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第198話◇

「優月、風呂入ろ」  玲央のマンションについたらすぐそう言われて。  ……もう毎日一緒なのに、やっぱり恥ずかしい事に変わりはなくて。  全然慣れないなーなんて思いながら、体を洗ってたら。  つ、と背筋をなぞられた。 「……っ!」  声も出ないで、震えてしまって。  後ろでクッと笑い出す玲央を、もう涙目になって睨んでしまう。 「弱すぎ……」  伸びてきた手が脇に触れる。 「ひゃ……っ」  びくびくっ。体震えるのって、どうやれば止められるんだろ。  なんかもうすっごい恥ずかしいしっ……。 「お前、何でそんなに弱いンだよ」 「オ、レのせいじゃな――――……」  玲央が変な風に触るからだし……っ。  言いたかったのに、唇にキスされて、言葉を飲み込まされる。  舌、当たり前みたいに入ってきて。ゆっくり絡んでくるのを、感じる。  初めて、キスした日から、今日で、1週間。  月曜から毎日ここに来て、毎日、一緒にご飯食べて、学校の中でも会って。  毎晩、抱き締められて一緒に寝て。  なんか、1週間で、世界が、全然違くなっちゃった感じ。  今日。  …………玲央と。繋がっちゃったし…………っ。  思い出すだけで、恥ずかしい。  けど、嬉しくて。  ずっとずっと、玲央ばっかりが頭の中にあって。 「……ンん……」  舌、絡んで。  こんなに気持ち良いなんて、知らなかった。  ぞくぞくして。  少し瞳を開けると。  目の前に、めちゃくちゃ整った顔のドアップがあって。  どき、と胸がまた弾む。 「……ん、ふっ……」  息を、奪われるとか。  ――――……舌、全部、溶けそうとか。  そんなの、考えたことも、無かったのに。 「――――……優月、やらしー顔してる」  くす、と笑う玲央が、唇を離してオレを見つめて、そんな風に言う。  そんな台詞、言われる事なんて、想像した事すらなかったし。 「……っ……玲央のせい、だよ……」 「ん。そーだな」  クスクス笑って、玲央がぷに、と両頬を手で挟む。 「オレが触ると、すぐやらしくなっちゃうもんな……」  ちゅ、と首筋にキスされる。  弱い刺激なのに。  背筋をゾクゾクしたものが、這い上がってくる。 「は。ほんと、すぐ感じるし――――……かわいーよな」 「…ん……っ!」  頬をぺろ、と、舐められて、びくんと、震えてしまう。 「……っれお……」  意地悪しないでよ、と思って。涙が浮かんだ瞳で、じっと見上げると。  玲央が一瞬、動きを止めてくれたけど。 「――――……ゆづき」  ぎゅ、と抱き締められて、またキスされてしまう。  ………誰かの腕の中が、こんなに、幸せなんて、思わなかった。  そもそもオレ男だから。  抱き締める方だと思ってたし。  こんな風に、抱き締められる事があるなんて。  ――――……それでその相手がこんなに愛しいとか。  ……正直、ほんとは、意味が分からない。  あまりに変えられすぎて、怖い位だし。  あまりに、玲央の事ばっかりで、  ……これで良いのかなって、思わなくも、ない。んだけど。  泡がシャワーで流されて。  2人でバスタブに入った。  後ろから抱き締められて、すごく密着してて、ドキドキしてると。  ちゅ、と頭にキスされた。 「――――……お前にしかしてない事」 「…………え?」  不意に言われた言葉に、何か分からなくて、振り返ると。 「頭撫でるの、お前にしかしてないって言ったろ」 「――――……あ、うん」  そういえばさっきそんな話したっけ。  頷きながらまた前を向いて、抱き締められるままに、お湯の中で玲央の体にすっぽりと埋まっていると。 「こんな風に風呂入るのも、お前としかしてない」 「――――……」 「頭、洗ってやるのも、ドライヤーしてやるのも、お前だけだし」 「――――……」 「……逃げられたのを追いかけたのも、初めてだし。泣かせたって思って、焦って謝りに行くとかも初だし」 「――――……」 「惚れてる、とか、言ったのも初めてだし。一緒に暮らそうとか、何も考えないで言えたのも初めて」 「――――……」 「まあそれは、考えて言えって話かもしんねえけど」  クスクス玲央が笑う。  ――――……えっと……。  なんか…。  それ全部オレだけにしかしてないの?と思うと。  …………玲央の言ってる言葉が、嬉しくて。  何て答えたらいいのか、よく、分からない。

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