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第118話◇

 玲央に触れられていると、なんか、ほんとに、眠くなってくる。 「あ、そういえばね?」 「ん」 「幼馴染に、何回か美容院に連れていかれてさ。毎回シャンプーされてるとほんとに寝ちゃって……」 「――――……ふうん……」 「優月どんだけ寝不足なのっていつも怒られるんだけどね。寝不足じゃなくても寝ちゃうんだよね……」  ふ、と、優しく笑う玲央の声。  ……なんか、めちゃくちゃ好きだなー……。 「じゃあ今度時間ある時、お前は湯船でお湯に入れたまま、洗ってやるよ」 「ほんとに寝ちゃうよ?」 「いいよ。気持ち良さそうなお前、見たいし」  クス、と笑いながらそう言ってくれる。  ほんと、優しいなー…… 「ん、おしまい。流すから ちょっと下むいて」  言われるまま下を向くと、優しい手が泡を流してくれる。 「優月、顔あげて」  シャワーを掛けられて、終わった気配に目を開けると。  その後、また髪に触れられて。ふわ、と良い匂いがしてくる。 「何の匂い?」 「リンス」 「……いい匂い」 「……昨日とかは、なんか色々お前にしてたら―――……付けるの忘れたんだよな……」  玲央が苦笑いしてる。 「そうなんだ…… あ。そういえばさ、玲央も、ひげ生えないの?? 朝も剃らないよね?」 「玲央も、って? もってなに?」  玲央がクスクス笑いながら、聞いてくる。 「オレ父さん譲りで、ほんとに体毛薄くて。父さんもひげ剃ってんのほとんど見たことないし、オレもそうだから、気にしてなかったんだけど…… 玲央も生えないの?」 「――――……オレ、脱毛してる」 「えっ。そうなの?脱毛って男もするの? あ、そっか。コマーシャル見たことあるような……え、玲央、してるの?」  びっくりしてまじまじ見上げると。  玲央が、ぷ、と笑った。 「ひげ剃り面倒だし。去年、甲斐と行ったんだ」 「へえええ? なんかすごい……見せて??」 「見せてって……」  苦笑いしてる玲央の顔をじーーと見るけれど。  綺麗なだけで、特になんの形跡もないし。 「……脱毛したかどうかって、見てもわかんねーぞ?」  クスクス笑う玲央に、頬を挟まれる。  そのまま、引き寄せられて、唇が重なってきた。 「――――……っん……っ?」  舌、絡んでくる。  ……まだ、見てたのに……。  ……まあ……全然、分かんなかったけど……。 「……ふ――――……っ……ン…… 」 「……は。なんか、お前の髪から、オレのリンスの匂いがするの、変な感じ……」 「――――……」 「……なんか。オレのって感じな?」  クスクス笑って、またキスされる。  玲央のキスって、いきなり深すぎて。とてもついていけない。 「……ん……っ……」 「――――……可愛いな……お前」 「……っ……」 熱っぽい瞳で見つめられると、なんだか、胸がドキドキして、うるさい。 「んー……ほんとそろそろ出ないとな……」  キスが離されて、優しく頬がなぞられる。  そのまま、首筋に指が滑って。  ぞくん、として、少し退くと。  ふ、と笑んだ玲央に、ちゅ、と頬にキスされる。 「……~~……っ……」  胸が、きゅん、として。  ……しすぎて。  もう無理。  なんかもう、耐えられなくて、思わず、しゃがみこんだ。  1回、玲央から離れたくて。思い切り顔も隠す。 「え?……――――……は? 優月? どーした?」  肩に触れられる。 「優月? なに、具合悪い?」 「――――………分かんない……心臓が痛い」 「心臓?何だそれ」 「――――……っドキドキするのが、痛くて無理だから……ちょっと一旦、離れたい……」 「……は??」 「……とりあえず、オレのこと、置いて、先出て……?」 「――――……」  少し後、ぷ、と笑われて。  脇に手が入って、立ち上がらされてしまう。  先出てって頼んだのに……。 「――――……こんな風に、しゃがんで逃げられたの、初めてなんだけど……」  クッと、可笑しそうに笑ってる。 「……そんなこと言ったって――――……ん、ぅ……」  めちゃくちゃ、深く、キスされる。  だから、もう、時間無いって――――……  短時間で、ものすごい深いキスをして、玲央は、唇を離した。 「――――……優月、最初より息吸えるようになったろ?」  くす、と笑って。玲央の唇がまた重なってくる。 「――――……ん、……っ」 「キスも、ちょっとうまくなってきたよな……?」  ぺろ、と唇舐められて。そんな風に言われて見つめられると。  かああっと熱くなる。 「玲央が……すごい、キス、ばっかりするから――――……」 「まあ…… お前には、ずーっとキスしてたいから」 「……」 「あとでもっとめいっぱいキス、しような?」  そんな風に言われてまた真っ赤になるしかない。  ふ、と笑った玲央に、ちゅ、と軽く唇を合わせられた。  もうなんか。熱くなることばっかり、されて、言われて。  本気で、熱、出そうな気がしてくる。  太刀打ちできなすぎて、ただ、目の前の優しい瞳を、見上げるしかできなかった。

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