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第104話◇

【side*玲央】  ベンチで隣に座って、ほわほわ笑ってる優月を見ていたら。  触りたくてたまらなくなって、人が来なそうな校舎の奥のトイレに連れ込んでしまった。  鍵を掛けて2人きりになって、すぐキスしていいか聞いた。赤くなって頷く優月に、1秒でも早くキスしたくてたまらなくて、抱き寄せる。  感情の高ぶりが、半端なくて、やばい。 「――――……っ」  深くキスするとすぐ、眉が下がって、涙目になって、頬が赤く染まる。  しがみつくみたいに触れてくるのすら、何だか、余計、熱くなる。  ――――……ほんと、可愛いな……優月。  服の下に手を滑らせると、肌が気持ち良くて。  撫でてると、胸の先端が、ぷちと立って、手の平に当たって、優月の体が震える。  ……感じやすい――――……。   めちゃくちゃに触って、ドロドロにして、中に突っ込んで、揺さぶりたい。  絶対、すげえ、気持ちいいと思う。  不意に乱暴な衝動が、起こるけれど。   「声、出ちゃう、から――――……無理……っ」  優月に、もっともっと早めの段階で、止められて。  ――――……まあ。オレが今考えたような事、こんなとこで、優月にできる訳ないけど。  涙目に見つめられて、少しだけ、落ち着くけれど。  キスだけにする?なんて言いながら、めちゃくちゃ、快感煽るようにキスしてやると。思うまま、すぐ、反応する。  ファーストキスだった優月に、めちゃくちゃ深いキス、教え込んで。  一生懸命応えてくるのが、可愛い。  ……なんでこんな、可愛いかな……。  めちゃくちゃキスして、結局キスだけじゃ済まず色んな事をし終えて、後始末とばかりに、優月の手も拭き終える。  恥ずかしそうにそれを見つめてる優月に、また、なんか少し気持ちが揺れる。  ――――……もっと、乱したいけど……。 「……優月」  呼んだら、なぜか、俯かれてしまった。 「優月?」  頬に触れて、顔を上げさせる。  潤んだままの瞳で見つめられて。 なんか、少し切なげに、眉が寄る。  何でだか――――…… 心臓の奥が、痛い気がする。 「優月、オレ……」 「……玲央?」 「――――……お前が、可愛くてしょーがないんだけど……」 「――――……」  気付いたら、そんな風に、口に出していた。  優月は、オレを見上げて、何も言わない。  ――――……何て返したらいいか、分かんねえんだろうな。  つか、オレも、分からない。 「……なンだろな、これ――――……」     自分で言っといて、ほんと、何言ってンだろうと思う。  ――――…… でも、ほんとに。  抱き寄せて、その髪に頬を寄せる。  背中の服、握り締められて。しがみつかれる。  ――――……ああ、もう。マジで、可愛いっつの。 「……お前さ」 「ん?」 「……オレと毎日会うの、嫌?」 「え――――……嫌じゃないよ」 「ほんとに?」 「……嫌な訳、無いじゃん……」 「――――……普通セフレって、そんなに会わねえぞ」 「……う、ん」  自分で言って、何だかまたモヤモヤする。 「――――……優月、顔あげて」 「……?」  抱き締めていた腕を少し解くと、腕の中で、優月が顔を上げた。 「――――……お前、オレのこと、好き?」 「――――……」  オレの問いに、一瞬、ぽかん、と呆けた顔をして。  その後。  優月が、ぴし、と。音を立てて、固まった。――――ような気がした。  ――――……なんだ?   「え……あの……どういう、意味?」 「……オレの事が好きかって、聞いた」  すぐ、好き、と言うかと思った。  けれど何だか――――……すごく、困ったように、優月が、俯いて。 「……嫌いじゃ、無いよ」  そんな風に言った。  ………嫌いじゃない? 「――――……一緒に居たいし……」  ――――……?  なんか。全然、はっきりしない。  ――――……優月の答えを聞いていたら。  オレは、「好き」と優月の口から聞きたかったんだと、そう気づいた。 「……好きじゃねえの?」 「……っ……そりゃ……嫌いじゃないけど……」  絞り出すみたいに言う、優月の言葉に、なんだかすごく、ムカついてくる。 「――――……何、その、嫌いじゃない、って」 「――――………っ……」  抱き締めていた手を、す、と離す。  すぐに優月が、オレに回していた手を握り締めて下ろすのを、ただぼんやり、目に映す。  自分が先に離したのだけれど――――……ぬくもりが、離れて。  ――――……なんか、余計に、苛ついた。  苛つきすぎて。  この苛つきのままで、何か、優月に言ってしまう前に、離れようと、思った。 「――――……オレ、もう、行くけど」  優月が、ぱっと、焦ったように見上げてきたけれど。  それでも、優月は何も言わず。「……うん」とだけ言って、頷いた。  ムカつきは頂点に達してたけど、それでも、連れ込んだこんな所に、優月を1人置いてく気はしなくて。 「……一緒に出るか?」  そう聞いたけど、優月は一歩退いて、プルプル首を振った。 「……ううん。 オレ、後から行く」 「――――……分かった。じゃあな?」 「……うん」  視線が合わない。  そのまま、俯かれた。  鍵を開けて、個室を出た。  手を洗って――――……一瞬、鏡を見ると。自分がひどい顔をしてる気がする。  優月は、個室から、出てこない。動く気配もしない。  小さく息をついて。  トイレを出て。 部室に、向かった。  

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