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第114話◇

 マンションに着いて、玲央を招き入れた。 「すぐ用意するから、待ってて?」 「ん」  うわー。  なんか、オレの部屋に玲央が居るって。  なんか、変。緊張、する。 「着替え持ってくるね」 「ああ」  父さんが住居用に提示してくれた金額で借りれる中で、一番広いとこを選んだから、大学生の一人暮らしにしては、広い方だと思うんだけど。  玲央のマンションに比べたら、段違いに狭いし。  玲央のマンションは広すぎて、オレがどこにいて良いか迷ったけど。玲央も逆に困ってるのでは……。  ……とにかく急ごう。  そう思って、手早く服を用意して、少し大きめのリュックに入れた。  授業の用意もして、よし、と玲央の居る部屋に戻ると。   「玲央、おまた――――……」 「なあ、これって、オレ?」  オレの言葉を遮って、机の前にいた玲央が振り返ってそう言った。  これってオレ??  ……何その質問――――……。 「……あ……」  土日に玲央の事考えながら、ついつい描いてた、玲央の似顔絵。  すっかり忘れてた。出しっぱなしで学校行ったんだ。 「ち……ちが――――……」  ぶるぶると首を振って否定しつつ、急いで玲央の所に行って、その手から紙を奪おうとするけれど――――……手を上にあげた玲央に、届くはずもなく。 「違くないよな? オレだろ?」 「……っ……」  す……すっごい、恥ずかしい。  なんか――――……何を見られるより、恥ずかしい気がする。 「すげー真っ赤……」  クス、と笑った玲央が、頬に触れてくる。 「何で? 別にいいじゃん。うまいし」 「……っ……」 「もらっていい?」 「……っ……」  ぶるぶる。 「何で?」 「……っ……月曜の約束を……どうしようって、考えてた時に……ついつい、手が動いて……でも、顔見てたの数分だったし……なんかうろ覚えで……こんなのあげられない」 「――――……でも、絶対オレだって分かるけどな」 「――――……っ」 「何でそんな恥ずかしいの? 真っ赤すぎだっつの」 「……っ……」  恥ずかしすぎて、涙まで浮かんできた。  すぐに気づいた玲央が、ぴた、と動きを止めて。じっと見つめてくる。 「あーあ、泣いてるし……」  玲央が、クスクス笑いながら、絵を机に置いた。そのまま、引き寄せられて、ぎゅうっと抱き締められてしまう。 「ほんと――――…… 可愛いなーお前」  上向かされて、キスされる。  舌が、触れて、ゆっくり、絡められる。 「……っ…」  あやされるみたいに、髪の毛に触れられる。  ちゅ、と頬にキスしながら、玲央がくす、と笑った。 「――――……絵、ちょーだい?」 「……っなんで……」 「んー。よく分かんねーけど……欲しいから」  よく分かんないって……。  何で、こんなの、ほしいんだろ。 「お前が、初めてオレを描いた絵だろ? なんか欲しい」 「――――……今度、ちゃんと、描くよ?」 「それもいいけどさ」 「――――……」  うぅ。……何が恥ずかしいって。  一人で勝手に絵描いてたの、バレて、しかも、見せるためになんて書いてないし。しかも……カッコよかったなあなんて思い出しながら描いた絵だし。……かなり、かなり、恥ずかしい。 「……誰にも、見せない?」 「見せない。家に置くから」 「――――……じゃあ。……いいよ」 「ん」  何でだかとっても嬉しそうに、ふ、と笑んだ玲央に、また、ちゅ、とキスされた。  なんか。  ――――……会ってからずっと、優しいのは、ほんとにずっとなんだけど。  なんか、さっきから。  ……ますます、触り方が、優しいというか。  ……見つめる瞳が優しすぎる、というか。  なんか見つめ返すのすら、恥ずかしいんだけど、どうしたら……。  そんな事を思いながら、オレが玲央を見上げると。 「ん?」  クス、と笑って、瞳が優しく緩む。  顔見るだけで、顔が熱くなるって。  ……何かの、病気かもしれない。     心臓、ドキドキして、なんか、痛い。加減、してほしい……。

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