192 / 856
第192話◇
玲央は、ほんとカッコいいし、好かれるのが当たり前だと思うから、きっと、オレのこの気持ちは分からないと思う。
玲央が迷ってたのは自分の気持ちで……。
「何で優月とこんなに一緒に居たいんだろう」みたいな感じで。
玲央は自分の気持ちが、分からなかったみたいだった。
対して、オレが分からないのは、「何で玲央がオレなんか好きなのか」だもん。玲央の気持ちが謎なんだよね……。
だから。玲央は、「お前に惚れてるって分かった」とか言って、すっきり吹っ切った感じで話してたけど。
オレのこの、「なんでオレなの?」というのは、なかなか、オレの決意だけじゃ、吹っ切れそうにない。
さっきみたいに、玲央の相手のキレイな子とか見ちゃうと余計、あの子の方が絶対良いのにと、思ってしまう。他のセフレの、女の子達だって、絶対可愛いだろうし。
もう、それを思っちゃうのは、どうしようもない気がする。
――――……する、んだけど。
「――――……」
歌いながら、玲央が、オレに視線を投げてきて。目が合うと、少し笑ってくれて。それに笑い返してると。ほんわか、嬉しくなる。
玲央は、今、毎日オレと居ようとしてくれて。
ずつと、可愛いとか、好きとか、言ってくれて。
これからの事を、一生懸命、話してくれる。
玲央と居るとドキドキして、嬉しくて、幸せ。
――――……最初は、一度でも、て思ってた。
その後は、セフレにしてもらおう、なんて、思って。
そしたら断られてしまって。
よく分かんなくなった、けど。
玲央が会いたいって思ってくれる時だけで良いって思ってたし。
なんかそれに比べてしまうと、なんか。
今のオレの悩みって、すっごく、贅沢な気がしてきて。
一度どころか、毎日、一緒に居たいって言ってくれて。……何でだろ。
毎日可愛いって、言ってくれて。……どうしてだろ。
触りたいって、キスしたいって、いつも言ってくれて。……どーしてオレ?
惚れてるって覚えといてって言ってくれて。……ここはもはや意味が分からないけど。
すべてにツッコミを入れながらではあったけれど。
状況としては、もう、オレ、すごく、嬉しいというか。
――――……居られる限り、目の前の玲央を見て、居られれば幸せなのかな、なんて、思えてくる。
ちょうどそこまで考えた時に、曲が終わって、そこで勇紀が、おわりー!と叫んだ。拍手で、「すごくカッコよかった」と言ったら、皆がふ、と笑顔になった。
「優月、今日こそ一緒にご飯食べに行こうよ!」
勇紀が遠くから叫んでくる。
玲央は、マイクを置いて、すぐオレの所に来て。
「嫌だったらいいぞ?」
なんて言ってくる。
「玲央、邪魔すんなよー!甲斐と颯也も、優月と話したいって!色々聞きたいし」
玲央の言葉がしっかり聞こえてる勇紀が、また叫んでる。最後の方は、すごく楽しそうに笑いながら。
「……玲央はどうしたいの?」
そう聞いてみると。
「んー……嫌だけど、あいつらと、行くか?」
「嫌だけどって……」
苦笑いを浮かべてしまっていると。
甲斐と颯也が帰り支度をし終えて、近づいてきた。
「行こ、優月」
颯也がそう言って、ふ、と笑う。
「優月が居るとこで、玲央から話聞きたいってのもあるし」
甲斐が、ニヤニヤして玲央を見ながら言った。
玲央はとっても嫌そうにしながらも。ふ、とオレを見つめてくる。
「……優月、行きたい?」
「え」
玲央に返事、任されてしまった。
でも、この嫌そうな顔は、オレの返事、分かってて言ってるはず。
ぷ、と笑ってしまいながら。
「行きたい」
言うと、玲央が「だよな……」とため息をついて。
他の3人が、よし行こう、と盛り上がった。
鞄をよいしょ、と持った所で。
玲央が、まだ少し嫌そうに。
「……お前、オレの変な話聞いても、平気?」
「え」
「嫌んなりそーなら連れてかない」
「え、なに、それ」
どういう事か分からなくて玲央を見上げてると、横で皆が、笑った。
「話聞いた位で嫌がられると思うよーな事、何かあんの? あんなら今すぐやめろよ」
「そーだよ、どーせ優月、玲央が遊んでたのは知ってるじゃん」
「つか、オレは、玲央がそれを気にするのが、本気で意味が分かんねえし」
颯也、勇紀、甲斐の順で、立て続けに言われて。
「ていうか、今オレ、お前らに話してねーけど」
玲央がため息をつきながら、睨んでる。
3人は、ぷ、と笑った。
オレは。
玲央がそんなこと、気にしてくれてるのが、なんか。
……可愛いな、なんて思ってしまって。
しばらく何も言えず、固まっていた。
ともだちにシェアしよう!