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第165話◇

 2限の授業が少し早く終わったので、そのまま待ち合わせ場所に向かう。  向かってる途中で、勇紀から電話がかかってきた。 『玲央オハヨー。今から優月に会うんでしょ?』 「……今日優月に会ったのか?」 『うん、朝。 なあ気になったんだけど。優月、明日は用があるから打ち上げからかもとか言ってたけど……』 「――――……」 『優月を打ち上げに来させるのは良いけど……あんま近づくなよ、玲央は』 「――――……」 『近付きたくなっちゃうなら、優月来させない方が…… あ、それか、オレがずっと居てあげてもいいけど――――……あーでもオレ、彼女も来るからな……って、玲央聞いてる?』 「聞いてるっつの――――……つか、お前は何で、オレがさっき気づいた事を、先回りしてあれこれ言ってくんだよ」  ――――……本当、聡すぎて、たまに……ウザイ。 『あ、て事は、一応気づいた訳ね』  クスクス笑いながら勇紀がそう言う。 『てかオレその危険性、さっき優月に言っちゃった』 「は?」 『だって、あんまり無邪気に打ち上げにーとか言うからさー。危険じゃん!』 「…ああ、分かった。あ。優月来た。じゃあ後でな」 『はーい』  少し離れた所に、こちらに向かって急いでる優月を見つけて、電話を切った。  ……オレがどう話そうか考えてた事。  もう優月に伝わってる訳か。くそ。…バカ勇紀。  ――――……とか言いつつ、優月はそんな話を聞いても、分かってる事だと、言いそうだけど。……セフレ居ても良いっていう位だもんな……。  それでも何となく――――…伝え方に迷ってたのに。  オレに気付くと、嬉しそうに笑って走り出した。  ――――…走んなくて良いって、言ったのに。  見てるだけで……和む。 「玲央早い。オレ、授業ぴったりで終わって最速で来たのに」 「少し早く終わったんだ」 「あ、そうなんだ。ごめんね、待たせて」 「そんな待ってねえよ。ついたとこだし」 「ん。ありがと」  そう言ってから、ふと、周りを見回す優月。 「クロは居ない?」 「ああ。居ない気がする」  まわりを一通り探して、少し残念そうな顔をしてる。 「帰りここ寄るか?」  そう言うと、ぱ、と嬉しそうに笑う。   「いい?」 「良いよ」  クスクス笑ってしまう。……表情が可愛くて。 「おやつ買いにコンビニも寄っていい?」 「ん」 「ありがと、玲央」 「ん。行くか?」 「うん」  二人で並んで、歩き始める。    ここ数日で、何度こうして二人で歩いただろうと、少し下にある優月の頭に何となく目を向ける。  ――――……しかも、朝も昼も夜も。みたいな。  全部、オレが一緒に居たいって言ってる気がする。  ――――……そう言えば、優月からは、誘われないな。  誘われる前に、いつも先に誘うから……?  なんて思った瞬間。  優月が、ぱっとオレを見上げて、目が合うと、笑顔になった。 「玲央、ピーチティー飲んだ?」 「ん。ああ」 「どうだった?」 「んー…… 一言で言うなら……」 「うんうん」  美味しかったでしょ? と求めてる、わくわくした顔に、苦笑い。 「優月っぽかった」 「え???」 「すげえ甘くて。――――……なんか、キスしたくなった」 「――――……っ」  きょとん、とした後。一気に、かああああっと、真っ赤になる優月。 「あーあ……」  ぷ、と笑って、右の頬をぶに、とつまむ。 「……オレ、もうお前にすっげーキスしてると思うんだけど……」 「――――……っっ」 「……こんなセリフなんかで、ほんと見事に真っ赤になるよな……」 「だって……っ……オレ、お茶の感想聞いたのに」 「――――……」 「……そんなこと言われるとか、不意打ち、ていうか……」  なんか、ちょっと頬が膨らんでくる。 「……怒ってンの?」  すり、とその頬を撫でて、クスクス笑いながら、聞くと。 「……怒ってはない……けどさ……」 「けど?」 「……でも、また笑うし……」  ぶつぶつ言いながら、俯いてく優月。  オレは、周囲に目を向け、近くに誰も居ないのをさっと確認してから。  背をかがめて、ちゅ、とキスした。 「――――……っ」 「甘くて、優月の顔思い出してたんだって」  ますます真っ赤。 「もう、玲央……こ、んな道のど真ん中で……っ」 「一応誰も居ないの確認したし」  ――――……ああ、ほんと、反応、可愛い。 「っ……でも、わかんないじゃん……」  言った瞬間、通りかかってる駐車場から、ドアが開く音がする。  びくう!と優月が大きく震えた。 「……っっ……ほら! 人居るじゃん……!」 「こっち見てないって」  もう――――……可笑しくてしょうがない。 「もうオレ先行くっ」 「ゆづ――――……」  ダッシュしてく優月の後ろ姿に、ぷっと笑みが零れる。  ああ――――……なんか。  すげえ楽しいんだけど。  ……なんでだ?  オレ、こんなやり取りが、楽しい奴だっけ。  

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