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第106話◇
結構な時間が経過した。
3人はテーブルの方で話してて、オレはソファ。完全に横になってふて寝状態。
昨日寝不足なのに、ちっとも眠れない。
イライラしすぎて血が巡りすぎてんのかな……。
――――……けれどようやく、時間とともに、少し落ち着いてきた。
落ち着くとともに、後悔ぽいものがすでに浮かんできてる。
可愛くてたまんねえのに。
あんな感じで手を離して、置き去りにしてくるなんて……。
――――……何してんだオレ……。
……優月は、オレを好きなんだと思ってた。
――――……向けてくる言葉や、表情や、触れてる時の反応とか。
全部、オレを好きだから、ああなんだと、思ってた。
全部の行為、初めてて、
男同士なんて、今まできっと考えた事もなくて。
それでも、オレの腕の中に来てくれるのは、
オレの事を好きだから なんだと、勝手に思い込んでた。
だから、当然、好きだと言ってくれると思って、聞いた。
――――……嫌いじゃない、と何回も言われて。
何でか、視線を逸らす優月に。
…………あんなに、ムカつくなんて。
――――……バカか、オレ。
もともと、恋人と聞いた時、優月は、男同士だから無理、って言ってた。
だから、オレは、じゃあ言う通りセフレって事にしようって、返して……。
だから――――……。
……もともと優月はオレの事、特別に好きなんかじゃないと、そこで思ったのに。
そこで、ふっと、考えが止まる。
――――……好きじゃなくて、優月が、あんなことに付き合うか?
……あいつ、オレのこと、好き、だよな?
じゃあなんで、好きって言わないんだ?
……つか、そもそも、オレは、好きって言われたら、何て言うつもりだったんだ。もしあの時、優月がオレを、好きって、言ったら――――……。
恋人――――…は抵抗がありすぎて、正直、無理。
ていうか、そもそも、優月が、男同士だから恋人は無理って言ってた。
恋人は無理だけど……。
でも、優月を、セフレと呼ぶのが、とにかく、嫌で……。
――――……ああ、分かんねえ。
ほんとなら、別にこんな関係の呼び名なんて、どうでもいいのに。
何をこだわってんのかも、自分でもよく分かんねえ。
「――――……」
ソファから起き上がると、甲斐が気づいた。
「……起きたか? 玲央」
「――――……寝てねーし」
「あ、起きてたんだ?」
クスクス笑ってる勇紀。
「――――……なあ」
一声、出すと。
3人が一気にオレを見た。
「……嫌いじゃないって、どーいう意味?」
言いながら、3人を順番に見る。
ぽかーーーーん。
という表現がぴったりな、間抜けすぎる顔を、3人が数秒間していて。
「やっぱ、なんでもない」
聞かなきゃよかったと、視線を逸らして、髪を掻き上げると。
「何々その面白い質問!!」
勇紀が走ってきて、ぴょーん、とオレの居るソファに乗っかってきた。
「……ウザイ、降りろよ」
「何だよ、ちゃんと言えよ。……つか、嘘みたい、玲央がちょっと可愛いし」
「……マジでウザイ」
勇紀ほどではないまでも、甲斐と颯也も、面白そうにオレを見てる。
「嫌いじゃないって言われちゃったんだ? それ、優月に??」
勇紀の言葉に、イラッとする。
「――――……だからそれ、どーいう意味だよ」
「えーーー……?」
うーん、と首を傾げてる勇紀。
颯也が、テーブルの方から、「……なあ」と声をかけてくる。
「……その、優月と、お前ってさ、結局セフレんなったの? 昨日は、セフレにしてッて言われたって言ってたよな?」
「――――……結局、なるって話した」
答えると。
「つか、セフレに、好きだとか言われんの、嫌がってるの、お前じゃん」
甲斐が、そう言って、「逆によく分かんねえんだけど…」と言ってくる。
「オレはさあ、セフレって言っても、割と好きな子たちしかしねえから、好きとか言われても全然イケるけどさ。お前は、セフレの好きとかは無理って言ってるし、本気になったら終わりって。自分が言ってんじゃん?」
「――――……」
ああ。それは言ってる。
――――……でも……。
………だから結局、オレの中で、「優月」イコール「セフレ」じゃないから。今甲斐が言った話は、優月には、当てはまらねえんだけど……。
好きだと言われるのが、面倒なんて。
――――……優月に対しては、思わないし。
…………ん? でも、優月とは、セフレんなるって、話で終わってるから。
だから……。
――――……。
「お前、本気で好きになったら終わりって、セフレに言ってんだろ?優月にも言ったんじゃねえの?」
甲斐の一言に。
思考が止まる。
……本気になったら終わり、恋人できても終わり。
……優月にも言った。 我ながら、かなり、投げやりに。正直、投げやりに言いすぎて、言った事も今思い出した。そういや、言った。
――――……つか。
…好き、と言わなかった理由って。
「じゃあ玲央、優月にもそれ言ってるのに、好きか聞いたって事?」
自分が今考えていた事を、勇紀にかわりに言われる。
「……えーそれで嫌いじゃないって言ったなら、すげえ可哀想…。ていうか、それで玲央、こんな怒ったの?」
直接、怒っては……ねえけど。
優月の手は――――……離した。
……ほんとにそういうことなら。
――――……最悪。
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