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第126話◇
【side*優月】
玲央に電話が、2回続けて掛かってきた。
たぶん――――……セフレ、の人かな。
誘われてて。
断って、くれてた。
なんか、玲央が、こっちを気にしてくれてるのは分かるんだけど。
別に、そんなに気にならない。
だって知ってるし。
ていうか。こんなにモテそうな人が、恋人作らずに、気に入った人と過ごすっていうなら。――――…… そこに行く人はいっぱい居るんだろうし。
でもって、あんなに優しく、してくれるなら。
玲央と別れたいって言う人なんて、なかなか居ないと思うし。
気にしてくれてるのは、なんだか、嬉しいけど……。
電話が終わって、戻ってきてくれた時、隣に座らない事の方が気になった。
隣に居ると、触っちゃうからと言われて。
――――……なんか、そんなに、オレに、触りたいと思ってくれてるんだって、思ったら、恥ずかしかったけど、嬉しかった。
だから、ほんとに、全然、電話の事とか、気にしてなかったのに、
「……オレが他の奴とセフレなの、嫌だよな?」
と、玲央が言った。だから。素直に思うまま。
もとから知ってて玲央の所にきたって、事と。
オレが嫌だっていう方が変だと思うって事を、伝えた。けど。
なんか――――…… 玲央が、複雑な顔してて、微妙に分かってくれない。
何でだろう。
――――……じゃあ、オレが……それを嫌だってもし言ったら、
玲央は、どうするのかな……?
「オレが誰かと寝るとか、ほんとに気になんねえの?」
なんか、すごく機嫌が悪そうに、そう聞かれて。
――――……また同じ事を、伝えた。
でも、なんか、玲央は、眉を寄せてるし。
これ以上何て、話せば、いいんだろう。
「……じゃあ、お前は?」
「え?」
「オレが他の奴としていいなら――――……お前も、誰かと、すんの?」
「何を?」
「誰かと、そーいうこと。すんの?」
「――――……」
そんな事、聞かれると思ってなくて、最初、何言ってるのか分からない、というか――――…… 分かったけど、それじゃなくてもっと違う意味なのか、考えてしまった位、びっくりした。
何言ってるんだろう、玲央。
思い切り首を横に振ってしまった。
何もかも、初めてだったオレが、玲央と居たいからって、一生懸命ついてってるのに。
他の人とする余裕なんてある訳ない。
分かってると、思うのに。
なんでそんなこと、聞くんだろう。
「っオレが違う人とするわけないじゃん。ていうか、オレ、誰とするの?」
そう言ったら、なんか、さっきからずっと微妙で複雑そうだった顔が、少し、優しくなった。
あ……これを否定すると、玲央は、嬉しい……のかな?
オレが、他の人と、するのは、嫌……と思ってくれてるのかな??
その時。遠くでブーブーと、長い振動音。玲央のスマホとは別の方向なので、自分のなのは分かったけれど、出なくていいやと思っていたら。
「……電話じゃねえの?」
と玲央に言われて。
「あ、うん……でもご飯中だし。玲央と話してるし、あとでいいよ」
そう言って、放置したのに、もう一度鳴り響く。
……振動にしてあるのに、なにか硬いものと触れ合ってるのか、結構うるさい。一言謝ってから、リュックまで歩いて画面もろくに見ずに、電話に出た。
『優月か?』
この声は。昨日ぶり。蒼くんだ。
「あ。なんだ、蒼くんか……どーしたの? 電話珍しい」
そう言ったら。
『昨日の奴。玲央、だっけ?』
「ん」
『ちゃんと顔見たぞ。まあ。イケメンなのは認めるわ』
「でしょ……だって蒼くんより上だもん」
『そこは認めてねーけど。……あの後ずっと一緒だったの?』
「うん」
『あいつ、お前のこと、すげー大事にしてねえ?』
「……ん?? ――――……んー……どうだろ……わかんない」
『そう見えたけど。セフレなの? あ。最後までした?』
相槌打ちながら聞いていたけれど、そこで、ぐ、と言葉に詰まる。
「……っ……まだ、だよ……」
『は?まだなの? じゃ何したの?昨日』
「……っ」
そんなの、ここで言えないし!
ていうか、ここでなくても、言えないし!!
もう、蒼くんのバカ!!
顔が熱くなってくる。
「……っとにかく、分かんないけど、まだなの」
『じゃあ、お前まだ大人んなってねーの?」
「っ…… それ以上用ないなら切るよ」
『あー……? って、――――……もしかして、今も一緒?』
「……そうだよ」
『じゃあ、今日、ついに、かな?』
「……っ……だから、わかんないって……」
もう、蒼くんのバカバカバカバカ……。
『あ、優月、聞いたか?』
「え?」
『恋人作らない理由』
「……あ、えっと――――…… 聞いてない」
『聞ける時、聞いてきな?』
「……うん。分かった」
『じゃあな。頑張れよー』
「……はい。じゃあね」
何を頑張るんだ。もう。 なんでこう、この人は。もう。
いっつも、ほんと、からかうし。
……なんかもう、最大のからかいネタを、ものすごいうっかり、与えてしまったとしか、思えない……。
……はーーー……。
玲央が後ろにいる所で、最後までしたかどうかとか。
はーもう、蒼くんのバカ。
通話を切って、スマホを置いて。
はー、とため息をついて、うずくまってしまった。
「優月?」
「……あ、うん。 終わった」
呼ばれて、仕方なく、立ち上がる。
顔の熱、まだ引かないけど。 仕方ない。
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