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第120話◇

【side*玲央】  バスルームから出て服を着て、髪を拭いてると、ちょうど食事が届いた。  ――――……ギリだったな。  受け取った食事を、キッチンに置いた。  時間がないから普通にシャワーを浴びて済ませようと思ったのに。優月を見てると、どうしても触りたくなって、  なんか――――……触りたくて我慢できないとか、ほんと何なんだか。  時間がないの、分かってたのに。  ………あいつの何に、そんなに我慢できなくなるんだろ。  色っぽいとはかけ離れてるし。  ――――……あーでも触るとすぐ、やらしい顔するけど……可愛いけど。  くす、と笑って。  ……そんな自分に、は、と気付く。  1人で笑うとか、  ――――……マジで、無いな……。 「――――……」  ……優月、来ねえな。  バスルームに戻って覗くと、優月はバスローブを着て、ぼー、とした顔で鏡の前に立っていた。 「優月? あ、バスローブ着た?」 「うん。下着とかもリュックだから、あっち服着る」 「別にそのままでもいいけど」  ――――……つか、このまま、触りたい。  触って、乱して――――……そのままベッド、連れ込みたい、けど。  食事来たしな……。我慢、だな。 「食事来たけど――――……先、髪乾かそうか」  人が触りたいの、我慢してやってんのに。  ドライヤーをかけて、鏡越しの優月と目が合うと。  じー、と、見つめてくる。  ――――……なんだろうな。  このまっすぐな瞳に、オレは弱い気がする。  至近距離から見つめられると、ほんと可愛いと思ってしまう。  裏に、何も無さそうな。 思ってること、全部瞳に乗っけてくるみたいな、そんなとこが――――……可愛いのか……?   「――――……見すぎ」  そう言って、笑ったら。 「……あ。ごめん……」  一瞬、ポカンとした表情をして、それから慌てて、オレから目を逸らした。  そのまま、なんか微妙な顔で俯いてる。  ――――……別に謝れって言ってねーんだけどな。  ふわふわに乾いた髪の毛。スイッチを一回切る。 「玲央の髪、乾かす?」 「ん――――……あとで」 「?」  優月は、不思議そうな顔をしている。  ――――……可愛い。  抱き寄せて、見つめあう。 「――――……見るなって言ってるんじゃないよ」  そう言うと、優月はじっと、オレの瞳を見つめてくる。 「……や、なんじゃないの?」 「嫌な訳ないだろ」 「……そうなの?」 「――――……オレがお前に見られて嫌だって……お前がそう思うのが意味わかんねえけど」 「……?」  つか、ほんと分かんねえ。見られて嫌そうな態度取った覚えないし。  ……取ったっけ? 「オレ、そんな風な態度、取ってる?」 「――――……とっては、ないけど……」 「けど?」 「…………玲央が、何で、オレと居てくれるのか、よく分かんないから……」 「――――……」  ……は?――――…… なんだ、それ?   「……変なコトしたら、嫌になる、かなー……とかは、思う」  優月は段々俯いて、段々声を小さくしながら、そう言った。  ――――……ほんとに、何言ってんだろ、優月。  顎を捕らえて、上向かせる。 「……オレ、お前が可愛いって、言わなかった?」  じっと見つめると。揺れる視線。 「――――……何でそんな風に思うのかよくわかんねーな」  こんなに可愛いって言って、お前と居るのに、  オレが何で一緒にいるか分かんないって。  オレは、ふー、と息をついて、優月の頬に触れた。 「優月、キスして」 「え?」 「お前から、しろよ」 「……っ……」  また少し赤くなって。  でももう、キスにそこまで抵抗はないみたいで。  まっすぐ見上げてくる優月に、ゆっくりキスされた。  触れたか触れない位の、キス。 「もっと」 「……っ」  今度は、ちゃんと、触れてる。……触れてるだけ。 「……もっとちゃんと」 「――――……っ……」  そろそろと、舌が、唇に触れてくる。  ――――…… あーもう……じれったすぎる。  けど、これが、すげえ可愛いって思うのも……やっぱ謎……。 「…… っ ……ん、んっ……!」  後頭部に手をかけて、引き寄せて、思うままキスする。    ……優月の舌、柔らかくて――――…… 気持ちいい。 「……ん……ぅ――――……っ……」  ……つか、ほんとに柄にもなく、「可愛い」としか思えない。  「……っ」  絡めていた舌を離してやると、はあ、と熱い息を吐いて、優月が瞳を開けた。 「――――……玲央……」 「……ん?」 「――――……玲央が、好き……」  ふわ、と笑う優月。――――……可愛い。 「なんかそれ――――…… すげぇ…… 気分が上がるな」  クスクス笑って、優月を抱き締めた。  背中に、優月の手が回ってきて、しがみついてくる。  ……あーなんか……。  お前と居ると…… ひっついてる間に、時間がやたら過ぎてく気がする。

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