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第150話◇
【side*優月】
信じられない。
オレってば。頭マッサージされながら……。
――――……ほんとに寝ちゃった。
起きたら、抱っこされてる、みたいな。
……失態。
……だけど、何でか玲央はずっと優しくて。
――――……極めつけが。
そばに居ろよ、だって。
……嬉しくて、頷いちゃったけど。
……んー――――……どういう意味???
玲央の側に居ろよって。
……ほんとに居ていいなら。
……オレ、ほんとに玲央の側に、居るけど。
――――……でも、そもそも。
オレと玲央って。
住んでる世界が違いすぎて。
たまたま同じ大学に居るというだけで。
うちの親も、わりとお金には余裕があるのだと思うのだけど。住むマンションと別のマンションとか。しかもこんな高そうな。
うーん……桁違いな気がする。美咲情報だと、超大金持ちって言ってたし。
ていうか。
バンドのボーカルしてて、超人気があって、恋人は居ないけど、相手はいくらでもいて。そこだけだって。
不思議な位、オレとの接点とか、共通点が見られない。
なんかもうここまでくると、かぶる部分が無さ過ぎて、笑ってしまうくらい。
そばにいろ。
――――……いつまで?
……玲央が飽きるまで?
少しでもいいと思って。……最初、玲央と居たいと思ったけど。
今、居たいから。
少しの間でも良いから。
……ていうか、一度だけでも、良いって、思って。
玲央についてきたから。
そばに居ろよなんて言われると。
すごく、嬉しいんだけど。 どう側に居れば良いのか分からなくて。
……ちょっと複雑な気分。
窓から、綺麗な夜景を見ながら、ぼー、と考えていると。
「優月、水」
「……ありがと」
この渡される水も。
――――……売ってるの見た事のない、ラベル。
……んー。全然分からないけど。……んー。高そう。
……こういう所から、色々、違うんだよね……。
苦笑いが浮かびそうになりながら、ソファに腰かけると。
玲央はオレの隣に座って、水を口にした。
「……どーした?」
「――――……ううん。お水、美味しい」
「ん」
何となく思い悩んでる事は、何て言ったら良いか分からなくて。
仕方なく、今素直に思ってる事だけ伝えたら。
よしよし、と撫でてくれる。
「――――……お前さ、今週ずっとオレと居るだろ?」
「……うん?」
「いつもは、何して過ごしてンの?先週までとか」
……それ、オレの事、知りたいって思ってくれるのかな……?
そんな質問に、何だか少し嬉しくなってしまう。
「……学校からまっすぐ帰る時もあるし。ご飯食べに行く事もあるし。カラオケ行ったり…… 絵を描きに行ったり。あ、火曜じゃなくても行っていいからさ。好きな時に行くし。…… あと、実家に帰ったり……かなあ?」
「バイトとかは?」
「父さんがね、勉強に専念していいよって言ってくれてるから……でも、全然働かないのもなんかなーと思って、短期で色んな事してるよ? やってみたいこと、やってる感じ」
「……たとえば?」
「ほんと色々。 ――――……試験監督とか。催事の店員とか。去年はクリスマスケーキを作る工場に行った。面白かったよ。絵の先生の補助とかも、先生から回ってきたり。蒼くんの個展の受付の手伝いしたり……?」
「――――……ふうん……」
ぐい、と引かれて、背を、玲央の体に完全に預ける形になる。
「……玲央?」
後ろ振り仰ごうとしたけれど、ちゅ、と頭にキスされて。
そのまま、背中を預けて、落ち着いた。
「……なんか」
「ん?」
「……すごく、甘えてる、気がする」
「このカッコ?」
クスっと笑う玲央に、なんとなく、頭でスリスリしてみる。
「……このカッコもそうだけど…… なんか、全部」
「……全部って?」
「んー……」
ずーと、スリスリしてたら、笑った玲央に止められて、ちゅ、とこめかみにキスされる。
「……玲央が、優しくて…… なんか全部甘えてる気がする」
「そうか?」
「……そうだよ」
ほんと。
あんまり優しくされて。
そばに居ろとか言われて。
勘違いしちゃったら、どうしてくれるんだろ。
……って。
自分が思ってる内は、とりあえずは、まあ……大丈夫……かな。
なんて、思ってたら。
腕が脇の下から入ってきて、胸の前で、ぎゅーと抱き締められた。
「別にいーじゃん。――――……甘えてろよ」
「――――……」
なんかもう、胸が。
バクバク壊れそう、とかじゃなくて。
とくとく、みたいな。 少し早い、鼓動。
なんかこれは。
……ほんとヤバい。
――――…… 好きで。
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