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第177話◇
「そろそろヤバいよな。行くか」
「……うん」
そう言った玲央の手に引かれて、ベッドから下ろされる。
玄関に向かう途中で、玲央が苦笑しながら言った。
「結構前にチャイム鳴ったよな……」
「ここ、チャイム聞こえるの?」
「ん、聞こえる。……もしかして、さっきの、聞こえてねえの?」
「いつ?全然聞こえなかった」
玲央が、玄関に置いてた鞄を渡してくれながら、にや、と笑った。
「ちょうど最後イった時」
「――――……っっっ」
……もう。真っ赤になるしか、無いと、思う……。
エレベータに乗ると、玲央が、そっと頬に触れてきた。
「優月」
「うん?」
「今日、バンドの練習20時くらいまで。優月は?」
「明日の10時に新宿行く……家帰って、スーツ着てからだけど」
そこまで聞いて、玲央がふ、と笑んだ。
「そこまで空いてるって事?」
「うん」
「じゃあ5限終わったら――――……」
「クロのとこに居るね」
「分かった」
最後に一度キスされて、エレベーターを出た。
校舎の外で玲央と別れて、授業の校舎へ急ぐ。人、まばらなので、ほんとに結構遅刻かも。
……ていうか。チャイム……オレ、全然、聞こえてない。
どんだけ、必死かな……。ちょっと、恥ずかしいな。玲央は、ちゃんと聞こえてるし……。
急ぎながら。
このお昼時間に言われた、様々な事が、頭にぐるぐるしてて。
しかも。
……………………玲央と、しちゃった。
うわーうわーうわー……。
やばい。1人なのに。顔、熱い……。
かああああああ。 顔が真っ赤になっていく。
早足で歩きながら、俯くしか、ない。
わー、もう、無理……。
何も考えないで、授業いかなくちゃ。考えない考えない……。
教室にそっと入ると、もう教授は居たけど、まだ中はざわざわしてて。
滑り込んだ席の隣に座ってた友達に「どした遅刻。午前も居たのに」と言われて、ちょっとね、と苦笑い。「まだ出席取ってねーから良かったな」と、教えてくれた。
あ、良かった。
ほっとしながら、筆記具を出していると。
友達がじー、と見つめてくるので、ん?と首を傾げたら。
「なんか、優月、すげーぽわーんとしてね?」
「え。 そ……そう? そんなこと、ないけど……」
「さては……」
……なななななに? さては、なに??
ヤバいことしてたのって、まさか、顔でバレるの??
ドキドキしながら、かなり引きながら、言葉を待ってると。
友達は、クスクスと笑って。
「昼寝しちゃったんだろー、それで遅れそうになったんだろ」
「――――…………う、ん。そう……」
「まあ、分かる。食事の後って、眠くなるよなあ~」
強張ってた力がふ、と抜けて。
はー。良かった。
思いながら、うんうんそうだよね、と頷く。
ああ、良かった。昼寝にできて。
…………あんなこと。バレたら……。
………………って、あんなこと……って……。
――――………………うっわ。やばい。
なんか。
――――…………中、ぞく、ってする。
手で口を押えて、少し俯く。
教授が話し出したから、皆の視線は、前。
それだけが救い。
顔、熱いし。
――――……ぞくぞくするし。
気付くと、手が震え出しそうで。ぎゅ、と握り締める。
なんか、ヤバい。
…………こんなとこで、オレ――――……へんな気分になるとか……
わーん、もう、病気かな、これ…………。
……っ皆がまじめに勉強してるのに、なんか、ごめんなさい……。
もう。
玲央が、やらしすぎるから。毎日色んな事するから……。
オレ、性欲どこかに落としてきたのかなと、思ってたレベルの、草食の人種だと思ってたのに。
1週間前のオレとは、全然違う気がする。
……玲央のエッチ。
……………………玲央に文句を言いながら、玲央を思い浮かべてると。
「――――……」
うー……。
……なんかもう。
こんな風にでも、顔思い出すだけで、嬉しくなるって。
………………大好き。
どーしよ。ほんとに。
玲央が、ずっと、今みたいに、オレと居てくれたら。
……本気で、他に何もいらないかも。
居てくれようとしてるのは。
なんかさっき、すごく分かった。
そんな事をぼーっと考えてたら、すこし落ち着いて。
顔の熱も戻った。
とりあえず。あとで会えるまで、ちゃんと勉強しよ。
気合入れて、前を向いた。
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