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第134話◇
【side*優月】
朝、連絡がきて、お昼は智也と美咲とご飯を食べる事になった。
ほんとはお昼、クロの所に行こうと思っていたけど行けないな、と思っていたら、1限が少し早く終わった。
ダッシュでコンビニに行って、クロにエサを上げていると。
玲央から、連絡が来た。
今日も、玲央の事、待ってて良いって。
今日も一緒に、居てくれるんだ。でも、毎日だけど、いいのかな…と一瞬思ったけど、玲央から言ってくれてるのだから良いんだろうと思って。
大好きて、入れたら。
オレも好き、て、返してくれた。
――――……玲央って。
好きとか、返してくれる人なんだ。
なんか嬉しすぎる。
滑り込みセーフで入った2限の教室で、いつものメンバーの近くに座ると。
「優月、なんかすげーご機嫌じゃねえ?」
「なんか一目でわかる位ってどーなの」
周りの友達たちに、笑われる。
え。そんなに?
オレそんなに、ご機嫌??
「なんかお前今週おかしくない?」
「……おかしくは、ないけど」
ちょっと気分を引き締めないと。と思いながら、そう返事をしていると。
「あ、なあなあ、優月さあ」
1人が、そういえば、という顔で、オレを見つめてくる。
「? 何?」
「お前今朝さ、あいつと居ただろ」
「……?」
「あれあれ。去年の学祭のイケメン投票一位の…」
「ああ、バンドやってる奴?」
「名前…… そーだ、神月玲央」
ドキ。
名前、出てくるだけで、ドキドキしてしまう。
「うん。居たけど……?」
「あいつと、仲いいの?」
「……うん、まあ。最近知り合って」
頷いてると、周りの皆が、へー、と不思議そう。
「なんか、接点無さそうだけど」
「あいつどんなやつ?」
「え。……んー。優しい、かな」
そう言ったら、さらに不思議そうな顔をされる。
「えー?優しいとか、かけ離れてそうだけど」
「すげえ派手なイケメンで、バンドやってる奴、優しいとかあんの?」
「……それ、偏見じゃない? すっごく、優しいよ?」
言い切るけれど、さらに皆の不思議そうな顔。
「優月、なんか、ころっと騙されてそうで心配」
「大丈夫か?」
「ていうか、皆、玲央の事、全然知らないで言ってるじゃん……」
むー、と思わずちょっと睨むと、皆が苦笑い。
その中で、一人だけ。
「オレ、あいつ、幼稚園から知ってるけど」
吉原は、玲央と一緒の、幼稚園からのエスカレーター組なんだ。
そう思いながら、視線を向けると、皆も、吉原を見る。
「どんな奴?」
「うーん……別に悪い奴ではない、かなあ」
と吉原は、言いながらも。
「でも、チャラいし。すげーモテるけど、高校位からは相手構わずだし。超冷めてるし。あいつの周りって派手な奴ばっかりでさ。 なんで優月が仲良いのか、正直不思議だけど」
そんな言葉に、周りの皆は、なるほどー、と言って頷いてる。
「……やっぱそういう奴じゃん」
「優月、友達は選べよ?」
「でも……」
ほんとに優しくて、一緒にいると楽しいし。全然冷めてなんかないし。バンドだって派手なだけじゃなくて、一生懸命練習してたし。オレは、玲央の事、大好きだし。
オレが口を開こうとした瞬間。
教授が遅れて申し訳ない、とか言いながら、入ってきてしまった。
もー。このタイミングで来なくてもー!
どうせなら、もう少し遅れてほしかった。
仕方なく、出そうとした言葉を飲み込む。
授業、受けながら、カチカチ、とシャーペンの芯をだして、そのまま固まる。
……何か悔しい。
玲央。優しいのに。
派手でイケメンなのは、玲央のせいじゃないじゃん。……せいじゃないとかいう言い方もおかしいけど。
チャラいって、それも見た目からだろうし。
周りが派手って。 そりゃ玲央みたいな感じの人の周りに、派手そうな人が集まるのは、何か分かる気もするし。
……今皆が言ってたの、ほとんど見た目じゃん。
相手構わずは、まあ……否定できないというか、玲央が言ってるから、そうなんだろうけどさ。
……そうだ。玲央が何で恋人作らないのか聞きなって、蒼くんにも言われてたんだっけ。……何でなんだろう。いつか聞けたら聞いてみよ……。
さっきまで、玲央の「オレも好き」にウキウキしてたのに。
それとは全然別の気分で、ふ、とため息をついてしまう。
……玲央が、大好き。
オレにとっての玲央は、ほんとに優しくて、あったかいのに。
カッコよくて。
……何か、たまに、可愛い時も、ある位で。
別に、皆がそう思ってなくても、関係ないけど。
でも……ちょっと……ていうか、かなり、悔しいな……。
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