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第119話◇

「……あーやば。あと5分か……」  シャワーを手に取った玲央が、リンスを流すためにまたお湯を掛けてくれる。 「――――……オレ服着るし、先出るから。優月はバスローブ着るなら、とりあえずそこに入ってるから」  玲央が出て行って。  急に離されて、ぽつんと1人残りながら。  なんだか、ぼーーー、と。バスタオルで、体を拭いてると。  ピンポーンと、チャイムの音。  あ。ほんとギリギリ……。  ……ていうか、オレのせいじゃないよね?  キスしたり、抱き締めたり、そんな事ばっかりするから。   オレの心臓までがおかしくなってきて、立ってられなくなっちゃうんだし……。  もう……オレ、素っ裸で、人前でしゃがんだなんて、生まれて初めて……。  なんか、立ってる事すら、耐えられなくなっちゃうんだもん。  ……上から見てアホっぽいだろうなー……。  うう。ほんと、恥ずかしすぎる……。  もう1回しゃがみこんでしまいそうだけど、玲央が来そうで、これ以上しゃがみこんでるとこ見られたくないし、何とか、耐える。 「優月? あ、バスローブ着た?」  玲央がもどってきて、そう言った。 「うん。下着とかもリュックだから、あっちで服着る」 「別にそのままでもいいけど」  ああなんか――――……またカッコいいなあ。  部屋着っぽい、Tシャツとズボンだけで、こんなカッコいい人、他にいるかなぁ……?    「食事来たけど――――……先、髪乾かそうか」  返事も聞かず、玲央がドライヤーを出して、スイッチを入れた。  鏡越しに、目が合って。ふ、と笑う玲央。 「――――……」  ……なんだかなあ。ほんと。  ……イケメン過ぎて。  ずーっと、顔、見てても飽きなそう。 「――――……見すぎ」  ふ、と玲央に笑われてしまった。 「……あ。ごめん……」  一瞬何を言われたか分からなくて呆けてから、はっと気づいて慌てて目を逸らした。そのまま、髪が乾くまでは話さないままで過ごす。  見すぎちゃったかな。いつも見すぎちゃうな……と、俯いたまま過ごす。 ドライヤーが終わったので、ぱ、と、振り返った。 「玲央の髪、乾かす?」 「ん――――……あとで」 「?」  あとで?  受け取ろうとしたドライヤーを、横に置かれてしまって、そのドライヤーを見ていたら、腕を引かれて、引き寄せられた。  咄嗟に玲央を見上げて、見つめあう。 「――――……見るなって言ってるんじゃないよ」  ふ、と瞳が緩む。 「……や、なんじゃないの?」 「嫌な訳ないだろ」 「……そうなの?」 「――――……オレがお前に見られて嫌だって……お前がそう思うのが意味わかんねえけど」 「……?」 「オレ、そんな風な態度、取ってる?」 「――――……とっては、ないけど……」 「けど?」 「………玲央が、何で、オレと居てくれるのか、よく分かんないから……」 「――――……」 「……変なコトしたら、嫌になる、かなー……とかは、思う」  玲央が変な顔してるので、何となくどんどん俯きながら、声が小さくなっていく。一応言い切った瞬間。  顎を捕らえられて、上向かされた。 「……オレ、お前が可愛いって、言わなかった?」  じっと見つめられる。   「――――……何でそんな風に思うのかよくわかんねーな」  そりゃ。  ……玲央は、自分に自信があるだろうから。  好かれるの当然、みたいな感じだろうし。  玲央の事を好きな人が、周りにいっぱいいるようなとこで生きてきたんだろうし。なんで自分と居るんだろうなんて、思わないんだろうけどさ……。  そんな風に思ってると、玲央が、ふー、と息をついて。  頬にそっと、触れてきた。 「優月、キスして」 「え?」 「お前から、しろよ」 「……っ……」  急な要求に、戸惑う。  顔、熱くなる。 「――――……」  少し屈めてくれてるので、顔をあげて近づいて、唇が触れるか触れないかで、離した。 「もっと」 「……っ」  今度は、ちゃんと、触れて。また離した。 「……もっとちゃんと」 「――――……っ……」  どんどん、顔、熱くなってくる。  何これ。恥ずかしいんだけど。  しかも、玲央、ずっと、目、開いてるし。  ちゅ、とキスして。 おそるおそる、舌で、玲央の唇に触れた。 「――――……」  唇の間で、ふ、と笑ったと思ったら。  いきなり深く、重なってくる。 「…… っ ……ん、んっ……!」  首の後ろに回った手に押さえつけられて、深い深い、キス。 「……ん……ぅ――――……っ……」  玲央の思うまま、キスされる。  絡んでた舌を離されて、は、と熱い息が零れる。  至近距離で、触れるか触れないかの距離で、見つめられて。  ふ、と笑まれる。 「――――……玲央……」 「……ん?」 「――――……玲央が、好き……」  自然と漏れてしまった言葉に。  玲央は、また優しく笑って。 「なんかそれ――――…… すげぇ…… 気分が上がるな」  クスクス笑った玲央に、ぎゅ、と抱き締められて。  絶対、ドキドキ、伝わってるよな、なんて思いながら。  玲央の背中に、腕を回した。    

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