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第138話◇

「玲央」  食堂でもう座ってた甲斐に呼びかけられて、その向かいに鞄を置いた。 「お前今日も1限の時居たって?」  愉快そうに笑って、甲斐が見上げてくる。 「何で知ってんだ?」 「朝から玲央を見ちゃったって、同じ授業の女の子たちが喜んでたから」 「優月が1限だったから一緒に来ただけ」 「――――……はー……」  一瞬びっくりした顔をして、甲斐が、またおかしそうに笑った。 「べた惚れっぽいな、お前」 「――――……」  ……べた惚れ?  そんな言葉が、オレに使われる日が来るとは思わなかった。  一瞬否定しようとして――――……何となく口を噤んだ。 「ずっと優月と一緒に居んの?」 「……ずっとって――――……まだ今日で4日目だけど」 「……2日だって、同じ奴と会わなかったじゃん、お前」  甲斐が呆れたように言ってきて。 「しかも夜の間ずっと一緒に居るって聞いた事ないんだけど。夜の間遊んでて、深夜とか明け方からセフレんち、とかは聞いた事あるけど。お前、マンションに泊まらせる事もなかったじゃん。寝てる間に何かされても嫌とかって」 「――――……それは色々あったからだろ」 「それそれ。色々あったから、お前、信じてなかったんじゃん、そういう相手をさ」 「――――……」  まあ、信じてなかったというか。  疑いたくもなかったし、信じてストーカーぽくなられるのももう見たくないし。だから最初から、可能性すら無くしただけで。 「……優月は、信じられるのか?」 「――――……」  信じられる?  ――――……まあ。  信じるも何も、ずっとオレの側に居させてるから、  変な事する機会もねえし。  ……まあ、そんだけずっと、そばに居させてるって事か。  寝る時も抱き締めてしまってるから、オレから離れられるわけがないし。  でも……優月なら、1人で家に置いといても、心配しないでいられるな。  変な事する奴じゃない気がする。 「――――……信じてるかもな」  何となく口から洩れた言葉に、甲斐は、何度か瞬きをして、苦笑い。 「なんかすげー、驚くんですけど。 何? 怖いなお前」 「……話せば分かると思うけど。疑う必要ねーと思う」 「まあ、いい奴そうだけど……でも、お前の付き合ってきた奴だって、別にそんなひどい奴らじゃないじゃん。彼女にしてた頃は確かに束縛とかもひどかったし、めんどくなってたのも分かるけどさ。 結構長いセフレの子達は、イイ子が多くない?」 「――――……」 「お前、外も中もどっちも良くないと、セフレにしねえんだと思ってたし」 「――――……」  まあ確かに。  ……そう言われてみると、そうな気もしてくる。  そこそこ中も外も気に入ってないと、そんな事してない。  ――――……じゃあなんで、そん中で優月だけ特別……? 「そんなに優月って、 良いの?」 「――――……あ?」 「だから。 優月って、そんなに良いの?」 「――――……つか、お前、それ以上想像したら、ぶん殴る」 「はーーーー??? 何それ、オレら今までこんな会話、死ぬほどしてたじゃんか」 「死ぬほどはしてねえだろ」 「つかお前、今まで?、具合いいのとかオレが聞いたら、なんなら、試してみればくらいの感じだったじゃんか!」 「……は?  優月を試したら、抹殺するからな」 「はあああああ??」  甲斐がうるさい。  そこに、嫌そうな顔の颯也と、面白そうな顔の勇紀が一緒に現れた。

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