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第91話◇
セフレの意味なんかを聞かれて、固まって数秒。
「うん、意味わかってる、と思う」
ベッドの上で向かい合って座って、じっと見つめあう。
「……どうして?」
オレがそう聞くと、玲央は少し唇を引き締めて、オレの頬に、触れてきた。
「セフレって何?」
「何って……セックス……する関係?」
「――――……」
そのまま言ったら、玲央は、しばらく固まった。
「……お前、ほんとにオレのセフレになりたいの?」
「……だって、玲央と会いたいし……」
「――――……オレ、セフレ、他にもいるけど……」
「それは、最初から知ってるよ……?」
「――――……嫌では、ねえの?」
「――――……」
……何が聞きたいんだろ。
嫌って。
……玲央にセフレが他にも居る事を、オレが嫌とか言う権利、無いよね?
「……セフレとか――――……優月の柄じゃねえなと思うんだけど」
「――――……」
……確かに。玲央が相手じゃなければ、そんなのになる可能性、1パーセントも無かったはず。
「玲央じゃなかったら……そんな事言わなかったと思うけど……」
「――――……」
「……だって、もともと……玲央がそういうの、自由なの知ってて、オレ、玲央の所に来たし――――……」
「――――……」
噂でも知ってたし、美咲や智也にも話聞いたし。
もともと、セフレがいっぱい居て、そういう事を自由にしてる人っていうの、知ってたし。
……そういう人だからこそ、オレに、「寝てみない?」なんて軽く誘った訳で。だから、玲央はきっと、これからも他の人にもそうやって誘ったり、するのだろうし。
「……玲央、何が聞きたいの?」
「――――……セフレなんて、そんな関係……優月はいいのか?」
いいのかって。
……どんな質問???
さっきから、ずっと、全然分かんないけど。
だって、オレは、玲央がどんな人か知ってて。
他にもいっぱい相手がいるって知ってて。
それでも、玲央が会ってくれる間だけでもいいから、玲央と居たいって。
……何でだか、そう思っちゃって。
――――……自分でも、こんな想い、よく分からないけど。
こんなに、訳のわからない関係でもいいから、
そばに居たいって、生まれて初めてってくらい、強く思って。
そばに居れるなら、触れたいし、触れてほしいし。
――――……でも、こんなカッコいい、こんなモテる人の、恋人になんて、
絶対なれないのは分かってるし。
……セフレで良いって。
オレ、本気で、思ってるんだけど……。
……どういう意味で、玲央は聞いてるんだろう。
「……セフレでいいのって――――……セフレがやだって言ったら、どうするの?」
そう聞いたら。
玲央が、黙ってしまった。
数秒の沈黙に耐えられなくなって。
「うそ。やだなんて、思ってないよ」
「――――…」
「オレ、玲央と会いたいし。……玲央とキスするのも、触ってくれるのも、好き。だから玲央が良いなら、今のまま――――……会ってくれる時に会えたら……嬉しいんだけど」
「――――……」
「オレと会ってない時に、玲央が誰と会ってても、気にしないし」
「……オレが他のセフレと会っても、お前は、いいのか?」
「うん」
「……嫌じゃねえの?」
「……? だって…… もともと知ってて、オレ、玲央と会ったし……」
「オレと付き合う、とかは……考えねえの?」
「……付き合うって?」
「恋人とか――――……思わねえの?」
玲央の口から出てきた単語に、かなりびっくりしたのだけれど。
「思わないよ」
即答した。
ほんのわずかな期待も、悟られないように。
だって、本当に玲央と恋人なんて。望んでない。
「だって、オレ、男だし――――……玲央の恋人なんて……無理」
女の子ですら、好きって言ったら終わりなのに。
男と恋人なんて、玲央がなるはずないし。
そんな無理、望まない。
オレは、玲央と、終わりになりたくない。
「――――……分かった」
玲央が、そう言って、まっすぐオレを見つめた。
「セフレが、良いんだよな? お互い束縛なし、干渉しない。会った時に、楽しむ。で、良いんだな?」
「うん」
「――――……会いたくなったら連絡入れる。お互い都合があえば、会う」
「うん。他には……?」
「……本気になったら終わり。どっちかに恋人ができた時も」
「……ん、分かった」
……大体美咲が言ってた通りだな。
そう思って、頷いた。
玲央は、何だか珍しく投げやりな感じでポンポン言ってたけど。
言い終えてオレが頷くと、面白くなさそうな顔で、ため息を吐いた。
「――――……いっこ聞きたいんだけど」
「……うん?」
「……オレが、お前以外の奴、抱くの、ほんとに嫌じゃねえの?」
「――――……」
なんでそんなこと聞くんだろう。
……そりゃすっごく考えたら、嫌だよ。
――――……でも、考えないようにしてるのに。
……もともと玲央は今までそうしてきてたんだから、
オレが何か言う事でもないと思って。考えないようにしてるんだから。
そりゃ――――……一人占めできたら、そんな幸せな事はないけど。
……無理だって分かるし。
恋人でもないのに、そんな、嫌なんて言う権利、あるわけない。
じっと玲央を見つめながら、うん、と頷いた。
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