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第186話◇
「……玲央」
玲央の腕に、僅かに 触れる。
「ん?」
玲央が、少し笑んで、振り返る。
「オレさ」
「うん」
「――――……何で、玲央がオレと居てくれるのって……」
「――――……?」
「たまに……ていうか、良く思っちゃうんだけど……」
「……うん?」
少し不思議そうな顔で、玲央が、首を傾げながら、オレをじっと見つめてる。
「でも、なんか……」
「――――……」
なんか。
今、ただ思ったのは……。
――――……一緒に、居てくれて……。
「……オレと一緒に居てくれて、ありがと」
「――――……」
すごく驚いたみたいな顔の玲央を見て。
あれ?と固まる。
はっ、オレ、今変なこと言った?
言ったかも。
そもそも、何で居てくれるのって思っちゃうって、それ玲央に言わなくていいやつだったんじゃ……。
だらだら冷や汗が出そうな気持ちで、玲央から視線を外せずに見つめていると。玲央は、ははっと笑い出して。
「何それ、優月?」
言いながら、笑顔のまま、オレの手を取って、握った。
……握ったというか。手を、繋いだというか。
そのまま、歩き出す。
「……オレが一緒に居て、嬉しい?」
「え……うん。嬉しい」
ぐい、と引き寄せられて。玲央に、密着させられる。
あ、良かった。変に思ったとか、そういうんじゃないみたい。
なんか、すごく機嫌が良くなった気がするけど。
「オレも、お前が居ると、嬉しいから。一緒だな」
「――――……っ」
手を繋いだまま密着させられて、玲央が少し背を屈めて見つめてくるから。顔は、めちゃくちゃすぐ近くにある。
さっきから、誰とも、すれ違わない。
誰も、居ない。
玲央はそのまま動かず、じっと見つめてくるし。
もう。
……するしかない気がする。
「――――……」
ちゅ、と、玲央にキスした。
すると、玲央はクスクス笑って。
「……外でキスして良くなった?」
「……今、だけ」
「ふーん……」
途端に、色っぽく笑う玲央は。
手を繋いでいない方の手で頬に触れてきた。
「――――……優月……」
「――――……」
「ほんと、可愛い」
この人は……自分がどれだけカッコいいか、ほんとにちゃんと分かってから、そういう流し目とか。
それをしても、相手が平気か考えてから、して欲しいと言うか。
オレはそれをされると、全然平気じゃないから、
ほんとに、加減を――――……。
「――――……」
ちゅ、とキスされる。
すっごい優しく、触れるだけの。
「――――……っ」
しかも。
見つめられたままって。
だめだもう。
顔が一気に熱くなって。
しゃがみこんでしまう。
手は繋いだままだったので、手だけ玲央に持たれてるみたいな感じ。
「あ、またしゃがんだ」
そんな声がして。
「お前オレと一緒に居る時、何回しゃがむンだよ」
クスクス笑う声が、すごく近い。
俯いてた顔を少しだけ上げると、玲央も同じようにしゃがんでいて、目の前でオレをまっすぐ見つめてくる。
「……優月?」
手が、頬に触れて、また笑う。
「触れただけじゃん、今のキス」
「――――……っ」
「すげえキスした訳でもないのに、何でそんな赤いの?」
そんな風に言うけど。
本気で言ってるのかな……。
「玲央の瞳、見たままとか……キス、優しいし……恥ずかしいに、決まってるじゃん……」
「見たままが恥ずかしいの? それとも、優しくキスすんのが?」
「……どっちもだし」
「――――……ほんと。可愛いなお前」
くしゃくしゃ、と撫でられて、繋いだままの手を引かれて立ち上がらされる。
「飲み物買って、帰ろ」
「――――……うん」
「絶対遅いって文句言われるなー……」
苦笑いしつつも、ちょっと楽しそうで。
手、繋いだままの玲央。
繋いでる手、良いのかなと思うのだけれど。
……周り、人も居ないし。
――――……繋いでたいから。
……いいや。
きゅ、と玲央の手を軽く握ると。
玲央が、ふ、と笑んでオレに視線を流す。
何だかもう、その視線すらが大好きすぎて。
ふ、と笑みが零れてしまった。
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