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第162話◇

 1限の教室の校舎についた所で、ぽんぽん、と肩を叩かれた。 「優月、おはよ」 「あ、おはよー、勇紀」  ほんと、勇紀は縁があるのか、よく会う。  授業はいっこも一緒じゃないのに。  貧血の勇紀を助けてから、気づけばあちこちでちょくちょく会うもんだから、それで余計仲良くなったんだけど。  同じ学部でも、全然会わない人も居るのに、不思議。 「な、もしかして、今日も、玲央と一緒に登校してきたりした?」  面白そうに、聞いてくる。 「あ、……うん」 「うわー……――――………何で台風来ないかな。おかしいな」 「何それ」 「だって、雨が降る位の珍しさじゃないからね。台風が来ても、オレは全然驚かないよ」 「勇紀……」  ぷ、と笑って、勇紀を見つめると。だってさー、と勇紀が笑う。 「あのな、優月は知らなくて当然なんだけどさ……玲央って、朝、めっちゃ弱いの。去年は必修も多くてどうしようもなくて1限取ってたけど、今年は、取ってない訳よ。まあ朝弱いっーか、夜遅すぎっていうのが正しいんだけど。 まあ、めっちゃ不健康な生活、送ってた訳」  そんな事を言いながら、ポンポン、と肩を組んでくる。 「そんな奴が、毎日優月と会って、でもって、優月の為に朝から学校……ぷぷ。面白すぎ!」 「勇紀……」  ほんとに楽しそうで、笑ってしまう。  肩から手を外しながら、勇紀が、あ、とオレの顔を見た。 「そういえば、土曜のライブの話、玲央とした?」 「あ。うん。ただ、オレ、20時まで用があって……」 「そっか。じゃ来れないの?」 「んー。用事が早く終われば……それか、打ち上げからでも良いって玲央は言ってたけど」 「あー、打ち上げから? うん、全然良いと思う。けど……」 「けど……??」 「打上げってさー、結構古いファンとか、知り合いとかだからさ」 「うん」 「玲央の物凄いファンの子達が多くて――――……まあ。そん中には、玲央と関係ある子達も居るしさ」 「あ、そう、なんだ」 「んー。結構怖いんだよ? 玲央の取り合いが」 「あ、うん……」  ……まあ。何となく分かる気がするような。 「ただ、玲央はそれを面倒がってるから、まあ表立って、玲央の前では問題にはならないんだけど……」 「けど……?」 「そこに優月が居て、玲央がいつもみたいに優月を可愛がっちゃうとさー。ちょっと心配かも」 「――――……」  いつもみたいに可愛がる。  ……どれの事を、勇紀は言ってるんだろ。 「……玲央って、オレの事、可愛がってる?」 「え? つか、可愛がられてる認識ない?」 「すごく優しいけど。でも、玲央は他の人にも優しいんじゃないかなって思うし……」 「あー。玲央はね、基本は優しいんだけど、セフレには、敢えて冷たくしてるから、可愛がるとかほぼ無いよ」 「――――……」 「…気持ちいい事好きだけど、恋人じゃなくてセフレでいいや的な感じだったし。 誰かを特別扱いしてめっちゃ可愛がるとかは、今まで、敢えてしてないんだよ」 「――――……」 「あんな風に、超可愛がってキスしてる玲央なんか、初めて見たし」  ぷぷぷぷ。  勇紀はまたまた楽しそうに笑いながら、そんな風に言う。

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