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第179話◇

 数秒黙ってた稔が。 「すげえ、面白え事になってんな」  と呟いて、ものすごく楽しそうに、にじり寄ってくる。 「んだよ、近いっつの」 「なぁ、何それ、面白いんだけど玲央。勇紀達も皆知ってんの?」 「……あいつらも面白がってる」 「その話また聞かせて。つーか、そいつ話してみたい」 「何で」 「お前がそんなに可愛いっていうの、どんなんだよ。ていうか、オレ見たけど、超普通だったような……普通しか覚えてないぞ」 「あーまあ、見た目は普通……あー……けど、やっぱ可愛いかも」  そう言ったら、稔はぷっと笑い出した。 「マジでお前ヤバいな。オレそいつの事、ちゃんと見たい」 「つか見てもいいけど……惚れんなよ」 「……っ惚れるか!つーか、玲央がそこまで言ってる奴に惚れるとか、怖くて無理だから。絶対ぇねーから」 「惚れねぇならいーけど。あ、稔、この話他の奴に言うなよ。噂んなると、優月に迷惑かかるかもしんねーから」 「言うか。……つか、誰も信じねーわ。オレが頭おかしい扱いされるわ」  あ、そ。と笑い、やっと授業が始まったので、前を向く。 「なあ、ゆづきって言うのか?」  稔は、こそ、と小声で言ってくる。 「ん? ああ、そう。優しいに月って書いて、優月」 「ふーん。優月ねぇ…変わった名前だな?」 「そーか? 可愛くねえ? ……そーいや、名は体を表すっていうよなー」  何となく、ふと思った事を小声で呟くと。稔がマジマジと見つめてくる。 「んだよ?」 「……お前、マジでやば。 何、優しいの?月みたいなの?」 「ん、優しいな。 ほわほわしてる」 「……ほわほわって……なんかオレ、頭おかしくなりそうなんだけど。ちなみに、プラトニック?」 「な訳ねーだろ」 「…………っオレやっぱり、大声で全部ここで叫びたい」 「は?……絶対ぇダメ」 「あー勇紀達と話したい……なあ、お前、キャラ崩壊してるって、言われてない?」 「……颯也に、誰かわかんねえとは言われた」 「だよなー……オレも分かんなくなってきた」  隣でまだぶつぶつ言っているけれど、無視する事にした。  キャラ崩壊……。  何だそれ。  ただ、ひたすら可愛いと、ずっと思ってるだけだし。  つーか、優月を可愛いと思わない奴なんて居るのか?  ……と思う程に、可愛い。 「――――…………」  ……優月、体平気だろうか。  ゆっくり入れただけで、痛がっては無かったから、そこまで体に負担は無いとは思うが。……やっぱり心配だよな。  別れる時も、何だかぽわぽわした顔で歩いて行ったしな……。  初めてだったんだから、やっぱりその後は一緒に居てやりたかったな。  まだ授業終わるまで、長えな……。  優月は――――……マジメに勉強してンのかな。  

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