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第180話◇
【side*優月】
玲央の事考えないようにしながら、でもやっぱり考えて。
とにかく必死で前を向いて、5限まで、やっと終わった。
長かった……。
来週の掲示板を確認して、さ、玲央の所に行こうと思った時。
少し離れた所から、「優月ー」と呼ばれた。
「あ、智也。今日初めて会ったね」
「ん、元気か?」
「うん、元気。智也も元気?」
「元気元気」
「そか」
ふふ、と笑うと、智也がふと、見つめてくる。
「ん?」
「なんか楽しそうだから。良かった」
「心配かけてる?」
「してないよ。そんな風に笑ってるし、全然大丈夫だろ」
「ありがとね」
「今日も会うの?」
「うん。これからバンドの、練習があるって」
「見に行くの?」
「うん」
頷くと、智也はくす、と笑った。
「バンドメンバー公認なの?」
「ん?……公認、とかではないけど、こないだ、挨拶はしたよ」
「ふーん。そうなんだ」
と。その時。
「あの……ゆづき、くん……??」
後ろから、話しかけられた。
振り向くと、知らない人。
「……え?」
絶対知らない人だと思うのに、今、ゆづきくんて言った??
思わず首を傾げると。
智也が、「西野?」とその人を呼んだ。
あ、智也の知っるて人?
……でもゆづきくんって、オレを呼んだよね?
誰、この人……??
「……智也の友達?」
智也を見上げて、そう聞いたら、智也は「同じ学部の西野」と答えた。
ふむ。西野君。
智也と一緒て事は法学部。やっぱりオレは知らない人、だよね……?
「名前、優しい月って書く?」
「……うん、書く……????」
「西野、何言ってんの?」
智也が隣でおかしそうに笑ってる。
「さっき、玲央に、聞いたんだ」
西野君の口から急に出てきた玲央の名前に、ドキ、とする。
……名前だけなのに。
「何を聞いたの?」
智也がそう聞くと。
西野君は、智也を見て、一瞬止まった。
「……ごめん、さっきの会話聞こえてたんだけど……村澤は、知ってるんだよな?」
意味深な感じでそう言う西野君に、あー……と智也は少し黙って。
「ん、知ってる」
「玲央に聞いた?」
「いや、オレは優月と幼馴染だから。最初は優月に聞いた」
「そっか、じゃいっか」
智也と話し終わると、くる、とこっちを見て。
「さっき、優月って奴が可愛いって、玲央がめっちゃ言ってて」
「――――……えっ。……な……」
全く予期しない所から、物凄い攻撃を受けた感覚。
ボボボっと、見事に赤くなった、と思う。顔が、熱すぎる。
「優月真っ赤……」
はは、と、智也が笑う。
「だ、って……なに、それ……」
は、恥ずかしすぎるんだげと。
智也が、顔を冷ましてくれようとしているのか、手でパタパタ扇ぎだす。
……いやいや、絶対それじゃ無理。もう、顔、中から熱いもん。
「何それ、神月が西野に言ったの?」
智也が聞くと、西野君はうんうんと激しく頷いた。
「そう。可愛くてしょーがないみたいな……」
うわー、もうやめてー、何なんだ、それ。
「可愛いから今度よく見てみろって言われてさー」
「はは、そうなんだ」
「そしたら、村澤がゆづきーて呼んで、近づいてくるから。もうごめん、興味が抑えられなくなった」
「……っっ」
めちゃくちゃマジマジと見られる。
「オレ、玲央と結構仲いいし、幼稚園からの友達な訳。……つか、あの玲央がだよ? 可愛い可愛いって、それ以外言わないくらい語彙死んでるし……信じらんなくて――――……」
わーん、なんか、玲央に直接可愛いとか言われるより、
よっぽど、よっぽど、恥ずかしい。
だって、絶対、オレ、普通に見て可愛くないし。
そんなめっちゃくちゃハードル上げられてから、見られるの嫌だしー!
……うう。逃げたい……。
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