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第60話◇

 色々考えながら、シャワーを浴び終えて出て行くと。  下着の話から、なぜかまた触られることになってしまって。  朝からあっと言う間に手でイかされてしまって、情けない事に泣いてしまった。  もうオレの許容範囲は軽く飛び越えて、色んな物が溢れ出て来てる気がする。泣いてた事を、恥ずかしいと思えた時にはもう、玲央が目の前でちょっと困ってて。思わず、ごめんね、と謝ってしまった。  でもなんか。お前に触るの楽しいって言われたのは、何だか嬉しくて。  許容範囲めちゃくちゃ飛び越えてしまってても、オレは玲央が笑ってくれると嬉しいんだな、と、思った。  玲央って、また、オレと会ってくれるのかなと思って、聞いたら。  何か、そこに随分間があったし。嫌なのかなともドキドキしたけど。  何か色々考えた末に、会おう、と、言ってくれた。最後までしてないし、とかも、言ってた。そうだよね。しないで寝ちゃったし……。うぅ、オレ、ほんと意味わかんない……。  食事を取り終えると、言ってくれた通り、玲央がまたドライヤーを掛けてくれる。 「――――……気持ちいい?」  洗面台の鏡の前で、玲央が後ろから聞いてくる。鏡越しに目があって、自然と笑顔になってしまう。 「……うん」  頷くと、玲央はふ、と目を細める。 「寝ちまいそうな顔してるもんな」  そう言って、クスクス笑いながら、優しい手で髪に触れる。  ……玲央ってほんとに優しいな……。  美咲が言ってた言葉の意味が、自分の中で、分かってきた。  玲央は、きっと、色んな人と、楽しんでたい、そういう人で。  オレにそういう事をしてる玲央って、楽しそうだし。気持ちイイ事が好きで、っていうの――――……玲央に会う迄のオレにはまったく分からなかったけど。  恋人でもない玲央と、色々してしまった今のオレには……もう、分からなくも、ない。  そういう事を複数の人としたいっていう所は、やっぱりよく分からないけど。玲央みたいな人が、玲央みたいな感じでするなら……そういう人も居るのかな、と、思えてきてしまっている。  気前も良いし、めちゃくちゃカッコいいし、優しいし。  キスもそういう事も、めちゃくちゃ慣れてて。まるで愛されてるって勘違いしそうな位に優しいから、美咲の友達みたいに本気になっちゃう人もそりゃ当然居て……。  ……でも、玲央は、楽しむ相手に、そういうのは求めてないから、そういうのを期待する人とは、別れて終わりに、してるんだ。  優しいから、期待を持たせないように、そこは、冷たくきっぱりと……。  たぶん、それを、美咲は悪く思ってるんだろうなと。  でも、玲央のしてる事は、今のオレには、分からない事も無くて。  オレは、それをしてる玲央の事を、嫌だとは、思えなくて。  ――――……もし、玲央が、オレと会いたいって、思ってくれるなら。  会いたいって言ってくれた時に、会えるの、嬉しい、かもしれない。  その関係を、何て呼ぶかは――――……。  ……美咲にどやされそうだけど。 「ん、おわり。 お前の髪、フワフワな……」  ドライヤーを止めて、玲央がそう言ってクスクス笑いながら、髪に触れる。  ドキドキするのはもう、ごまかしようが、ない。 「玲央……」 「ん?」  ドライヤーを片付けながら、まっすぐ見つめてくれる。  一つだけ。気になってることを聞いてみる事に、した。 「……玲央って、恋人はいないの?」  特別な恋人が居るなら。その人にも悪いし。――――……特別に想う人が居る人とそういう関係を持つって、全然意味が分からない。そんなのは無理。 「……恋人は居ない」  何だか随分間が空いて、玲央は、まっすぐにオレを見つめながら、そう言った。 「そうなんだ……」  オレは、一度頷いて、俯いた。  恋人は、居ない。  ――――……そっか。 「じゃあ、あの……」 「……ん?」 「……玲央は、こんな風に会う人、他にも居るよね?」 「――――……ん。セフレは居る」 「――――……じゃあさ」 「――――……」 「オレも、セフレ、ていうのに、してくれる?」 「――――……は?」  玲央は、それだけ口にして。  それきり、しばらく全然、返事をしてくれなかった。

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