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第192話◇

 玲央は、ほんとカッコいいし、好かれるのが当たり前だと思うから、きっと、オレのこの気持ちは分からないと思う。  玲央が迷ってたのは自分の気持ちで……。 「何で優月とこんなに一緒に居たいんだろう」みたいな感じで。  玲央は自分の気持ちが、分からなかったみたいだった。  対して、オレが分からないのは、「何で玲央がオレなんか好きなのか」だもん。玲央の気持ちが謎なんだよね……。  だから。玲央は、「お前に惚れてるって分かった」とか言って、すっきり吹っ切った感じで話してたけど。  オレのこの、「なんでオレなの?」というのは、なかなか、オレの決意だけじゃ、吹っ切れそうにない。  さっきみたいに、玲央の相手のキレイな子とか見ちゃうと余計、あの子の方が絶対良いのにと、思ってしまう。他のセフレの、女の子達だって、絶対可愛いだろうし。  もう、それを思っちゃうのは、どうしようもない気がする。  ――――……する、んだけど。 「――――……」  歌いながら、玲央が、オレに視線を投げてきて。目が合うと、少し笑ってくれて。それに笑い返してると。ほんわか、嬉しくなる。  玲央は、今、毎日オレと居ようとしてくれて。  ずつと、可愛いとか、好きとか、言ってくれて。  これからの事を、一生懸命、話してくれる。  玲央と居るとドキドキして、嬉しくて、幸せ。  ――――……最初は、一度でも、て思ってた。  その後は、セフレにしてもらおう、なんて、思って。  そしたら断られてしまって。  よく分かんなくなった、けど。  玲央が会いたいって思ってくれる時だけで良いって思ってたし。  なんかそれに比べてしまうと、なんか。  今のオレの悩みって、すっごく、贅沢な気がしてきて。  一度どころか、毎日、一緒に居たいって言ってくれて。……何でだろ。  毎日可愛いって、言ってくれて。……どうしてだろ。  触りたいって、キスしたいって、いつも言ってくれて。……どーしてオレ?  惚れてるって覚えといてって言ってくれて。……ここはもはや意味が分からないけど。    すべてにツッコミを入れながらではあったけれど。  状況としては、もう、オレ、すごく、嬉しいというか。  ――――……居られる限り、目の前の玲央を見て、居られれば幸せなのかな、なんて、思えてくる。    ちょうどそこまで考えた時に、曲が終わって、そこで勇紀が、おわりー!と叫んだ。拍手で、「すごくカッコよかった」と言ったら、皆がふ、と笑顔になった。 「優月、今日こそ一緒にご飯食べに行こうよ!」  勇紀が遠くから叫んでくる。  玲央は、マイクを置いて、すぐオレの所に来て。 「嫌だったらいいぞ?」  なんて言ってくる。 「玲央、邪魔すんなよー!甲斐と颯也も、優月と話したいって!色々聞きたいし」  玲央の言葉がしっかり聞こえてる勇紀が、また叫んでる。最後の方は、すごく楽しそうに笑いながら。 「……玲央はどうしたいの?」  そう聞いてみると。 「んー……嫌だけど、あいつらと、行くか?」 「嫌だけどって……」  苦笑いを浮かべてしまっていると。  甲斐と颯也が帰り支度をし終えて、近づいてきた。 「行こ、優月」  颯也がそう言って、ふ、と笑う。 「優月が居るとこで、玲央から話聞きたいってのもあるし」  甲斐が、ニヤニヤして玲央を見ながら言った。  玲央はとっても嫌そうにしながらも。ふ、とオレを見つめてくる。 「……優月、行きたい?」 「え」  玲央に返事、任されてしまった。  でも、この嫌そうな顔は、オレの返事、分かってて言ってるはず。  ぷ、と笑ってしまいながら。 「行きたい」  言うと、玲央が「だよな……」とため息をついて。  他の3人が、よし行こう、と盛り上がった。  鞄をよいしょ、と持った所で。  玲央が、まだ少し嫌そうに。 「……お前、オレの変な話聞いても、平気?」 「え」 「嫌んなりそーなら連れてかない」 「え、なに、それ」  どういう事か分からなくて玲央を見上げてると、横で皆が、笑った。 「話聞いた位で嫌がられると思うよーな事、何かあんの? あんなら今すぐやめろよ」 「そーだよ、どーせ優月、玲央が遊んでたのは知ってるじゃん」 「つか、オレは、玲央がそれを気にするのが、本気で意味が分かんねえし」  颯也、勇紀、甲斐の順で、立て続けに言われて。 「ていうか、今オレ、お前らに話してねーけど」  玲央がため息をつきながら、睨んでる。  3人は、ぷ、と笑った。  オレは。  玲央がそんなこと、気にしてくれてるのが、なんか。  ……可愛いな、なんて思ってしまって。  しばらく何も言えず、固まっていた。

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