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第68話◇

「とかこんなに言ってても……これからどうなるか分かんないけどね」  自然と漏れた言葉に、2人は、ん?とオレを見つめる。 「んー……なんで?」  智也が首を傾げる。 「……だって何で玲央が、オレと会ってくれるって言ってくれたのか、実はよく分かんないんだよね。オレ昨日途中で寝ちゃったりしてたし。ていうかそもそも、なんで昨日約束したのかも……」 「でも、あいつが、最初誘ったんだろ?」 「そうだけど……」  うーん……一緒に過ごした間の全てが、なんかふわふわしてて。  ――――……なんか、夢だった気すら、してきた。 「……会ってくれるって言ってくれたの……夢だったかな?」  うーん、と唸ってると、2人が苦笑いを浮かべてる。 「まあ、あたし的には、夢だった方が良いけど」 「また美咲、そーいう事言う……」  智也が突っ込んでるのを聞きながら、食事を食べ終わる。 「ごちそーさま……」  水を飲みながら。  ふ、と昨日から今日の事を思う。  んー……なんかやっぱり、全部、夢みたい、だなあ。  ……玲央、今、この大学に居るんだよね…ごはん、食べてるのかなあ。  ……不思議……。  ……連絡するって、さっき、言ってくれてたけど。  いつかなあ。  ……って。  そんなに、期待はしない方がいいよね。  玲央が会いたいって思ってくれた時で、って思ってた方がいいと思うけど。  あれ。でもどうなんだろ?? 「……優月?」 「……ねね、セフレって、普通どれくらいの頻度で会うもの??」  途端に、2人ががく、と崩れる。 「……そんなのに普通とかないから。ていうかそもそも、その関係が普通じゃないんだし」  美咲がちょっと疲れた様にそう言った。智也はまた苦笑いを浮かべてる。 「でも、神月みたいに複数いる奴って、余計決まってなさそうだよな……」  うーん、と智也が考え込んでる。  そっか。複数の人と順番に会うのかな??  としたら、その人数分、過ごしたら、会えるのかな????  そういえば……玲央のセフレって、何人居るんだろ?  それか、次、何日に会うか決めてもらって、その日だけを楽しみにしてれば、良い気もしてきた。 相談してみようかな、玲央に会えたら。  ――――……会えたら? って、いつ会えるのかなあ。  ……なんか、できたら今、会いたいけど。  まあでも……仕方ないよね。  うん。……そこは諦めないと、玲央に会ってもらえないだろうし。 「しつこいと思うんだけど……そんなの我慢しても、あいつに会いたいの?」 「――――……」  ……会いたい。 そばに居たい。  ――――……クロに話しかけてた時の玲央のセリフも、まだ気になってる。  どんな事、話すのか、するのか、興味があって。  玲央の事、知りたい。 「……うん。会いたいな……」  言ったオレに、智也がふ、と笑った。 「美咲、もう諦めな」 「――――……んー……」  智也の言葉に、美咲が静かに唸ってる。    その時。  背後から、不意に。 「あ、優月じゃん。ちょい久しぶり」  と声を掛けられた。 「あ。勇紀」  顔を見て、ぱ、と笑顔になる。 「勇紀、ここ来るの珍しいね?」 「ん、なんか朝からここのハンバーグ定食、食べたくて来たんだけど。なんか、めっちゃ混んでるな」  きょろ、と周りを見回してる勇紀に、ふと周りに気付くと。確かに混んでる。   「うん、今日特に混んでる気がする。ここ、詰めようか? 何人で来たの?」  6人掛けのテーブルの真ん中に3人で座っていたので、詰めれば隣の空きと合わせて座れる。そう言いながら、勇紀の後ろに一緒に来た人達を、振り返る。 「――――……え」  朝、別れてから、何度その姿を思い浮かべたか分からない、人が。  そこに、立っていた。  オレが固まった雰囲気に気付いたその人も、オレに目を向けて。  あ、という顔をした。 「……優月――――……」 「――――……玲央……??」  オレが出した声に、何か話していた智也と美咲が振り仰いだ。  あ、勇紀って、玲央の友達なんだ……?  美咲と智也、玲央に気付いてるし。……美咲の視線がきついし。  玲央と一緒に来た、何だか派手なイケメン二人も、固まってるオレと玲央を見てるし。    突然の、なんだかものすごく、カオスな空間に。  何だか、全然、言葉が出ない。     でも。  玲央の顔が見れて。  すごく嬉しいと、思ってしまったのは。  まぎれもない事実で。  オレ、昨日も今日も、この人と――――……   めちゃくちゃ近くで触れ合ってたんだよな、と思うと。    胸が騒いで、カッと顔に熱が集まってしまって。  めちゃくちゃすばやくここから脱走したい、気分に駆られた。

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