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第137話◇
【side*玲央】
……は。可愛いな。ほんと。
2限が終わって、食堂に向かっていた時、優月に会った。
何だか微妙な顔をしていたから、どうした?と聞いたけど、すぐに笑顔になった。
可愛くて、頭を撫でてると、微妙な視線。
優月の周りに何人も居て、何だか立ち止まってこちらを見守っている感じ。
優月を待ってるのかと思って、後で会うし、もう良いか、と優月から離れた。
視線を外すその直前まで、嬉しそうに笑ってる優月が目に映っていて。
離れた今も、その顔を見てる時の感覚が、心に残ってる。
この、可愛いって気持ちは。
――――……何なんだろう。
オレ、先週優月に会ってから、可愛いって、どんだけ思ったかな……?
――――……何回、あいつにも、言ったか。
――――……でも、あれか。
……優月を可愛がってるのは……オレだけじゃない、な。
村澤もそんな気がしたし。もう一人の幼馴染の女の子とやらもきっとそうだろうし。昨日優月にかかってきた電話の相手。「そうくん」とか優月が呼んでる奴もきっとそうなんだろう。からかわれるとか言ってたけど。可愛がられてるんだろうなと、予想がつく。
勇紀もだな。なんか昨日の感じだと、甲斐や颯也すらも、そうなりそうな気がする。
……無邪気だからか?
――――……ほんと、邪気が無い気がする。
素直。
心もだし。
体も、素直。これは今のとこ、オレしか知らない。
――――……なんか、オレしか知らないってのが、また、余計に可愛い。
て、対してオレはどーなんだと思わなくもない。
――――…気持ちいいことは好きだし。
相手の事もそうした方が、自分も気持ちよくなれるから、相手を気持ちよくさせるのも好きだった。
今まであんまりそんな事、改めて考えた事は無かったけれど、考えてみるとそうな気がする。でもそう考えてしまうと、自分が良くなるために、相手をそうしてた、みたいな気になってくる。んー。……相手にそんなの悟られてはいないと思うが。普通にしてただけだし。
でもまあ、改めて考えてみると、まあまあ……最低な気がする。
優月の事は、めちゃくちゃ、ただ、可愛がってやりたいのと。
とろん、とした、気持ちいいって顔が、見たいのと。
最後までしないセックスなんて、初めて。で、3日も続けて過ごすとか。
――――……ありえないなと思う一方で、どうしても、めちゃくちゃ気持ち良そうにしてる優月を、見たくて、触れたくてしているから、それでも、良い気がしてくる。
金曜から、他の誰とも、してない。
土日も、優月の事が頭にあって、結局誰とも会わずに、何だかよく分からない時を過ごして。
そのまま優月としかしてない。
――――……この気持ちは、この先もずっと、続くんだろうか。
今は、出会ってすぐで、物珍しくて、可愛いと思ってるのか。
なんて、思ってしまうのは。
過去に、こんな気持ちになった記憶が、思い出せないから。
もしかしたら――――……大昔、純粋に誰かを好きだった時は、その子を可愛いと思っていたのかもしれないけど ……既に記憶には無く。
覚えている限りは、もう、楽な方に流れてたというか。
色んな奴と自由に遊ぶのも、それはそれで別に悪くはなかったし。
慣れてる奴らと気が向いた時に快楽だけ追うのも、別に悪いことだとも思っていなかったし。
別に今だって、他の奴とできない訳じゃない。
気持ちいい感覚を追うのは、別に、今まで通り出来ると思う。
ただ。
――――……。
……優月に触れてる時の。
可愛い、愛しいと思いながら、してる自分が。
めちゃくちゃ熱くて。
ゾクッとする、切羽詰まったみたいな感覚が、強烈で。
なんか余計、気持ちいい気がしてて。
――――……最後までしてもいないのに。
触れてる間、あんなにずっと、可愛いと思ってるのもヤバいし。
普通に話してる時に、オレを見て嬉しそうなのも。
――――……スマホでオレの連絡を受けてる時の、笑顔も。
何だかもう、ほんとに、可愛いと思ってて。
抱き締めたくなってしまう。
なんなんだろう、この感情は。
マジで意味が分からない。
好き。
優月に言って良いよと言ってから、何度か言われて。
好きと言われると、こっちまで、ますます、好きになる気がする。
大好き、なんて、一生懸命言われると。
その言葉が、どんだけ破壊力があるのか、何だか、
初めて、身をもって、知ったような気がして。
あー……。
なんかな。
――――……何なんだろうな、これ。
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