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第189話◇

「何で、そんな瞳で見ンの?」 「え?……そんな瞳?」 「大好き、て感じ?」  玲央がクスクス笑って、からかうみたいにそう言う。 「……大好き、だし」  思うままにそう答えたら、玲央が、ぷ、と笑った。  なんか玲央。  ……迷ってる感じが、ない……のかなあ……?  好き、とか、一緒に居たい、とか言いながらも、「オレも良く分かんないけど」って、言ってたのに。なんか今は、分かんないと言いながら、色々言い切る感じ……? 「玲央、なんか――――……変わった?」 「ん?変わった?」 「玲央さ、オレとの事、自分でもよく分かんないんだけどってよく言ってたでしょ?」 「ああ……うん。今も思うけど。自分が考えてる事が不思議だし。でも、分かんねえって言ってても仕方ないしな……」  玲央を見上げてると、玲央は、ふ、と笑んだ。 「――――……オレ、お前に惚れてるってのは、もう分かったから」  まっすぐな、綺麗な瞳に、また、どきっと胸が弾む。  何て答えたらいいか、分からなくて。  ただ、玲央を見つめていると。  玲央は、少し笑って言った。 「……お前とオレって、多分色々違うし、ほんとならきっと関わらないで終わるタイプ同士、だよな?」 「――――……」  うん。  それは、なんだかすごく……分かる。  小さく、頷くと。 「でも、偶然、関わってさ。……こんな少ししか居ねえのに、すげえ好きだろ。お互いに」 「うん。オレは、好き」  ……とりあえず、オレは、すごくすごく、好き。  最初から。好きって。思っちゃった。 「何でお互いにっつってんのに、オレはって言うんだよ」  苦笑いの玲央。 「とにかく、優月とオレが違うとこばっか考えたり、よく分かんねえとかばっか伝えてたら、うまくいくもんも、いかなくなると思うからさ」 「――――……」 「言っただろ、惚れてるってこと覚えといてって」 「……うん」 「結構、もう、色々覚悟して、言ってるからな?」 「……うん」  ……なんか。  すごくすごく、嬉しい、かもしれない。 「とにかく、一緒に居ようぜ、優月」 「――――……」 「これから色々考えるから。一緒に居れるように」 「――――……」  何だか何も言葉にならなくて、ただ頷いた。   「それにな?」 「……うん?」  そう言って、玲央はじっとオレを見つめたまま、クスクス笑い出した。 「お前をさっき抱いたの、可愛すぎてヤバかったし。……正直、誰とヤっても同じだって、オレずっと思ってたんだけど」 「――――……っっっ」 「今までした中で一番、良かったんだよなー、さっきの」 「――――………っ」 「オレがお前の事好きだからだよな。マジですっげえ可愛くて。ほんと、迷うのも馬鹿らしくなったつーか……」  ただただ、玲央を見つめていると、玲央は、「お前、変な事言ってるなーと思ってるだろ」と、クスクス笑った。 「最初にさ、こういうのは感覚だって、言ったじゃん、オレ。 無理な奴とはどんなに会っても無理だって。覚えてる?」 「うん。言ってた」  その言葉で。  ――――……オレは、会ったばかりの玲央と一緒に居たい、触ってほしいって、思っちゃったんだし。 「……全部、感覚だよな。一緒に居たいのも。触りたいのも。お前見てると、すげえ可愛いって思うのも……あと、逆に、めちゃくちゃにして泣かせたいって、思っちまうのもだし――――……」  玲央が、ペットボトルを片手に抱えて、空いた手で、オレの頭をくしゃくしゃ撫でる。  ――――……撫でられながら、思ってしまった。  玲央は、オレのこと。好きで居てくれてるんだなって。  そして、オレも、それを聞いてるとますます確信。  玲央が言ってる事は、大体オレにも、あてはまる。  すごく、玲央のことが好きで、一緒に居たい。 「……よし。しょうがない戻るか」  玲央が、オレから手を離して、一歩前に進んだ。 「また後で話そ。そろそろ戻んねーとマジ怒られる。特に勇紀に。行こ」 「あ、うん」  クスクス笑いながら、2人で、並んで歩き始めた。

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