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第112話◇
【side*優月】
玲央が、わざわざ教室ま来てくれて。
――――……色々、伝えてくれて。
セフレ、についてはもう一回考えるって、言ってたけど。
可愛いとか好きとかも、言ってくれるって。
オレも、好きだったら言って良いって、言ってくれて。
嬉しすぎて、ふわふわ浮いてるみたいな気持ちの中、今夜も一緒に過ごしてくれる事が決まった。オレの家にもついて来てくれるって。
そんなの付き合ってもらっていいのかな?と思ったけれど、良いって言ってくれた。
一緒に練習している場所に連れてこられて、たった今、目の前で、演奏中。
こんなに近くで、バンドの演奏聞いたの、初めて。
正直なとこ、初めて生でこういうのを見るので、他とは比べられない。
オレ的には、すごいなーすごすぎだなー、という感想しかない。
でもって…――――……。
玲央が、カッコ良すぎて、ヤバい。
歌、うまい。それはすごく分かる。
玲央の声が、好き過ぎなオレにとっては……ほんと、ヤバい。
男なのに、あまりにうっとりしてたら、きもち悪いかなと思ってしまうけど。視線が逸らせないまま。3曲の演奏が終わって。
拍手すべき?と思ったけど、曲が終わってすぐ、普通に話し始めてしまったので、できないまま。
手に握り締めたままだったペットボトルを開けて、カフェオレを口に含んだ。喉、なんだかすごく、乾いてた。
――――……なんか。
やっぱりオレ、何で玲央と、キスしたりしてんだろ。
何でオレ、ここで、こんなキラキラしてる人の事、待ってるんだろう??
何でこんなカッコいい人が、オレの事、好きって言うのかな?
……本当に、謎。
「……優月?」
悩んでたら、いつのまにか、玲央が近くに来てて、少し不思議そうな顔で、隣に座った。
「どした?」
ううん、と、首を振って。
「……めちゃくちゃ、カッコよかったよ?」
「――――……」
そう言ったら。玲央が、一瞬黙って。
マジマジと、見つめてきて。それから、ふ、と視線を逸らされる。
「……マジで――――……意味わかんねえなー」
「え??」
玲央が目の前で、前髪を掻き上げて、そこで止まる。
そのまま、斜めに見下ろされて。
「玲央?」
不意に、玲央の手が首の後ろに置かれて、引き寄せられて、キスされた。
「……!」
びっくりしすぎて、唇を離した玲央を、マジマジと見上げる。
だって、絶対、見えるし――――……。
「そんなとこでいちゃつくな」
背の高い人から、すかさずツッコミが入る。
「はは。優月の顔……玲央と違って見られるのなんて慣れてないんだから、やめてあげたら?」
勇紀のセリフ。もう1人の人は、ふ、と苦笑いで息をついてるだけ。
――――……こういうの、日常茶飯事なのかな……。
世界の違いにやっぱりちょっとクラクラしながら。
なんでか急にキスしてきた玲央は。
オレに顔を寄せて、向こうの3人には聞こえないように、囁くみたいな声で。
「……誰かに見られて照れるとか、初なのにさ」
「え?」
「――――……めちゃくちゃかっこよかったとか、まっすぐ言われるとさ…」
「――――……」
「……すげえ恥ずいんだけど。……何これ?」
照れ隠しなのか、む、とした顔をして、オレの頬をつまんでくる。
え。
何。
玲央って、オレに、見られてると、照れるの?
思った瞬間。
ぼっ、と赤面。
「……だからー……そういう顔、すんなっつの……」
ほんとにもー、とぶつぶつ言いながら。
すりすりと、頬を撫でてくる。
「顔、あっつ……」
クスクス優しく笑った玲央が、オレの持ってたペットボトルを手に取って、頬に当ててくる。
「ちょっとは冷えるか?」
「うー、もうぬるい……」
オレがそう言うと、玲央はぷ、と笑って頭をくしゃくしゃ撫でてくる。
「ほら玲央、イチャイチャしてないで続きやるよー」
「ああ。 ……じゃな、優月。待ってて」
頷くと、見惚れる位、カッコよく笑って、玲央が歩いて行った。
もう。ほんとに。
ドキドキが、すごいんですけど……。
何で、オレと、居てくれるんだろって、思うんだけど――――…。
――――……玲央って……オレに見られると、照れるんだ。
と思うと。
……なんか。玲央が言ってくれている通り。
好きって思ってくれてるのかなとは、思って。
何だか、ふわ、と気持ちがあったかくなる感じで。嬉しかった。
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