125 / 856
第125話◇
そんな事を思ってると、優月が、話し始めた。
「……玲央、聞きたい事があって」
「ん、いーよ……なに?」
「……オレとのセフレ、もう一回考えるって言ったのってさ」
「ん」
「……あれってどういう意味?」
「――――……」
「……別にオレ、それだけがしたくて、玲央と居たいって言ってるんじゃないよ? 玲央、他の人にもムカつきながら、セフレ何人も居るの?」
「――――……」
……そんな訳ねーだろ。
セフレはセフレだ。 むしろそれしかしない位でちょーどいいし。
つか、別に皆、「セフレになりましょう」なんて、そこまで宣言してない。何も言わず、ちょっと連絡して、流れでとかも結構あった。
何も形について話さず、会いたい時に会ってそういう事してる内に、これからもって話になった時、続けるならって事で、干渉ナシ束縛ナシでいいなら、みたいな話をするだけで。
お前みたいに、最初からセフレにしてください的な奴、よく考えたら居ないし。
……ていうか、全部し終えてもないのに、セフレとか、意味わかんねえし。
……全部してないっていうのだって、そもそも、ベッドで2日も過ごして、何で最後までしてねえのかすら、そこから、他の奴とは違ってて。
出会いから全て今迄と違いすぎてて、もはや、どうしていいか分かんねえ。
心の中で色々言ってる内に、はー、とため息が漏れた。
そのため息に、何の勘違いをしたんだか、優月が、やっと空になった皿を置いて、変な事を言い出した。
「――――やっぱり、オレはセフレにも、なれない?って事?」
「――――……は?……ん? どーいう意味?」
「だって、オレ、よく考えたら……まだ玲央としてないし。 なのにセフレにしてとか…… おかしな事言っちゃってるし……」
「――――……」
……まあ確かに、そこはおかしいと思ってるけど。
おかしいのはそこがメインではないというか。
……セフレにもなれないって言い方、それ、何なんだよ?
「他の人にはムカつかないなら、そこが違うの??」
「――――……」
――――……ダメだな、なんか、全然、しっくりこない。
その時、昼間に話した、村澤智也の言葉が、不意に頭に浮かんだ。
「まあ釣り合わないって、ちょっと思ってるらしいけど。
違うなら、否定してやって」
オレと、釣り合わない? とか、思ってるのが――――……。
優月の、根本に、あんのか?
よく考えれば、オレはセフレがいても良いのに、優月はオレしかしないとか。セフレにもなれない、とか。 なんか、セリフが、いちいち、おかしい。
おかしいのは分かるが。
……正直、どこまで戻って、否定すればいいのか、なんだかさっぱり分からない。
だから。もう、分かってる事だけを、言ってみる事にした。
「――――……なあ、優月?」
「……うん?」
「……オレ、お前の事、すげえ可愛いなと、思ってる訳」
そう言ったら。
優月は、また、まっすぐ、見つめてくる。
すこし。顔が緩んだ気が、する。
「――――……隣に座ったら、すぐ触りたくなるからって離れてるとか…… そんなに触りたいって思ってるのも、今迄あんまり無いわけ」
「――――……」
「……オレお前にはすげえキスしてるけど。キスも、普段そんなしてないし」
「――――……」
「ベッドに2日も過ごして、最後までしてないなんて、ほんとなら、ありえない。 ていうか1日でもありえねえし。しかもそれが、めちゃくちゃ慣らしてからにしたいからとか、正直自分でもよく分かんない訳」
「――――……」
「……あと、他人と寝るの好きじゃねえから、他のセフレはほとんど泊まらないで帰ってた。けど、お前を帰す気にならないし」
「――――……」
「3日も続けてこんな風に会うのも、すげえ珍しいし。しかも、待ってたり、迎えに行ったり。……そんなのも、あんま、した記憶、ねえし」
「……っ……」
何だかびっくりしたような顔をしながら、オレを見つめていた優月は、そこまで聞いて、なんだか、恥ずかしそうに、俯いた。
「……ちょ……、と…… 待って?」
手の甲を唇に持ってって、ぎゅ、と当ててる。
また、顔、赤い。
「……何か……オレの事が……すごく好き、みたいに聞こえるんだけど……」
自分で言ってから、ますます恥ずかしくなったみたいで、更に赤くなって俯いていく。
つーか。
……何言ってんの、今更。
「――――……だから……」
椅子から立ち上がり、優月の側に歩いて。
ぐい、と顔を上げさせる。
「――――……オレ、お前の事、好きって、言ったよな?」
「――――……」
じ、と見つめると。
熱っぽい瞳が、少し潤む。
「――――……話、なかなか、かみあわねえからまた続き、明日で」
「……?」
「ベッドいこ」
優月を立たせて手首を引く。
「―――……どんだけ好きか、教えてやるから」
「――――……っ……」
また赤くなる。……ほんと、可愛いし。何なんだ、ほんとに。
手を引かれるまま、優月は抵抗なく後をついてくる。
ベッドに座らせて、小さな電気をつけると、すぐに横にして組み敷いた。
優月の顔の横に手をついて。真下の優月を見下ろす。
「優月……」
キスしながら触れた、優月の胸が、触れて分かる位にものすごいドキドキしてて。
こっちにまで、その鼓動が、うつってきそうな気がした。
ともだちにシェアしよう!