198 / 856
第198話◇
「優月、風呂入ろ」
玲央のマンションについたらすぐそう言われて。
……もう毎日一緒なのに、やっぱり恥ずかしい事に変わりはなくて。
全然慣れないなーなんて思いながら、体を洗ってたら。
つ、と背筋をなぞられた。
「……っ!」
声も出ないで、震えてしまって。
後ろでクッと笑い出す玲央を、もう涙目になって睨んでしまう。
「弱すぎ……」
伸びてきた手が脇に触れる。
「ひゃ……っ」
びくびくっ。体震えるのって、どうやれば止められるんだろ。
なんかもうすっごい恥ずかしいしっ……。
「お前、何でそんなに弱いンだよ」
「オ、レのせいじゃな――――……」
玲央が変な風に触るからだし……っ。
言いたかったのに、唇にキスされて、言葉を飲み込まされる。
舌、当たり前みたいに入ってきて。ゆっくり絡んでくるのを、感じる。
初めて、キスした日から、今日で、1週間。
月曜から毎日ここに来て、毎日、一緒にご飯食べて、学校の中でも会って。
毎晩、抱き締められて一緒に寝て。
なんか、1週間で、世界が、全然違くなっちゃった感じ。
今日。
…………玲央と。繋がっちゃったし…………っ。
思い出すだけで、恥ずかしい。
けど、嬉しくて。
ずっとずっと、玲央ばっかりが頭の中にあって。
「……ンん……」
舌、絡んで。
こんなに気持ち良いなんて、知らなかった。
ぞくぞくして。
少し瞳を開けると。
目の前に、めちゃくちゃ整った顔のドアップがあって。
どき、と胸がまた弾む。
「……ん、ふっ……」
息を、奪われるとか。
――――……舌、全部、溶けそうとか。
そんなの、考えたことも、無かったのに。
「――――……優月、やらしー顔してる」
くす、と笑う玲央が、唇を離してオレを見つめて、そんな風に言う。
そんな台詞、言われる事なんて、想像した事すらなかったし。
「……っ……玲央のせい、だよ……」
「ん。そーだな」
クスクス笑って、玲央がぷに、と両頬を手で挟む。
「オレが触ると、すぐやらしくなっちゃうもんな……」
ちゅ、と首筋にキスされる。
弱い刺激なのに。
背筋をゾクゾクしたものが、這い上がってくる。
「は。ほんと、すぐ感じるし――――……かわいーよな」
「…ん……っ!」
頬をぺろ、と、舐められて、びくんと、震えてしまう。
「……っれお……」
意地悪しないでよ、と思って。涙が浮かんだ瞳で、じっと見上げると。
玲央が一瞬、動きを止めてくれたけど。
「――――……ゆづき」
ぎゅ、と抱き締められて、またキスされてしまう。
………誰かの腕の中が、こんなに、幸せなんて、思わなかった。
そもそもオレ男だから。
抱き締める方だと思ってたし。
こんな風に、抱き締められる事があるなんて。
――――……それでその相手がこんなに愛しいとか。
……正直、ほんとは、意味が分からない。
あまりに変えられすぎて、怖い位だし。
あまりに、玲央の事ばっかりで、
……これで良いのかなって、思わなくも、ない。んだけど。
泡がシャワーで流されて。
2人でバスタブに入った。
後ろから抱き締められて、すごく密着してて、ドキドキしてると。
ちゅ、と頭にキスされた。
「――――……お前にしかしてない事」
「…………え?」
不意に言われた言葉に、何か分からなくて、振り返ると。
「頭撫でるの、お前にしかしてないって言ったろ」
「――――……あ、うん」
そういえばさっきそんな話したっけ。
頷きながらまた前を向いて、抱き締められるままに、お湯の中で玲央の体にすっぽりと埋まっていると。
「こんな風に風呂入るのも、お前としかしてない」
「――――……」
「頭、洗ってやるのも、ドライヤーしてやるのも、お前だけだし」
「――――……」
「……逃げられたのを追いかけたのも、初めてだし。泣かせたって思って、焦って謝りに行くとかも初だし」
「――――……」
「惚れてる、とか、言ったのも初めてだし。一緒に暮らそうとか、何も考えないで言えたのも初めて」
「――――……」
「まあそれは、考えて言えって話かもしんねえけど」
クスクス玲央が笑う。
――――……えっと……。
なんか…。
それ全部オレだけにしかしてないの?と思うと。
…………玲央の言ってる言葉が、嬉しくて。
何て答えたらいいのか、よく、分からない。
ともだちにシェアしよう!