優月も一緒にゆっくりと起き上がった。
起き上がりながら、自分がバスローブを着てるのを確認してる優月を見て、また少し笑ってしまう。
「……優月、昨日の事、覚えてる?」
「え」
「寝る前の事も全部、覚えてる?」
「……うん」
かあっと赤くなった優月が、頷いた。
そしてそれから。
「あの……玲央?」
「ん?」
「――――……あれって……途中、だよね?」
「まあ……最後まではしてねえけど」
やっぱりそうだよね……という顔で、優月が困り果てた顔をしてる。
「どした?」
「……オレ、寝ちゃった、てことだよね?」
ああ、そう言う事か。
――――……めちゃくちゃ、焦った顔してる。
は――――……可愛い。
ちょっとからかいたく、なってしまう。
「……そーだなぁ……。これからって時になぁ……?」
オレがわざとゆっくりした口調で、そう言うと。
さらに焦った顔をして、優月が、視線を彷徨わせている。
「ご、ごめんなさい。……あの、今からでも――――……」
「――――……今から?」
聞き返すと真っ赤になって、うん、と頷いたまま、俯いてしまった。
可愛く思えて、ぷ、と笑ってしまう。
「嘘だよ」
優月の髪に手を置いて、くしゃくしゃに撫でまわすと、首を傾げながら優月が見上げてくる。
「玲央……?」
「もう昨日はあそこまでにしようと思っただけ。最後、オレも一緒にイっただろ?優月が寝ちゃったってよりは、オレが寝かせてやったんだし」
「……ほんとに?」
「ほんと。だから、今からとか言わなくて良いって」
言うと、少しほっとしながらも。
でもまた少し眉が寄る。
「……でも最後までしなかったの、オレのせいでしょ?」
「――――……」
優月の、せい? せい、ていうか。
……別にやろうと思えば、寝かせないで、そのまま慣らして、できただろうし。
「――――……せい、とかじゃねーよ」
「……」
「……もっとゆっくり慣らしたかっただけ」
「――――……」
困った顔してた優月が、また、ぼぼっと赤くなった。
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