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第168話◇

 ――――……オレの中で。  優月は、かなり特別で。  こんなに誰かを、可愛いと思った事がなくて。  そばに居たいと思う気持ちも、自分でおかしいと思う位強くて。  まして一緒に暮らそうなんて口に出る時点で――――……。  ……ほんとに、意味不明なんだよな……。  今の、感情が全部。正直、よく分からない。  今、他のセフレに触れてる暇があるなら、優月に触りたいと思う。  いままで、誰と寝ても大して変わらないと思ってたのに。  自分の中での優月が大事なのは、何度も思い知らされている。  でも、優月が言うように、まだ1週間。  特別なのは分かってるけれど、それが、この先もずっと続くかが、分からない。……なにせ、全部、初めての感情ばかりで。  ずっと、好きだからとか。  ずっと居たいとか。  適当に言うのは、なんだか躊躇われる。  しかも――――……優月はきっと、ずっとなんて言っても、今は信じない。それを今、痛感した。  何だか――――…… 足場の悪い所にただ浮かべただけの板の上を、ふらふら歩いてるみたいな。  危うい関係なんだと感じて。  ――――…… なんだか、胸のあたりが、物凄くモヤモヤする。  いつ切れても良い、セフレが相手の時は、  かけらも感じた事のない想い。  優月と切れたくないと思ってるのは、もう、嫌というほど分かってる。 「優月…」 「ん?」 「あー……。……あとで言う」  何かを言おうとしたのだけれど。テーブルを挟んで、優月が遠く感じて、やめた。近くで、視線を外されない状態で、話したい。 「? ……うん。 玲央も食べたら? すごく、美味しいよ」  ふんわり、と笑う。  頷いて、オレも、さっさと食べ終えてしまう事にする。  ――――…… 優月はオレにとって、かなり特殊。  あまり周りには居ないタイプ。  なんとなく全体的に、ふわふわしている。  優月が笑うと和む。表情が素直で、可愛い。  ふわふわしてるけど、はっきり言うし、会話は続くし、楽しいと思う。  パッと見、派手じゃないし目立たないが。これはオレが今まで、派手な奴らとばかり居たせいな気がする。  普通にちゃんと見ると、肌綺麗で、瞳が大きくて、唇も可愛い。  触り心地、抱き心地が良すぎ。  エロイ事すると、すぐ真っ赤になるし、でも反応は素直だし。  涙目が可愛くてしょうがない。  優しくしてやってる時の優月が、あまりにふわふわ嬉しそうで可愛くて。なんだかもう。可愛がる事しか、出来ない気がしてくる。  セフレで適当にと思ってたオレに、「恋人」とか「一緒に住む」とか、信じられない単語が、頭にぱっと浮かんでくるのも、優月が初めて。  ……まあ、優月は――――…… 。  多分、皆に可愛がられて生きてきてる気がするって、何度か思った。  他の奴らにとっても、優月は可愛いのだと思うのだけど。  そう考えると、その中でも、オレが一番、甘やかしたい、とも、思ったりする。  優月が、セフレを嫌がらないのがムカつくのは。  ……嫉妬するほど、オレを好きではないのかと、思う、からかも。  ………端から諦めてるみたいだと分かって、  どこをどうすればいいのか悩むあたり。  オレまさか、嫉妬して欲しいのか。  ………………謎。    ………………ただ、可愛い?  ……というより。これは。    ………………………………惚れてる……とか?

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