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第133話◇
「――――……ほんと、クロ、可愛いなー」
クロに話しかけて、幸せそうな顔、してる。
こういう時の優月は、無邪気で、純粋な感じで、何だか遠く感じる。
最初に、乱したいと思ったのは――――……この優月だった気がする。
でも、乱したいだけじゃなくて。
あの笑顔をもうちょっと見ていたいとも、思ったっけ。
乱す方は、叶ってる気がする。
キスして、触れて、刺激すれば、すぐ快感に落ちる。
唇を少し開いてキスに一生懸命応えて。頬を上気させて、涙を浮かべて。
しがみついてくる。
乱してみたら、ギャップにはまりすぎてしまったのは、オレの方。
ゾク、と、特有の欲が、背筋を走る。
あーやば。……なんか。
……また触りたい。
スマホを取り出して。
『優月、今日何限まで?』
今朝、それを聞くのを忘れていた。後で連絡すると言って別れたので、とりあえず何限までかを聞いてみる。
ぴこん、と下の方で優月のスマホが鳴った。
クロを膝に乗せて、ベンチに座りながら、優月がスマホを取り出した。
スマホを見た瞬間。優月が、ふ、と笑った。
「――――……」
嬉しそうな顔で。
スマホを操作してるのが分かる。
――――……オレからの、連絡。
あんな顔で、受けるのかと思うと。
何だかくすぐったい感覚。
1人、顔が綻んでしまいそうで、思わず手で口元を隠した。
窓の方を見てるから、誰にも見られないのは分かっているのだけれど。感情を抑える為にも、手で押さえる。
なんかほんと――――…… 可愛くてたまらない。
そんな風に思っていると、すぐに玲央のスマホが震えた。
『4限までだよ』
「その後は?」
『何もないよ』
「今日、オレ5限なんだけど」
『待ってていいなら、クロの所で待ってるよ』
すぐにそう返ってくる。
「じゃあ、待ってて」
そのメッセージを見た優月が。
さっきよりも、嬉しそうに、ふわ、と微笑んだ。
『うん、待ってるね』
笑顔と、素直な言葉に。
何だか、よく分からない感情に、困って、返事が出来ないでいると。
優月がまた、ニコニコしながらスマホをいじってる。
少しして、スマホが震えた。スタンプか何かかなと、思って見ると。
『玲央、大好きだよ』という言葉。
「――――……」
……はー。
何だかものすごく脱力。
窓の下の壁に背を付けて、つい、しゃがんでしまった。
「玲央、何やってんの?」
廊下を通っていく奴らに、笑いながら言われる。
「脱力中――――……」
「何それ」
笑いながら通り過ぎていく。
その時、チャイムが鳴った。
――――……あ。
立ち上がって下を見ると。
優月がめちゃくちゃダッシュで走っていく所だった。
クロが、優月の後ろ姿を、見送っているように見える。
クロも、優月が大好きなんだろうな…なんて思いながら、優月の方を見ると。
あ、もう居ない。
意外と、足速いよなあいつ。 オレも逃げられたっけ……。
ぷ。と笑ってしまう。
そろそろ教授が来るだろうし、もう優月も居なくなったし、仕方なく教室へと向かいながらスマホを入力する。
「オレも、お前が好き」
入力画面に、入れた文字。送信を躊躇う。
――――……柄じゃない。
全然、こんなの、オレの柄じゃない。
言うだけならまだしも、文字として残るのは、何だか、ものすごく、躊躇う。
でも。
――――……あんな嬉しそうな顔で、きっと読んでくれるんだろうと、思ったら。
少しの覚悟と共に、ぽん、と送信ボタンを押した。
「――――……」
……やっぱり、柄じゃない。
ヤバい。
送信を取り消そうかと思った瞬間。
ぱ、と既読がついいしまった。
どき、と胸が弾む。
すぐに、入ってきた返事は、「玲央、大大好き」だった。
「――――……」
何だか、本当に、優月の事が愛おしいと。
心から思ってしまうけれど。
それはオレのせいじゃない。
絶対こんなの、誰からしたって、可愛いに決まってる。
◇ ◇ ◇ ◇
後書きです。
ふふ〜書いててすごく楽しい…(´∀`)
こういう感じが、好きです。
相手が見てないとこで、相手を好きでたまんない、て感じ。
今回は玲央には見えちゃってますが笑
皆さまはこういうのお好きでしょうか?
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