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第57話◇
……可愛い、優月のこれ。
擦ると、頬も首も火照って、すぐ、ほんのり赤くなる。
「……ふ……っ……」
まだ、口元押さえて、声、出さないようにしてる。
――――……けど、漏れて来る。
「……あ……っ」
びく、とのけ反って、柔らかい髪の毛が、肩に触れる。
「れ、お……」
そのまま、すり、と頬にすり寄られて。
どき、とこっちまで胸が弾む。普段あんまり無い感覚に驚く。
……あー……。
……猫みたい、お前。 可愛い。
耳の中を舌でくすぐってやると。
「っやだ……や……っあ……っ!」
すぐ手の中でイッて。 数秒後、涙目で、オレを見上げて。
かと思ったら、そのまま、ぺたん、と床に座り込んでしまった。
「っと……優月?」
「……っ……」
小さく首を振って、俯いてる優月。
「――――……ちょっと待ってろよ?」
手を流しで洗い流して、ローテーブルに置いてあるウェットティッシュを数枚抜いて、少し嫌がる優月の後始末を何とか済ませた。
下着とズボンを上げてやって、外したシャツのボタンを合わせてると。
「……もう……ひ、どいよー……」
「ん……?」
ずっと黙ってた優月が、息を吐きだすのと一緒に、完全な涙声でそう言った。苦笑いが浮かんでしまう。
「……朝からもう、なんか……頭、おかしくなっちゃうよ……」
ペタンと座り込んだまま、ぐし、と涙を拭ってる。
「……ごめん。泣くなよ」
「……っ」
涙を拭い、頬に触れ、髪をなでる。
しばらくそうしてると、優月は、じっと、オレを見つめた。
「も、大丈夫……ごめんね……」
「何でお前が謝んの?」
「……っ直に触ってって、オレ、頷いたのに……泣いて……」
カッと赤くなりながら言った優月の頬に、キスする。
「まあ、それもオレが言わせたんだけど……」
「……なんか、オレばっかり、こんな風にしてて、玲央は、楽しいの?」
「……それがさあ。何でか、すげえ楽しいんだよな……」
思うままそう答えたら。きょとん、とした優月が、ぷ、と笑った。
「なんでかって……」
クスクス笑ってる優月の前髪に触れて掻き上げる。
まっすぐ、涙目と視線を合わせる。
少し恥ずかしそうに、視線が下に向いた。
「―――― 食べれそうか?」
「…うん」
腕を軽くつかんでひくと、立ち上がった優月がズボンを直して、ベルトをしめてる。まだ上気したままの頬が可愛く見えて。
顎に手を掛けて、キスすると。
驚いて大きくなった瞳は、けれどすぐに伏せられて。
おずおずと脇腹のあたりに回った手が、服を握り締めてる、ただそれだけすら、可愛く感じてしまった。
……ほんと。オレは、朝から何やってんだ。
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