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第93話◇気持ち

【side*優月】  夜中に玲央と、セフレとか、そんな話をした。  ――――……セフレのルールみたいなの、言われて。  頷いた所から。  急に、キスされて。  何か――――……思い出すのすら恥ずかしい位。  乱された。  今までと一緒で、優しいんだけど、  なんか――――……容赦なくて。  今度は、完全に、気を失うみたいに、意識なくなった、と思う。  最後の方、よく覚えてない。  ――――……何で……急に、  めちゃくちゃ気持ち良くする、とか言って。  あんな事に……。 「……優月?」  玲央の声がして、ドアが開く音。動けないでいると。  ぎし、とベッドが軋んで、玲央が座った気配。 「……起きれるか?」  優しい声がして。優しい手が、頭に触れた。  ゆっくり動いて、玲央を見上げて、目が合うと。  玲央がほっとしたように笑った。 「……大丈夫か?」  よしよし、と頭、撫でられる。 「――――……ちょっと、やりすぎたかも」  そんな風に言う玲央を、じっと、見つめる。 「ごめんな?」  ……ていうか。謝られるのも。  …………すっごい恥ずかしい。  そう思った瞬間、かああっと赤くなってしまったオレに。  玲央は一瞬きょとん、として。  それから、ふ、と笑って。玲央は、オレの手首を掴んだ。   「――――……」  玲央の腕の中に引き寄せられて。  よしよし、と、撫でられる。 「――――……っ……」  こういうのも、めちゃくちゃ恥ずかしいし……。  思った瞬間。  ふわ、と抱き上げられて。  またそのまま、移動。  暴れても無駄な気がして、玲央の肩に手を置いて少しバランスだけ取ってる間に、あっという間にバスルームで。すとん、と下ろされる。 「シャワー浴びといで。着るもの置いとく」 「……うん。あり、がと……」  ぼー、としたまま、シャワーを浴びる。 「……」  ……なんで。  あんなに、昨日…………。  ……なんかもう――――……ほんとに気持ち良すぎて。死ぬかと思った。  なんか腰が重い。  玲央の触り方が、やらしすぎて。  キスも、ずっと、激しくて。   息ができないから余計になんか……熱くなって――――……。  ぞく、と背中におかしな感覚が走る。  ……やだな、もう。  なんか。 体、やばい。  ――――……今までそんな欲、あんまり無かったのに。  まあ、あったらもっと、合コン行ったり、そういう機会持ってたと思うけど……。  ほんとにあんまり無かったのに。  ……短期間で、急激に、そういう欲を、呼び起こされてるみたいで。  体、変になりそうな気がする。  ぶる、と頭を振って、妙な感覚を振り切って。  きゅ、とシャワーを止めた。  外に出ると、バスタオルが置いてあって。その横に洋服が置いてあった。 「――――……?」  なんか、サイズ、ピッタリな気がする。  玲央のにしては、細身だし。  不思議に思いながら、リビングに入ると、玲央が振り返って、優月を見て、ふっと笑った。 「サイズは? ぴったりか?」 「あ、うん。 これ……?」 「昨日お前待ってる間に、駅ビルの店で買ってみた」 「――――……」 「洗濯して乾燥機入れといた。その生地、着心地よくねえ?」 「うん。気持ちいい。……オレ用に、わざわざ買ってくれたの?」 「泊らせるつもりだったから。オレの服だとちょっとデカいしな?」  うん、と、答えておいて。  玲央のすぐそばに、近づく。 「玲央……?」 「ん?」  間近で名を呼んだオレをふ、と見下ろしてくる、玲央の形の良い唇に。  軽く、ちゅ、とキスした。 「……ありがと」  どうしたって、微笑んでしまう。  オレが居ない時に、オレの事考えて、服、選んでくれたって。  ……なんか、すごく、嬉しい。 「――――……」  玲央は、少しの間、オレを見つめて。  それから、両手で、オレの頬をつまんで、左右に軽く引っ張る。 「……っ?」 「――――……初めてちゃんと、自分からキスしたよな?」  くす、と玲央が笑って。頬を摘まんでいた手を離し、そのまま包むみたいに、触れ直した。  そのまま、唇が重なってくる。  少し触れて、離された。 「――――……朝、昨日と同じ店のサンドイッチにした。食おうぜ。今日、2限からだよな?」 「うん。ありがと、玲央」 「あ。ちょっと待って」 「ん?」  止められて、じ、と見つめられて。 「ん、似合う」  そんな風に言って、よしよし、と撫でられる。  ……なんかもう……優しすぎて。  これは、胸がいっぱい、というのかな……?  ――――……玲央を見上げて、ありがと、と笑った。

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