59 / 856
第59話◇
【side*優月】
どんどん、快感が高まって。
気持ちよすぎて、おかしくなりそうで。
溢れて落ちてくる涙を止める事も出来なかった。
玲央のしてくれる事は全部、気持ちよくて。
最後、一緒に握らされて――――……。
……何回目、だったろう、イったの。
もう、瞼が、重すぎて。
体、力、入らなくて。
そしたら、ゆっくり、キスされて――――……。
眠って、しまった。
翌朝、ふ、と目を開けたら。裸の胸が目の前で。びっくりして退いたら、何かが肩の後ろにあって動けなくて。精一杯動ける範囲で見上げたら、目の前に、玲央が居た。
一瞬で胸がドキン!と弾んで。昨夜の事、全部一気に思い出した。
と、同時に。
裸の胸が、玲央だった事に、何だかすごくホッとして。
「あ……れお……おはよ」
とりあえず、挨拶したら。目の前の超イケメンが。ふ、と笑んだ。
「…なんで、ホッとすんの」
「……一瞬何だか分かんなくてびっくりして……玲央だったから、良かった、と思って」
言ったら、何を思ってるんだか、じっと、見つめられる。
わー……。
朝いちでも……ほんと、カッコいい人だなあ。
オレ、この人と昨日……なんて事してたんだろう……。
「6時だけど……起きるか?」
「……ん」
朝の6時から……全部、声までほんと全部、イケメンな……。
こんな人、現実にいるんだなあ……なんて思って、起き上がって。
ほとんどはだけた全裸みたいな状態で寝てしまったから、焦って自分に触れたら。ちゃんとバスローブ、着せられてて。
あ。着せてくれたんだ……。
思った瞬間、玲央が少し笑った気がした。
「……優月、昨日の事、覚えてる?」
「え」
「寝る前の事も全部、覚えてる?」
「……うん」
聞かれてしまうと余計に思い出してしまい、かあっと赤くなってしまう。
「あの……玲央?」
「ん?」
「――――……あれって……途中、だよね?」
「まあ……最後まではしてねえけど」
そう言われて。
絶対そうだとは、思っていたんだけど。
やっぱりそうだったんだよね……どうしよう。
玲央にばかり色々させて、気持良い事だけしてもらっちゃって、結局、オレは何もしないで、しかも最後まで、しないで……ぐーぐー寝ちゃって、バスローブとか着せてもらって、泊めてもらって……。
何やってんだ、オレ―――……?!
泣きながら脱走してしまいたい位。恥ずかしい。
「どした?」
なんて、玲央は聞いてくるけれど。
どしたなんて……どしたなんて…………どしたも何も……。
「オレ、寝ちゃった、てことだよね?」
ほんとどうしたら…そう思って、言ったら。
「……そーだなぁ……。これからって時になぁ……?」
玲央のゆっくりした口調が、余計に罪悪感をいっぱいにしてくる。
……ほんとにほんとに、ごめんなさい。
一体どーしたらいいのかな、何したら許して……。
……あ。
「ご、ごめんなさい。……あの、今からでも――――……」
「――――……今から?」
咄嗟に言ったけど、聞き返されると、朝からオレは何言ってるんだと、恥ずかしさの極致。 真っ赤になったまま、でも、頷いて。でも恥ずかし過ぎて、俯いていたら、玲央が笑った気配。
「嘘だよ」
優しい声がして、髪をくしゃくしゃに撫でられる。
見上げると。玲央が楽しそうに笑ってる。
「玲央……?」
なんでそんな笑顔……?
「もう昨日はあそこまでにしようと思っただけ。最後、オレも一緒にイっただろ?優月が寝ちゃったってよりは、オレが寝かせてやったんだし」
「……ほんとに?」
「ほんと。だから、今からとか言わなくて良いって」
優しい笑顔と、言葉に、少しだけ、ほっとする。
……でも。
でも。最後までしないでくれたのは、きっとオレが、もういっぱいいっぱいになっちゃってたから、だよね。
正直、あの時点でもうオレ、頭も体も、全部、限界だった気がする。
玲央がそれ、気付いてくれて、仕方なく寝かせてくれた、んだよね……。
「……でも最後までしなかったの、オレのせいでしょ?」
そう聞いたら。
玲央は少し考えたあと。
「――――……せい、とかじゃねーよ」
そうは言ってくれるけど。でも…。
そう思って、応えられないでいると。
「……もっとゆっくり慣らしたかっただけ」
「――――……」
玲央がニヤ、と笑って言った言葉の意味を少し考えただけで。
一気に顔に熱が集まった。
「……っゆっくりって、何……?」
恥ずかしいのに、思わず、聞いてしまったら。
「昨日、キスとか乳首が気持ちいいのは、分かったろ? オレにイかされるのも、少しは慣れたろ?」
「……っ……」
もっと恥ずかしくなるような答えが返ってきてしまった。
うう。聞くんじゃなかった……。
すごく後悔してるのに。
「オレ、もっと、お前の気持ち良いとこ、ゆっくり探したいし」
そんな事言う玲央に、耳に息を吹きかけられて。
「っっ!」
自分が大げさなほどに震えたことに驚いて、まだゾクゾクが残る耳を押さえて後ずさった。
「――――……耳も、すげー弱いよな……」
何でそんなに楽しそうに笑っちゃうんだろう。
笑ってる玲央はカッコいいし。
……そんなカッコいい人の前で、何オレ、超笑われるような反応ばっかりしてるんだろう。 うぅ。もうだめだ。
笑いを収めた玲央が不意に立ち上がった。ズボンしかはいて無くて、上半身裸。昨日も見たけど――――……朝日の中で見ると、なんか余計に綺麗に見えて、まっすぐ見ていられなくて、視線を外した。
その後も、服を貸してくれるし。朝食を取ってくれる間に、シャワーを浴びておいでと言われて。何だかもう、いたたまれなくなる位、優しくて。
なんだか本当に、申し訳なくなってきて。
「ごめんね、オレ、寝ちゃった上に、泊めてもらって……」
そう言ったら。
「……だから違うって。寝かせてやったし、泊まらせたんだよ」
玲央は、すぐにそんな風に否定してくれた。
「する気ならできたし、寝かせないで帰らせる事だって、出来たっての」
「――――……」
――――……なんか。
本当に。優しくて優しくて――――……。
しばらく、玲央を、見つめてしまう。
すごく心の中、暖かくなってしまって。
ふ、と笑ってしまった。
「やっぱり、玲央、優しいね。……ありがと」
会ってから、ずっと。本当に、優しくて。
優しすぎて――――……何だか困る位なんだけど……。
そんな事を思った時に、ふと気づく。
玲央、何もしゃべらない。
「――――……玲央?」
玲央を見上げると、優しい仕草で頭を撫でられて。そのまま背中を軽く押された。
「……シャワー浴びてきな」
「うん」
「バスタオル、脱衣所の鏡の上に入ってるし、お前のズボンは乾燥機で乾いてるから」
「ん。ありがと」
玲央から離れて、バスルームに向かう。
熱いシャワーを浴びて。
頭がすっきりするにつれて。
昨日から今までの事、全部、思い起こしてしまう。
――――……なんか……オレ。
ほんとに、玲央の事、好きになっちゃいそうで、ヤバい。
……ていうか、ほとんど好きかな、これ。
…………ていうか、最初から、だ、オレ。
玲央と一緒に居たいって。
そばに居れるなら、寝てもいい、とか。
……好きじゃなきゃ、オレは、そんな事、思わないし……。
玲央に会うまで、男となんて、想像すらした事無かったのに。
変わり果ててしまった、自分の思考に、我ながら驚く。
驚くけど、でも。
オレに触れてくれる、玲央は。
もうあんなの、惹かれるしかない、気がしてしまう。
ともだちにシェアしよう!