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第132話◇お互いに。

【side*玲央】  翌日。1限と2限の合間。  席を取って、廊下から、下を覗き込んだ。  なぜかと言うと。  この窓は、優月と出会ったあの場所の斜め上にあるので、下を見ると芝生とあのベンチが見えるから。  ――――……優月、居ないか。  ……まあ、昼時でもねえし。 居る訳ないか。  ていうか、ここから見てる奴が居たら、オレ達がキスしてたの、丸見えだったな。……まあ別に良いけど。  ――――……今日、風、気持ちいいな。  なんとなく、ぼーーっとその場所を見つめながら、風に当たっていると。昨夜から、ついさっき迄の事が思い浮かぶ。  昨日も結局最後まではしないで終わらせた。  散々イかせて、キスして、後ろ慣らして。  そこまで結構な時間もかけてたし――――……「大好き」とか言った後くらいからは、半分、うとうとし始めて。  あまりに可愛く思えてしまって、一緒にイって、寝かせてやる事にした。   まあ。別に、今更急いでもねえし。  朝起こしてシャワーを浴びさせて、食事を食べて、1限の優月に付き合って学校に来た。1限は部室でソファに寝転んで、ライブの曲を聞きながら過ごした。  優月とのこんな生活が、何だかおかしい。  朝が早くて、一緒にしっかり朝飯を取って、朝に学校に来て。しかもオレには1限がないのに。  ――――……健康的な生活が、笑えてくる。  優月と会う前まで、誰かとセックスして、夜中まで起きていて、朝遅く起きて、2限に間に合うように学校について。授業を受けて遊びに行って誰かと会って――――……みたいな、そんな生活だった。 食事も、特に朝はまともに取ってなかったっけ……。   「クロー?」  そんな声に、ふと下を見ると。  ――――……優月だ。  昼だけじゃなくて、こんな隙間の時間にも、ここに来る訳? 「あ、クロいた、おいでー」  3階だけど、優月の声が結構聞こえる。優月の声がわりと高めだからだろうか。一瞬呼びかけようとしたけれど、何だか少し観察したくなって、口を閉じた。ちょっとした、好奇心。 「おはよークロ」  よしよし、とクロを撫でながらそう言って、優月はその場にしゃがみこんだ。急いでコンビニに買いに行ってたのか、はあ、と息を整えながら、缶詰を開けて、紙皿みたいな物に移してるのが見える。 「食べていいよ」  クロの頭を撫でながら、優月が言うと、クロは食べ始めた。  角度的に、ちょうど優月の顔が、何となく見える。  ふ、と微笑みながら、クロを見つめてるのが分かる。 「今日お昼来れないからさ。ちょっと早くてごめんね」  なんて、話しかけてる。  はは。 なんかほんと――――……無邪気。  クロは食べ終わると同時に、すり、と優月の脚にすりよった。 「んー、なんでお前はこんなに可愛いかな~…… 美味しかった? 明日はおやつ持ってきてあげるからね」  そんな風に言いながら、クロを撫で回している。  ――――……は。なんかあいつって、いつか騙されそう。  ちょっと心配になる。  ……つか、今オレと、色々なってる時点で、ちょっと騙されてねえかな?  ほんとなら、優月とオレなんて、接点も一切無く、少しも絡むはずの無かった関係な気がする。  あそこでクロを挟んで会って、会話が無ければ。  学校ですれ違うだけなら、一切触れあわずに、過ごして終わった筈。  知り合う事もなくて。   触れ合う事もなくて。  可愛いなんて、思う事も、無く。 「――――……」  何だか。  ――――……すごく、ざわつく。  

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