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第128話◇
自分で言ったセリフにまた迷って、悩みまくっていると。
「――――…なあ、優月?」
「…うん?」
「…オレ、お前の事、すげえ可愛いなと、思ってる訳」
急にそんな風に言って、まっすぐ見つめてくれる玲央。
それは、ほんとに素直に、嬉しい。
「――――…隣に座ったら、すぐ触りたくなるからって離れるとか… そんなに触りたいって思ってるのも、今迄あんまり無いわけ」
「――――……」
「…オレお前にすげえキスしてるけど。 キスも、普段そんなしてないし」
「――――…」
え。そうなの? …キス、しないの?
……何で、オレにはしてくれるの?
「ベッドに2日も過ごして、最後までしてないなんて、ほんとなら、ありえない。 ていうか1日でもありえねえし。しかもそれが、めちゃくちゃ慣らしてからにしたいからとか、正直自分でもよく分かんないわけ」
「――――…」
…それは多分… オレが初めてだし、男だし。
玲央が優しいから、言ってくれただけなんじゃないのかな…。
「…あと、他人と寝るの好きじゃねえから、他のセフレはほとんど泊まらないで帰ってる。けど、お前を帰す気にならないし」
「――――……」
――――……他人と寝るの、好きじゃないの? …知らなかった。
ていうか、皆、泊ってるんじゃないの?
結構衝撃のセリフなんだけど…
どうしよう…オレ、今日で、もう、3日目、なんだけど。
オレが寝ちゃったから、仕方なく泊めてくれてたり…?
あれ、でも帰す気にならないって…居ても良かったのかな?
なんだか、色んなことが頭の中でぐるぐる回る。
「3日も続けてこんな風に会うのも、すげえ珍しいし。しかも、待ってたり、迎えに行ったり。…そんなのも、あんま、した記憶、ねえし」
「…………っ…」
――――……なんか。玲央。
言ってること――――……変だよね…?
「…ちょ…、と… 待って?」
顔が、知らない間に、熱を持ってる。手の甲で唇を押さえて、少し、耐える。
「…な、んか……… オレのこと…大好き、みたいに…聞こえるんだけど…」
なんか、オレだけ特別って、言ってるように、聞こえてしまって、そう言ってしまったけれど。
言葉に出してしまったら、ものすごい自惚れな気がして。余計熱くなってしまう。
あー、もう。オレ何言っちゃってんだろ。
なんか。もう――――… 全然分かんなくなってきた。
オレ、いっぱいいっぱい過ぎ…。
「――――…だから…」
椅子から立ち上がった玲央が、そばに立って。
ぐい、と顔を上げさせる。
「――――………オレ、お前のこと、好きって、言ったよな?」
「――――……」
じ、と見つめられると。
ずきん、と胸の奥が、痛すぎる。
好きって、言ってるから――――…
………だから、全部…特別にしてくれてるって、こと?
これ、勘違い…とかじゃない、のかな。
玲央、なにか、違う意味で、言ってる……??
「――――…話、なかなか、かみあわねえからまた続き、明日で」
「…?」
続き、明日?
「ベッドいこ」
言われて、手を引かれて。
内心、心臓が飛び出そうになりながら、玲央についていく。
後ろ姿、だけでも、ほんとカッコいいなあ…なんて思ってしまう。
掴んできてる手、熱く感じて。嫌でもドキドキする。
ベッドに座らされて、玲央が部屋の小さな電気をつけるのを見つめて。
戻ってきた玲央に、ベッドに倒された。完全に上に押し乗られて。
真上の玲央が、じっと見つめてくる。
「―――……どんだけ好きか、教えてやるから」
「――――……っ…」
言われて一言で、心臓が、どくん、と鳴って。
そのまま、鼓動がうるさすぎて、顔が熱くて、自然と涙が滲んできた。
――――…なに、どんだけ好きか、教えてやるって…
そんなに――――…オレのこと…好き、でいてくれてるのかなと…思ってしまうけど。
……それとも――――……
こういうこと、する時は… 誰にでも、言うのかな…。
…もしかしたら、そうなのかも、とも思う。
玲央みたいな人が、オレだけが好き、みたいな――――…
そんな妄想を、自分の中で確立してしまうのは、ちょっと、怖い。
でも。
それは、怖いけど。
「…れお…」
重なってきたキスの間で、思わず、名を呼んだ。
くす、と笑った玲央が、「…ん?」と優しく聞き返してくれる。
玲央の気持は――――… よく分かんないけど。
でも、オレは。
「――――…………だいすき」
オレの気持は、もう、分かってる。
そう言ったら、少し顔を離されて、真正面から見つめられて。
ふ、と微笑まれた。
「……それいっぱい言ってて。―――…すげえ、可愛がってやるから」
組み敷かれて、見上げる玲央は――――…
熱っぽくて。声も、囁くようなそれは、色っぽくて。
まだ触れるキスしかしてなのいに。
ぞくぞく、して。
体の奥から、一気に熱くなる。
「――――……言わなくても、可愛がるけど…」
クスクス笑いながら、何度か、重なるだけのキス。
バスローブの上から、ただ触れられてるだけなのに、どんどん、呼吸が、早く、なって。
「――――…心臓の音、すげえな…」
優しく笑んで、玲央がじっと見つめてくる。見つめあったまま、軽い、キス。 触れ合わせるだけの――――…
そのまま、頬にキスして、頬や、首筋に軽く、キス。
「………――――…ふ…」
くすぐったくて、首を竦めたら、手首をとられて、軽く抑えられて。
ゆっくりと、唇が重なる。重なって。離れて、また、角度変えて、触れてくる。
…何で… そんな、キス、ばっかり…するんだろ…?
…息が、できない位の、キス――――… してほしいって…。
――――… 思って、しまう。
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