89 / 856
第89話◇
【side*優月】
「――――……」
ふ、と、目が覚めたら。まだ部屋は暗くて。
すぐ隣に、玲央が寝ていた。
隣というか……玲央の手が背中にあって、もうとにかくくっついて、抱き締められてて。とくん、と胸が、動いた。
……寝起きに、強烈すぎ……。
ドキドキする。
――――……綺麗な顔……。
睫毛長いなー……。
んー。玲央の顔を絵に描きたいよー……。
もう何回思っただろう。
すっごい描きたい。
悶えそうになりながら、玲央の整った顔をじっと眺めて、時を過ごす。
ほんと、カッコいいなあ――――……。
……何でオレは、こんなカッコいい人に抱き締められて寝てるんだろう。
やっぱり、何度近くでこの顔見ても、この状況が、謎すぎる。
……にしても。またオレ、寝ちゃったのかー……。
寝落ちする前の事が思い出されて、かぁっと熱くなる。
玲央がする事、全部、気持ちよすぎて。
なんかもう、耐える事も出来なくて。
……何回イかされたんだか、朦朧としててよく分かんない。
『……出しすぎて、辛い……?』
耳元でクスクス笑いながら囁いた玲央の声が、耳によみがえる。
囁きながら、楽しそうに、触れてくる手の感触とともに。
――――……っっ……。
なんか、それだけで、ぞわ、とした感覚が体を走る。
……やばい。
……玲央の声、思い出すだけで、体が――――…
玲央がどこ触っても気持ちよくなるようにとか、言われたけど……。
正直、最初にキスされた時から、ほんとに、ずっと。
玲央に触られてるって思うだけで、気持ち良すぎて。
……多分オレが、玲央の事、好きすぎるんだ。
玲央が触れてくれてるって思うだけで、体が、震える。
敏感になりすぎてる所に、気持ちいいとしか思えない触り方で、触られるから、もう何か、おかしくなりそうで、怖い。
あー……なんか……。
……体……ほんと……。
玲央にしか、反応しなくなっちゃったら、どうしよ……。
……ていうか。
オレ、またほんとに最後までしないで寝ちゃったけど……。
良いんだろうか。これで。
……玲央は、慣らしてからとか、言ってくれてたけど……。
……許されるのかな、こんなの。
ていうか、セフレとか言って、結局してないから、それですらない気がしてくるし……。
……いや、ていうか、めちゃくちゃ、気持ちよくしてもらって、
ぐーぐー寝るって。
しかも2日間も。
……怒ってないかな、玲央。
この瞳が開いたら、呆れた顔されたりして……。
2日間も先に寝て、とか、言われたりして……。
でも――――……抱きしめて寝てくれてるから、怒っては無いかな……。
……あったかい。
背中にかかってる手が、なんか優しく感じる。
……ていうか、玲央、ずっと、優しい。
初めて会って少しの間に、ものすごく一緒に居たいなんて思ってしまった相手が、こんなに優しくて。キスしたり、触ったりも、熱すぎて、優しすぎて、ヤバいし。
――――……好きになりすぎちゃうんだけど、どうしたら……。
それにしても。
……オレって、これで、いいのかな。
オレは、何もしてない気がする……。
気がするっていうか、してない……。
どんなつもりで、最後まではしないって言ってくれたか分かんないけど、普通は、男は、それが気持ちよくて、するんだよね……??
なんで玲央は、最後までしないんだろう。
……最後までされたって、きっと、玲央がするなら、オレは気持ちいいと思うし。……なんなら、苦しくたって、全然良い位なのに。
……あんまりそこは、したくない……とか??
男でもできるって言ってたけど、実は男同士だと、そこはしないで終わらせるものだ、とか?
……もっと色々経験積んでおけば良かった。
せめて女の子とだけでも。
……そしたら、もう少し、男側の気持ちも分かったかも知れないのに。
なんて今更の事まで、浮かんでくる。
そんな事を考えながら、じっと玲央を見つめていたけれど。
……はあ、と小さくため息をついてしまった。
オレが、どんなに女の子と経験積んでたとしても――――……。
……この人と、オレがするのには……。
――――……何も役に立たないかも……。
「――――……」
顔見てると、ドキドキがおさまらない。
あんなにされたのに、また反応しそうになるとか。
なんか、体、変になってるかもしれない……。
玲央の触り方が、やらしすぎるからいけないんだ……。
だめだ。
ちょっと真正面、やめよう…。
そーっとそーっと動いて、玲央に背を向けた。背中に置いてあった腕が、胸の前にある。 ほ、と息をついた瞬間。
「――――………」
ぎゅ、と抱き締められて。ふ、と耳もとで笑う気配。
「何で背中向けんの」
「……っ……起こしちゃった?」
「そりゃ、腕の中で動かれたら起きるし」
ドキドキドキドキ。
ものすごい、鼓動が激しすぎて、息が、ちゃんと出来ない。
ともだちにシェアしよう!