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第188話◇

「え。あの……」 「うん?」  玲央は楽しそうに、面白そうに、オレをじっと見てる。 「……オレが行くから、歌ってくれるの??」 「そのつもりだったんだけど――――……どうせ曲も知らないから、歌っても分かんねえもんな? やめとくか?」  クッとまた笑い出して。視線を逸らして、そんな風に言う。 「え、やだ。歌って? 今日その歌教えて、覚えるから」 「どうすっかなー。お前遅れたら歌わねーし」 「絶対行くから」  そう言うと、玲央は、ぷ、と笑って、やっとまっすぐオレを見つめてくれた。 「ん、いーよ……つか、優月、少しは気づいたら? 何で勇紀達はすぐ分かったのに、お前、説明しても分かんねーの? 行った時に終わってたら悲しいって、何だよそれ」  くしゃ、と髪の毛を撫でられる。 「だってそんな大事な曲歌うのに、オレが関係あるって思わないし。……これは分からなくてしょうがないんじゃ……」 「――――……」 「……オレが行くから歌ってくれるとか、今だって、ほんとに?て思っちゃうよ?」  そう言って玲央を見上げると。 「あー……。分かった分かった」  玲央が大きなため息とともに、そう言った。 「……玲央?」 「オレがお前の事、どんだけかわいーと思ってるか、好きか、お前は結局全然分かってないんだなーて事が、分かった」 「――――……」 「オレが、お前の為にとか、浮かびもしないんだろ?」  苦笑いの玲央。  そんな事は、ない、と言おうと思ったんだけど――――……。  特にここ何日か、目の前に居る玲央が、好きって言ってくれるのも、可愛いって可愛がってくれてるのも、分かってるつもりなんだけど……。  ……そう言われてしまうと、今の話全然結びつかないのは、  そういう事なのかも、しれない。 「え……っと。……ごめん、なさい……」  思わず謝ると、玲央は、苦笑い。 「謝んなくていいけど。……まあいっか。今はそれでもしょうがねえか」 「――――……」 「……時間、一緒に過ごすしかねえよな?」 「――――……」  時間。一緒に、過ごす。  ――――……その言葉は、すごく嬉しいかも。 「ずっと一緒に居れば、少しずつでも信じるだろ? オレもそうしてけば今より確信してくだろうし。周りも認めるだろうし。……それでいーかな」  玲央が話す言葉は。  ……正直、何となくしか、意味が分からない。  そんなに簡単にずっと一緒になんて、言い放つ自信は、全然ないし。  でも、前を見てる言葉は、なんか、嬉しくなる。  まっすぐな瞳を見てると。  オレもいつか、何でだろうとか言わずに、玲央とずっと居たいと言えるように、なれたらいいなと思ったりして。  玲央の事が、やっぱりすごく好きだなあと思ってしまう。

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