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第124話◇

「……誰から?」  結局、それだけは、聞いてしまった。 「え? ……あ。 えーと……蒼くんって言って……絵の先生の息子さん。ていうか、蒼くんも先生みたいなものなんだけど……」 「……それ、昨日も一緒に居た奴?」 「あ、うん。そう」 「――――……仲いいの?」 「んー……7才から知ってるからね。ほんとのお兄ちゃん、みたいかなあ。いっつもからかわれてるだけな気もするけど」  そんな風に言いながら、ふ、と息を付きながら、椅子に戻ってきた。  ……からかわれてる?  ――――……可愛がられてンじゃねえの?  ……そこは、何だか口にできない。  オレの心中も全く気付かず、優月は水を一口飲んでから、まっすぐオレを見つめてきた。 「……それよりさ、さっきの話なんだけどさ」 「――――……ん?」 「……オレは、玲央が居てくれる間は、玲央としかしないよ……?」 「――――……」  相当、ムカついていた、のだけれど。  ……なんだか、そんな言葉と可愛い言い方に、ちょっと。いやかなり、ムカつきが、軽減する。  現金な自分に、少し、呆れる。 「ていうかさ、オレ、玲央でいっぱいいっぱいなのに、他の人に行く余裕なんて、ないし……」  「――――……」  もう。玲央ってば、何言ってんだろう、とばかりに、優月が口をとがらせて文句を言ってる。  ――――…… 腕の中に、引き込みたくなる。  ……何で、こんなに、可愛いって、感じるんだろ?  ………すげえ、謎……。 「……優月」 「……ん? 何?」 「早く食べて」 「……え? うん。食べるよ?……ていうか、オレもう、結構食べたんだけど……」  確かに、たまにポカンと口開いてる時以外は、ずっともぐもぐ食べてはいた。 「――――……触りたいから。早く食べ終わって」 「――――……っ」  ぴた、と箸が止まる。  ……逆効果か……。  何も言わずに食べさせた方が早いか。  そう思って、黙ってると。 「……あのさ、玲央」 「ん?」 「……こっち、来て?」 「――――……」 「……ここに居る時いっつも、隣座ってるから……なんか、遠い」 「――――……」  つか。 ……お前、バカなのかな。  そんな風に可愛い感じでもごもご言われて、隣に行ったら、オレ絶対、お前に触るけど。  ――――……触る、ていうか……   ただ触るだけじゃ済まなくて、ベッド直行だけど。 「もう、食べなくていい? 良いなら、そっち行く」  聞くと、優月がぱ、と顔を上げて、オレを見つめた。  恐らく、何となくでも意味が分かった瞬間なんだと思う。かあっと、赤くなった。 「……こ、れだけ食べちゃう」  皿にのってる食事に視線を落として、優月は言った。  残してもったいないとか言ってたから、一昨日のよりは、注文を少なめにしたんだけれど、やっぱりまだ少し残ってる。 「じゃ食べ終わってから行く。オレ隣に行ったら絶対触るし」 「……」  ん、と、赤い顔で、頷いてる。  ――――……ほんとすぐに、赤くなる。  可愛い。  ……つか。オレ以外の事でも――――……さっきも赤くなってたな……。  何話して、電話で赤くなってたんだ。   やっぱり、少し、心にひっかかる。  ……これって、オレ、何が気になってるんだろ?

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