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第65話◇
【side*優月】
玲央のマンションを出て、一緒に歩いて学校に来た。
「オレ、1号館なんだけど、玲央は?」
「……バンドの部室行くから、オレはこっち」
逆方向を指されたので、じゃあここでお別れか、と。
すごく寂しくなりながら、玲央を見上げた。
「じゃあ行くね。 色々、ありがと、玲央」
「――――……」
玲央の手がふ、と、頭に触れた。
ふわ、と撫でられる。
「……玲央」
優しい触れ方に、ふ、と笑うと。
ゆっくり、手を離された。
「――――……連絡する」
「うん」
最後見つめあって。玲央と、別れた。
玲央が歩き去ってくのを、何となく眺める。
家に居る時のラフなカッコも良かったけど。
外に出る時の服装も、やっぱりカッコいいな。
歩いてるだけで、しかも後ろ姿なのに、目立つというか。
後ろ姿だけでも絶対カッコいいと思えてしまう。
かなり離れてから、玲央が一度、くる、と振り返った。
胸が、どきっとする。
離れたまま、少し止まって。
玲央が軽く手を振った。小さく手を振って返して。
いつまでも止まってるのは変かなと思って、オレも歩き出した。
1限の教室について、ふ、と息をついた。
――――……あーオレ……絶対。
……玲央の事が好き……だな。
どうしよう……。
机に肘をついて、うー、と頭を抱えていると。
「どーした、優月?」
ぽんぽん、と頭を叩かれて、顔を上げると、同じクラスの友達。
「あー……うん……ちょっとね」
「ちょっとどーした?」
「んー、カルチャーショック……というか……未知の世界に突入してて……」
「何それ? どこで突入したの?」
「……うーん……最近知り合った人との事がね……」
「そーなんだ。どういうとこが??」
「うーん……うーーん……口ではいえない……」
そのまま、突っ伏す。
キスも、触れられる事も。
あの、見つめてくる視線も、あの声で囁かれる事も。
何なら、あのマンションだけだって、かなり別世界だし。
今着てるこの、すごい着心地のよすぎるシャツと下着も、いつもと違くて、なんだか変な感じがして……。
きわめつけが――――……セフレにして、とか。
……全然最後まで出来てないくせに、そんなこと頼んじゃった、自分……。
あー……だめだ、もう……。
頭、クラクラしてきちゃった……。
「大丈夫かー?」
「……それが、あんまり大丈夫じゃなくて…」
「そっか、がんばれよ?」
よく分からない励まし方をされながら、背中をポンポン、とされた。
「ありがと……」
そのまま、突っ伏していると、教授の声がして、授業が始まった。
なんとか、起き上がりはしたものの。
いままでで一番、全然身の入らない、授業になってしまった。
1限が終わった所で。
美咲と智也に、昨日は心配かけてごめんね、と、連絡を入れた。
すぐに、『お昼、集合ね』と、美咲から入ってきて、智也がOKのスタンプ。オレも、同じく了解した。
うー。二人に何て言えば良いんだろう。
すごく、心配してくれてただろうし。
うー……。
1限もやばかったのに、2限はさらに、何も頭に入ってこない。
だめだ。今日の授業全滅しそうな気がする……。
2人に何て言おうと思うと困って、小さく、何度もため息をついてしまった。
けれど。
玲央を思うと、心の中はなんだか、熱くなって。
あー……。
ほんとに……。
……好きみたい……だなあ。
午前中だけで、何度もそう思って。
1人、赤面して、それを隠すのに、何度も俯いた。
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