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第125話◇

 そんな事を思ってると、優月が、話し始めた。 「……玲央、聞きたい事があって」 「ん、いーよ……なに?」 「……オレとのセフレ、もう一回考えるって言ったのってさ」 「ん」 「……あれってどういう意味?」 「――――……」 「……別にオレ、それだけがしたくて、玲央と居たいって言ってるんじゃないよ? 玲央、他の人にもムカつきながら、セフレ何人も居るの?」 「――――……」  ……そんな訳ねーだろ。  セフレはセフレだ。 むしろそれしかしない位でちょーどいいし。    つか、別に皆、「セフレになりましょう」なんて、そこまで宣言してない。何も言わず、ちょっと連絡して、流れでとかも結構あった。  何も形について話さず、会いたい時に会ってそういう事してる内に、これからもって話になった時、続けるならって事で、干渉ナシ束縛ナシでいいなら、みたいな話をするだけで。  お前みたいに、最初からセフレにしてください的な奴、よく考えたら居ないし。  ……ていうか、全部し終えてもないのに、セフレとか、意味わかんねえし。  ……全部してないっていうのだって、そもそも、ベッドで2日も過ごして、何で最後までしてねえのかすら、そこから、他の奴とは違ってて。  出会いから全て今迄と違いすぎてて、もはや、どうしていいか分かんねえ。  心の中で色々言ってる内に、はー、とため息が漏れた。  そのため息に、何の勘違いをしたんだか、優月が、やっと空になった皿を置いて、変な事を言い出した。   「――――やっぱり、オレはセフレにも、なれない?って事?」 「――――……は?……ん? どーいう意味?」 「だって、オレ、よく考えたら……まだ玲央としてないし。 なのにセフレにしてとか…… おかしな事言っちゃってるし……」 「――――……」  ……まあ確かに、そこはおかしいと思ってるけど。  おかしいのはそこがメインではないというか。  ……セフレにもなれないって言い方、それ、何なんだよ? 「他の人にはムカつかないなら、そこが違うの??」 「――――……」  ――――……ダメだな、なんか、全然、しっくりこない。  その時、昼間に話した、村澤智也の言葉が、不意に頭に浮かんだ。 「まあ釣り合わないって、ちょっと思ってるらしいけど。  違うなら、否定してやって」    オレと、釣り合わない? とか、思ってるのが――――……。  優月の、根本に、あんのか?   よく考えれば、オレはセフレがいても良いのに、優月はオレしかしないとか。セフレにもなれない、とか。 なんか、セリフが、いちいち、おかしい。  おかしいのは分かるが。  ……正直、どこまで戻って、否定すればいいのか、なんだかさっぱり分からない。  だから。もう、分かってる事だけを、言ってみる事にした。 「――――……なあ、優月?」 「……うん?」 「……オレ、お前の事、すげえ可愛いなと、思ってる訳」  そう言ったら。  優月は、また、まっすぐ、見つめてくる。  すこし。顔が緩んだ気が、する。 「――――……隣に座ったら、すぐ触りたくなるからって離れてるとか…… そんなに触りたいって思ってるのも、今迄あんまり無いわけ」 「――――……」 「……オレお前にはすげえキスしてるけど。キスも、普段そんなしてないし」 「――――……」 「ベッドに2日も過ごして、最後までしてないなんて、ほんとなら、ありえない。 ていうか1日でもありえねえし。しかもそれが、めちゃくちゃ慣らしてからにしたいからとか、正直自分でもよく分かんない訳」 「――――……」 「……あと、他人と寝るの好きじゃねえから、他のセフレはほとんど泊まらないで帰ってた。けど、お前を帰す気にならないし」 「――――……」 「3日も続けてこんな風に会うのも、すげえ珍しいし。しかも、待ってたり、迎えに行ったり。……そんなのも、あんま、した記憶、ねえし」 「……っ……」  何だかびっくりしたような顔をしながら、オレを見つめていた優月は、そこまで聞いて、なんだか、恥ずかしそうに、俯いた。 「……ちょ……、と…… 待って?」  手の甲を唇に持ってって、ぎゅ、と当ててる。  また、顔、赤い。 「……何か……オレの事が……すごく好き、みたいに聞こえるんだけど……」  自分で言ってから、ますます恥ずかしくなったみたいで、更に赤くなって俯いていく。  つーか。  ……何言ってんの、今更。 「――――……だから……」  椅子から立ち上がり、優月の側に歩いて。  ぐい、と顔を上げさせる。 「――――……オレ、お前の事、好きって、言ったよな?」 「――――……」  じ、と見つめると。  熱っぽい瞳が、少し潤む。 「――――……話、なかなか、かみあわねえからまた続き、明日で」 「……?」 「ベッドいこ」  優月を立たせて手首を引く。 「―――……どんだけ好きか、教えてやるから」 「――――……っ……」  また赤くなる。……ほんと、可愛いし。何なんだ、ほんとに。  手を引かれるまま、優月は抵抗なく後をついてくる。  ベッドに座らせて、小さな電気をつけると、すぐに横にして組み敷いた。    優月の顔の横に手をついて。真下の優月を見下ろす。 「優月……」  キスしながら触れた、優月の胸が、触れて分かる位にものすごいドキドキしてて。  こっちにまで、その鼓動が、うつってきそうな気がした。

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