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第144話◇

 優月の声が、どんどん上擦る。  ――――……可愛いな……。 「っ……だめ、れお……や……っ……」 「いいよ、出して」 「……っここじゃ……や……」  ……別にいいのに。  ――――……思った瞬間。  ん、良い事思いついた。  キスを外して、体を下ろして膝をつく。 「……?……あ、玲央、待って、それ、や……っ……!」    焦って慌てふためく優月の手をどけて、そこを口に含んだ。 「……や、だ……っ……ぃや……」  ……あ、泣いてるな――――……。   どう聞いても涙を含んだ声。……逆に興奮する。  オレ――――……ほんと、これ、抵抗ねえな。……ヤバい。 「……ッン……っ……っ……!」  優月は、足から力が抜けそうになりながら。  呆気なく、イッた。  出し切ったそれを、最後にぺろ、と舐めて。口を離したら。  優月が、ずるずる、と背中を付いたまま下に、ぺたん、と座り込んだ。 「い、やだって、言った、のに……っ!」  珍しく、本気で嫌だったらしく。  涙目で、ものすごく、睨んできてる。  でも。真っ赤だし。  ……涙、うるうるしてるし。  しゃくりあげて震えてるし。  睨まれても。  ――――……可愛いしか、ねえな。 「玲央のバカ……っ……もう、それ、絶対、のっ……っ……飲まないでよっ」  ……飲まないで、という言葉すら、発するのに躊躇うんだろうか。  ――――……ほんと、可愛い。 「なに、笑ってんの、もう、玲央……っ……玲央のバカ……っ」  もう、バカしか言えないのかな。  くす、と笑ってしまう。  手首を掴んで、引き寄せて、抱き締める。 「……怒ってんの?」 「怒ってるよ……っっ……オレ、シャワーも浴びて、ないし……っ」 「――――……オレがいいと思ったんだから、良くねえ?」 「やだよっっ!……玲央が……汚れちゃうじゃん……っ」  ぶんぶん首を振ってから、額を肩にごしごしこすりつけてくる。 「……玲央のバカ……っっ」 「……うん。でも別に汚くねえし。汚れねえよ」  くす、と笑って。  そのまま、優月の首筋にキスする。 「っ……やだ……っ」 「――――……やだ、言うなよ……」 「……っだって……っ」  珍しい。まだ怒ってる。 涙が滲んで溢れてくる。 「……オレさ、びっくりする位、なめんの抵抗ない訳」 「――――……っオレが、抵抗、めっちゃあんの……っ……」 「……分かったって」 「……も、しない?」 「……いや。それはちょっと――――……約束できないかな」 「……っっ」  ――――……それきり黙って、真っ赤な優月。 「じゃお詫びにさ」 「……」  じっと見つめてくる。 「昨日言ってた、バスタブに優月を浮かべて、シャンプー。してやるよ」 「――――……」  ふ、と顔が嬉しそうになって。  でもまだ、うん、とは、言わない。 「すげえ気持ちよかったら、そのまま寝てもいいよ」 「――――……」 「……してほしい?」  頬に触れて、そう聞くと。  ちょっぴり葛藤した後。  うん、と優月が頷く。 「じゃおいで」  腕を引いて立たせ、そのまま、ひょい、と抱えた。  わ、と声が出て。咄嗟に優月が、オレの首に腕を巻き付かせた。 「――――……」  もう、怒ってないみたいで。  ぎゅ、と抱き付いた優月は、すり、と、静かに顔を摺り寄せてくる。  ……なんかお前……。 心配になる位、ちょろい。  ……可愛いけど。  ずっと側に居て、ずっと守ってやりたいかも……とか。  柄にもない想いが、頭の隅っこに浮かんで。  バスルームについて下ろした優月の頬に、ちゅ、とキスした。  

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