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第167話◇

 黙って考えてるのも性に合わない。聞いてみる事にした。 「――――……なあ、優月さ」 「うん」 「オレが、そういう奴らと居るの――――……嫌じゃねえの?」 「……玲央はさ、なんか……こういう話になるとさ、いつも何か……」 「……ん?」 「……オレに、それを嫌って、言ってほしいの……?」  逆に質問で返された。  サンドイッチを置いて、水を一口飲んで。  そのままコップを握ったまま。 「……だって玲央、重いのとか嫌いなんでしょ?」  そう言った。 「……オレとだってさ、興味がある、とかで始まったし……玲央がいつもそうなんだろうなっていうのは、分かってて……それでも、オレは玲央と居たいから、居て。玲央、オレと居る時、すごく優しいし、今すごく一緒に居てくれるし」 「――――……」 「……なんかオレ、それで充分、なんだけど……」  そんな風に言って、オレの言葉を完全に奪って。  優月は首を傾げた。 「――――……玲央がモテるのはすごい分かるし……玲央が今までそういう関係が楽で、そういう人達と居たのも、最初から知ってるし。別に、それは玲央の自由だし。玲央も相手の人達もそれで良いなら、そういう人達もいるんだろうなって、思うし。……それにオレ、自分も、その仲間入りさせてって言っちゃった位だし……何か玲央に断られちゃったけど……」 「――――……」  一生懸命話しているから区切るのもどうかと聞いていたけれど。  色々気になるし。断られちゃったという言い回しも気になるし。   「……オレと玲央って、会って1週間位しか経ってないのに。あとは、長く付き合ってる人達ばかりなのに、オレが玲央に、その人達と居るの嫌って言うのは――――…… 違くない……?」  言ってから、優月は、んー……と考えてる。 「――――……好きって、言っても良いよって、言ってくれて……それだけで嬉しいし」  少し小さな声で、そう言ってから。  だから、嫌なんて言わないよ。と、優月は笑う。  ――――……聞いてて、全然分からなかった部分が、やっと理解できた。  嫌じゃない訳じゃ、ない。  嫌だけど、言わない。……言えない、か。  会ったばかりだから。  優月以外の他の奴とはもっと付き合いが長いから。  もともとそうだって知ってて、一緒に居るから。  優月とも、興味程度で、軽く始まったから。  他にもそんな感じで始まる人がいっぱい居ると、思ってるから。  優月が特別なわけじゃないと、  優月自身が自分で思ってるから。  オレが、重いのが嫌いなのも知ってるから、  独占欲ぽいのも出さない。    嫌でも、嫌とは、言わない。  そう思ってるんだと、やっと、分かった気がした。  ある意味、最初から、諦めてる状態なんだと。  分かって、言葉に詰まる。  どこからどうやって話せばいいのか。   「――――……食べて、いい?」  なんて答えようか固まっていたら、優月はそう聞いてきた。  頷くと、優月は、食べ始める。 「――――……」  ……どう話すのが、いいんだ? 「玲央」 「――――……ん?」 「オレ、玲央と居るの好きだから。なんか……そんなに、考えてくれなくて、大丈夫だよ?」  そんな風に言われると。  余計に、なんだか、胸のあたりが、ざわつくし。  とっさに、今はお前の事しか、気になってないと、  ……抱き締めたくなるし。  この衝動の意味は。  ――――……この、胸がざわつく意味は。何なんだ。  これをどう伝えれば、優月のこの感じを――――……  どうにか、できるんだろう。

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