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第89話◇

【side*優月】 「――――……」  ふ、と、目が覚めたら。まだ部屋は暗くて。  すぐ隣に、玲央が寝ていた。  隣というか……玲央の手が背中にあって、もうとにかくくっついて、抱き締められてて。とくん、と胸が、動いた。  ……寝起きに、強烈すぎ……。  ドキドキする。  ――――……綺麗な顔……。  睫毛長いなー……。    んー。玲央の顔を絵に描きたいよー……。    もう何回思っただろう。  すっごい描きたい。  悶えそうになりながら、玲央の整った顔をじっと眺めて、時を過ごす。  ほんと、カッコいいなあ――――……。  ……何でオレは、こんなカッコいい人に抱き締められて寝てるんだろう。  やっぱり、何度近くでこの顔見ても、この状況が、謎すぎる。  ……にしても。またオレ、寝ちゃったのかー……。  寝落ちする前の事が思い出されて、かぁっと熱くなる。  玲央がする事、全部、気持ちよすぎて。  なんかもう、耐える事も出来なくて。  ……何回イかされたんだか、朦朧としててよく分かんない。 『……出しすぎて、辛い……?』  耳元でクスクス笑いながら囁いた玲央の声が、耳によみがえる。  囁きながら、楽しそうに、触れてくる手の感触とともに。  ――――……っっ……。  なんか、それだけで、ぞわ、とした感覚が体を走る。  ……やばい。  ……玲央の声、思い出すだけで、体が――――…  玲央がどこ触っても気持ちよくなるようにとか、言われたけど……。  正直、最初にキスされた時から、ほんとに、ずっと。  玲央に触られてるって思うだけで、気持ち良すぎて。  ……多分オレが、玲央の事、好きすぎるんだ。  玲央が触れてくれてるって思うだけで、体が、震える。  敏感になりすぎてる所に、気持ちいいとしか思えない触り方で、触られるから、もう何か、おかしくなりそうで、怖い。  あー……なんか……。  ……体……ほんと……。   玲央にしか、反応しなくなっちゃったら、どうしよ……。  ……ていうか。  オレ、またほんとに最後までしないで寝ちゃったけど……。  良いんだろうか。これで。  ……玲央は、慣らしてからとか、言ってくれてたけど……。  ……許されるのかな、こんなの。  ていうか、セフレとか言って、結局してないから、それですらない気がしてくるし……。  ……いや、ていうか、めちゃくちゃ、気持ちよくしてもらって、  ぐーぐー寝るって。  しかも2日間も。  ……怒ってないかな、玲央。  この瞳が開いたら、呆れた顔されたりして……。  2日間も先に寝て、とか、言われたりして……。  でも――――……抱きしめて寝てくれてるから、怒っては無いかな……。  ……あったかい。  背中にかかってる手が、なんか優しく感じる。  ……ていうか、玲央、ずっと、優しい。  初めて会って少しの間に、ものすごく一緒に居たいなんて思ってしまった相手が、こんなに優しくて。キスしたり、触ったりも、熱すぎて、優しすぎて、ヤバいし。  ――――……好きになりすぎちゃうんだけど、どうしたら……。    それにしても。  ……オレって、これで、いいのかな。  オレは、何もしてない気がする……。  気がするっていうか、してない……。  どんなつもりで、最後まではしないって言ってくれたか分かんないけど、普通は、男は、それが気持ちよくて、するんだよね……??  なんで玲央は、最後までしないんだろう。  ……最後までされたって、きっと、玲央がするなら、オレは気持ちいいと思うし。……なんなら、苦しくたって、全然良い位なのに。  ……あんまりそこは、したくない……とか??   男でもできるって言ってたけど、実は男同士だと、そこはしないで終わらせるものだ、とか?  ……もっと色々経験積んでおけば良かった。  せめて女の子とだけでも。  ……そしたら、もう少し、男側の気持ちも分かったかも知れないのに。  なんて今更の事まで、浮かんでくる。  そんな事を考えながら、じっと玲央を見つめていたけれど。  ……はあ、と小さくため息をついてしまった。  オレが、どんなに女の子と経験積んでたとしても――――……。  ……この人と、オレがするのには……。  ――――……何も役に立たないかも……。   「――――……」  顔見てると、ドキドキがおさまらない。  あんなにされたのに、また反応しそうになるとか。  なんか、体、変になってるかもしれない……。  玲央の触り方が、やらしすぎるからいけないんだ……。  だめだ。  ちょっと真正面、やめよう…。  そーっとそーっと動いて、玲央に背を向けた。背中に置いてあった腕が、胸の前にある。 ほ、と息をついた瞬間。 「――――………」  ぎゅ、と抱き締められて。ふ、と耳もとで笑う気配。 「何で背中向けんの」 「……っ……起こしちゃった?」 「そりゃ、腕の中で動かれたら起きるし」  ドキドキドキドキ。  ものすごい、鼓動が激しすぎて、息が、ちゃんと出来ない。

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