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第117話◇
【side*優月】
玲央のマンションに着いたら、玲央がすぐ夕飯を頼んでくれた。
「20分でくるってさ。――――……シャワー浴びとこうぜ?」
「うん……」
……えっと。それはやっぱり、一緒に??
玲央を見上げると、「ほら、いくぞ」と引かれて、バスルームに連れてこられた。
「……玲央、シャワーって、絶対一緒に浴びるものなの?」
「いや? 1人で浴びた方が早いし。別にいつもなんて浴びねえけど」
「……じゃオレも、1人で、浴びてもいい??」
「……お前は、ダメ」
「え、どうして……」
「――――……一緒に浴びたいから。ほら、脱いで」
ば、とまたうまく脱がされてしまう。
もう、脱がされるの何回目かだけど………服脱がすの、上手すぎる……。上半身取られて、諦めて下は自分で脱ぐ。
お湯を掛けられて、ボディスポンジを渡される。
あ、良かった。自分で洗って良いんだと、ほっとしてると。
「――――……なんかホッとされると、意地悪したくなるけどな」
え、と見上げると、玲央が、ニヤ、と笑いながら見つめてくる。
「――――……て言いたいけど、配達きちまうしな……」
言いながら、玲央が自分を洗ってるのを、横目に、またホッとしながら自分を洗う。
「……んー……やっぱ触りたい」
「……っ」
泡のついた手で、すり、と胸を撫でられる。全身に、ぞくっとした感覚が走る。けれど、そのまま玲央はぎゅーと抱き付いてきて動きを止めて。それから、ぱ、と胸から手を離した。
「――――……だめだな。我慢する……時間ねーしな……つかあとで入れば良かった」
ちゅ、と頬にキスされて離される。
あとで入ったらどうするつもりだったんだろう……。
ていうか、なんか。触れられた感覚が、尾を引いてて。
――――……くすぐったい。
なんか。中途半端に、触るのやめてほしいかも……。
玲央の触れた感覚を消したくて、胸のあたり、ごしごし洗ってしまう。
すごく手早く自分を洗い終えてしまった玲央が、ふ、とオレに視線を向ける。濡れた髪を掻き上げる仕草に、胸がどきっと、音を立てる。
何回見ただろ、濡れた髪の玲央。カッコ良すぎる。
ほんと。色っぽい、人だなあ――――……。
ぼー、と見ていると。
「頭洗ってやるよ」
玲央の手が、優しくオレの髪を洗い始める。
「――――……」
普通。頭洗うのって、後ろからじゃないのかなあ。
玲央の体が、目の前にあって。嫌でも目に入って、ドキドキする。
耐えられなくて、瞳を伏せた。
ほんと。……男らしくて……なんかすごくキレイな筋肉がついた体だよな。
――――……何もしなかったら、こうはならないもんね。
ちゃんと鍛えてきたんだろうし。
さっきの練習も、すごく一生懸命、歌ってるのが伝わってきた。
……そりゃ、人気、あるだろうなぁ……。
そんな風に思って、やっぱりなんでオレはここに?と、もう何回考えた分からない問いを自分に向けていると。
「――――……気持ちいい?」
そう聞かれて、ふ、と現実に戻った。
触れてる玲央の優しい手に、感覚が戻る。
「……ん。すごい、気持ちいい」
クスクス笑う玲央の気配。
「お前、髪触られてる時――――……寝ちまいそうな顔するよな……」
……ほんと、優しい、声。
お風呂場だから、余計に響くというか。
――――……イイ声、だなあ……。
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