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第115話◇
【side*玲央】
「……めちゃくちゃ、カッコよかったよ?」
バンドの演奏の後、優月が言った言葉。
言われ過ぎてて、いつからか、何とも思わなくなってた。
……当然、的な、感情しかなかったのに。
……何でオレは、優月相手だと、照れるかな。
――――……意味わかんねえな。
優月の事が可愛く思えてどうしようもなかったから、後ろに3人が居るのももちろん分かってた上で、キスした。
そしたら、今までのびっくりとは、全然違う反応。
お友達がいるのに、何してんの?
瞳は、そう訴えていた。
すぐに甲斐達からツッコミが入ると、優月は、いつものことなのかな?位の反応で、少しほっとしたみたいで。
つか。
誰かとキスするのがいつもの事だと、ほっとするってなんだよ。
少しはそこらへんに対して、妬けば?と、思う。
――――……けれど、そう思った瞬間。
バカか、オレ。今までと、言ってる事、違いすぎ。
何なんだほんと。優月。
……好みの、美人系の顔では、全然ねーし。
どっちかっつーと、綺麗でプライド高そうな方が、好きだった、というか。そういう奴らの方が、慣れてて、ドライで良かったのかもしれないけど。でも基本、綺麗な方が好きだと思ってた。
――――……こんな、何かポワポワした雰囲気の、何ならガキっぽい奴。
……なのに。
「……誰かに見られて照れるとか、初なのにさー…」
「え?」
「――――……めちゃくちゃかっこよかったとか、まっすぐ言われるとさ」
「――――……」
「……すげえ恥ずいんだけど。……何これ?」
ほんと。
なんな訳、これ。
――――……中学ん時に、好きだった子と、初めて付き合った時みたいな。
……そんな感覚に、似てる気がする。でも遠すぎて、ほとんど記憶にないけど。
優月にとっては、こういう関係が、完全に初めてで。
でもきっと、好きな子は何人か居たんだろうし。女の子だろうし。
お前が、オレを好きって言ってるのも、何な訳……。
頭の中は変にフル回転で、色んな事に思いを巡らせながら、ぷに、と優月の頬を摘まむ。
すると。何を思ったんだか。急に、ボッと赤くなった。
「……だからー…… そういう顔、すんなっつの……」
なんな訳お前。 大学2年、オレとタメだよな?
なんでそんな、絵に描いたみたいに真っ赤になるわけ?
でもって、その優月を見てると。
――――……ほんと、触りたくなる。
赤くなった頬をスリスリ撫でる。顔が熱すぎるので、優月の持ってたペットボトルで少し冷やしてやるけれど、たいして変わらない。ペットボトルがぬるいとか、情けない声で、言ってるし。
――――……なんでオレは、ほんと、お前がこんなに可愛いわけ?
そんな風に思っていると。
「ほら玲央、イチャイチャしてないで続きやるよー」
そんな言い方で呼ばれた。
つーか、このオレが「イチャイチャしてる」と言われるなんて。
そんな訳ねえだろと、思うのだけれど――――……。
優月に構ってる自分を表現するには、あてはまるような気もして。
けれど何だか、そんな風に言われるのは、柄じゃなさ過ぎて、素直には受け入れられない。
――――……ああ、ほんと……意味わかんねえかも……。
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