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第197話◇

 レジの前で甲斐が会計を済ませていて、店を出てから勇紀が言う。 「今日は、優月の歓迎会も込みだから、優月の分は奢りね。4人で割り勘~」 「え。いいよ、払うよ?」 「今日はいいよ」  玲央が言って、皆も頷いてくれるので、それ以上は言わず、ありがとう、と伝えた。エレベーターで降りて、道の隅で丸くなる。 「今日はもう帰ろ。明日あるし。優月、また明日ね、待ってるからね」 「うん。頑張ってね」 「早く寝ろよ、特に玲央」  颯也がじろ、と玲央を見てる。 「今日は程々にして、とっとと寝る事」 「……分かってる」 「何その間。お前、分かってるかー? 優月、今日は拒否れよ?」  甲斐に言われて、瞬間的に真っ赤になった。 「つか、虐めんな」  玲央に肩を掴まれて、後ろに引かれて、玲央にくっついてしまう。  触れられるとドキドキしてしまうのは、ほんとに変わらない。 「虐めてねーし。優月だって明日仕事なんだろ。無茶すんなよ」 「分かってる」  今度は即答して、玲央がオレをちら、と見下ろして。 「あれだけで何でそんな赤くなるかな……」  すり、と頬を撫でられて、ぷ、と笑われる。  ……っ赤いのは、甲斐のセリフだけじゃないんだけど。  ……玲央が肩掴んで引き寄せるからだし。 「さ。帰ろうぜ。――――……じゃあな」 「おやすみー」 「優月、明日ねー」  皆で挨拶しあって。  3人は、駅の方に向かって歩いてく。  反対側、いつもは通学の人で混んでる道を玲央と並んで歩く。  この道は、完全に住宅街でほぼ居住者しか通らないので、大学生の通らないこの時間になると、ほとんど人は歩いてない。 「今日はいつものマンションに行く。その方が明日お前んち行くの楽だから」 「うん」  ん?  今日は……? って?? 「次は、オレんち連れてく」 「――――……え」 「あっちなら料理もできるし」  玲央を見上げると、な?と、綺麗な瞳でまっすぐに見つめられて。  ふ、と優しく笑まれる。  見惚れてしまう位。  綺麗な、笑顔で。 「――――玲央……」  うん、と頷いて。  外だから抱き付くわけにもいかなくて。  玲央の腕にそっと触れた。  そしたら、クスクス笑った玲央に、手を繋がれた。  ――――……玲央、大好き。  どうしてとか。  なにがとか。どこがとか。  なんか、どうでもいい位。  玲央が、大好きすぎて。  ――――……大好きな人の側に居れるのが、嬉しくて。  やっぱり、少し、泣きそうになる。    嬉しすぎると、泣きたくなるんだなあ、なんて。  今日はすごく思ってしまった。 「楽しかったか?」 「うん」 「変な話聞いた?」 「ううん。……仲いいんだなーって思った」 「はは。まあ。仲は良いかもな。……タイプ違うんだけどな」  言いながら玲央が笑う。 「練習場所とか、仲間との食事に誰か連れてくとか、そうそう無いから、新鮮だった」 「そうなの?」 「セフレは連れてかねえし。颯也の彼女はこういうのは来ないし。勇紀はコロコロ彼女変わるし、甲斐も彼女作んねえし。ほとんど無いな」 「……行って大丈夫だった?」 「大丈夫じゃなさそうに見えた?」  クス、と笑って、玲央が逆に聞いてくる。 「見えなかった。皆優しいし」 「じゃあ大丈夫って事だろ」 「うん」  頷いて、何となく笑顔になっていると。 「……優月ってさ」 「ん?」 「まわりの人間て、皆優しいって思ってる?」 「え? あー……うん、結構、思ってる、かな……」 「――――……」  良く分からない質問に、首を傾げながら、でも、そうかなと思って答えると、玲央がクスクス笑った。 「逆にお前に冷たくできる奴が居るなら見てみたいな……」  玲央がまた良く分からない事を言いながら、笑ってる。 「どういう意味?」 「いや。何でもない」  ふ、と笑って、玲央がオレの手を少し強く握る。 「早く帰って、シャワー浴びて、布団入ろ」 「――――……」 「今日は、なるべく何もしねえようにするから」 「なるべく……??」 「んー。じゃあ、少しだけにするから」  ……あ、何かするんだ。  ふ、と笑って玲央を見上げたら。 「何もしねえっつーのは、無理じゃね? だって、オレ、昼別れてからずっとお前に触りたいの我慢してたし」  唐突にまた、色っぽい雰囲気で流し目されて。  どき、として言葉に詰まる。

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