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第200話◇

 一緒にシャワーを浴び終えた。いつものようにドライヤーをかけ終えて。  リビングに戻って水を飲んでると、玲央のスマホが震え出した。 「こんな時間に誰――――……あ……」  少し眉を顰めてスマホを見た玲央は、ため息をつきながら、通話ボタンを押した。 「……もしもし、親父?」  ――――……お父さん? 「……あぁ、ん、そう。明日。ああ。…は? 母さん?」  何となく静かに、お水を飲んで大人しくしていると。  少しして、玲央が電話を切った。 「……急に母さんが来たいとか言い出して」 「明日来るの?」 「断った。来ると面倒臭いんだよ……」 「めんどくさい?」 「いつも忙しくて放置してっから、思い出したようにたまーにうるさいんだよ……来ると、オレの知り合い皆に挨拶して回る感じ……」  あは、と笑ってしまう。 「可愛いお母さんだね」 「いや、可愛くねえから。……人数も多くて相手も出来ねえからって断ったけど……来ると大変だから敢えて言ってねーのに……」  ふふ。お母さん、玲央が可愛いんだろうなー。  何かぶつぶつ言って困ってる玲央は、オレから見ても可愛い……。 「……笑ってねーで、寝よ」  クスクス笑ってたら、苦笑いの玲央にそう言われた。 「あ、うん」  髪も乾かしたし。歯も磨いたし。水も飲んだし。  寝る準備完了、て事で、2人でベッドに向かう。  ベッドに乗って、布団に並んで足を入れて。  オレは、隣の玲央を見上げた。 「明日、頑張ってね、玲央」 「ん。待ってるから、なるべく早く来いよな?」 「うん」 「お前も仕事頑張れよ?」 「ん!」 「おいで、優月」  腕を優しく惹かれて、ぎゅ、と抱き締められて、向かい合わせで横になって。少し見つめあった。なんだか、自然と、笑みがこぼれる。 「触りたいけど――――……明日早いから我慢する……」 「――――……」    ふ、と苦笑いしつつ、うん、と頷くと、頬にキスされた。 「――――……おやすみ優月」 「ん。おやすみ……」  髪に触れる優しい手に、すぐに眠気を誘われて。  あっという間に眠りに落ちた。 ◇ ◇ ◇ ◇    翌朝、玲央と朝食を済ませてから、オレのマンションに寄ってもらった。  久しぶりに着るので、ついたままだったクリーニングのタグを外してから、シャツを着て、パンツを履いてベルトをしめる。襟を立ててネクタイを締めていると、玲央がふ、と笑った。 「……似合わない?」 「いや。似合う」 「何で笑ったの?」 「スーツって。初めて思ったけど」 「うん」 「すげえ脱がせたくなるんだなーって」 「……っ……着たばっかりだから、やめて」 「今じゃなきゃいーって事?」 「……そ、んな事は、言ってない……」 「きっちり着こまれると、崩したくなるなー……なんか、エロいな腰回りとか……」 「わー、触らないで……っ」  腰に触れてくる玲央から一歩引きながら、ネクタイを締め終えて、ジャケットを着た。 「……崩さないでね」 「……今度崩させて」 「……えっと……いつかね」  真っ赤にならないよう、何とか対応してるのに、楽しそうな顔をした玲央に手を引かれて、キスされてしまうと、また頬が染まる。  もうどうしようもない……。  電車に乗って、ドアの隅に玲央と並んで立つ。 「チケットを受付に見せれば案内してくれるから。あと、打ち上げどーする?」 「とりあえず蒼くん来てからにする。あんまり玲央の近くに居れないだろうし、邪魔になっても困るから」 「分かった。……って、邪魔にはなんねーけど」 「うん」 「あのさ」 「ん?」 「オレ、もう誘いには乗らねーから」 「――――……」 「オレからも誘わないし」 「――――……」 「今日はまだ周りにそういう奴ら来ると思うけど……気にしなくていいから。その内来させなくするし」  黙って玲央を見上げて。  うん、と頷いた。  とりあえず。  今の玲央がそう思ってくれてるんだって事は分かった。 「じゃあな、優月。あとでな。気を付けて来いよ?」 「うん」  ポン、と頭に手が置かれて、くしゃ、と撫でられた。  さすがにこんなに人がいるとこでは、キスしないんだ。  って当たり前か。なんて、可笑しくなりながら、玲央が電車を降りていくのを見つめる。  玲央は、歩いて行かずに、電車が出るのを、待っててくれてるみたい。 「玲央、オレすっごく楽しみにしてるから」 「――――ああ」  くす、と笑う玲央は。  本当、カッコよくて。 「ライブ終わったら、とりあえず電話するから」 「うん」  頷いた所で、アナウンスが流れて、ドアが閉まった。ドア越しに見つめあって。ふ、と笑う。電車が進んで、離れていく玲央に、バイバイと手を小さく振った。  こんなにずっと居るのに、離れるのが寂しいとかまた思っちゃうし。  でも、別れる前の玲央を想うと、心が、ふわりと、弾むし。  どんだけオレ、玲央のこと、好きなんだろ。  今日。ライブ、楽しみだなあ……。      一緒にシャワーを浴び終えた。いつものようにドライヤーをかけ終えて。  リビングに戻って水を飲んでると、玲央のスマホが震え出した。 「こんな時間に誰――――……あ……」  少し眉を顰めてスマホを見た玲央は、ため息をつきながら、通話ボタンを押した。 「……もしもし、親父?」  ――――……玲央の、お父さん。  なんとなく、静かにしとこう、と思う。 「……あぁ、ん、そう。明日。ああ。…は? 母さん?」  お水を飲みながら、大人しくしていると。  少しして、玲央が電話を切った。 「……急に母さんが来たいとか言い出して」 「明日来るの?」 「断った。来ると面倒臭いんだよ……」 「めんどくさい?」 「いつも忙しくて放置してっから、思い出したようにたまーにうるさいんだよ……来ると、オレの知り合い皆に挨拶して回る感じ……」  あは、と笑ってしまう。 「可愛いお母さんだね」 「いや、可愛くねえから。……人数も多くて相手も出来ねえからって断ったけど……来ると大変だから敢えて言ってねーのに……」  ふふ。お母さん、玲央が可愛いんだろうなー。  何かぶつぶつ言って困ってる玲央は、オレから見ても可愛い……。 「……笑ってねーで、寝よ」  クスクス笑ってたら、苦笑いの玲央にそう言われた。 「あ、うん」  髪も乾かしたし。歯も磨いたし。水も飲んだし。  寝る準備完了、て事で、二人で寝室に向かう。  ベッドに乗って、並んで布団に足を入れて。  オレは、隣の玲央を見上げた。 「明日、頑張ってね、玲央」 「ん。待ってるから、なるべく早く来いよな?」 「うん」 「お前も仕事頑張れよ?」 「うん!」 「――――……おいで、優月」  腕を優しく引かれて、ぎゅ、と抱き締められると、向かい合わせで横になって、少し見つめあった。  なんだか、自然と、笑みがこぼれる。 「触りたいけど――――……明日早いから我慢する……」 「――――……」    ふ、と苦笑いしつつ、うん、と頷くと、頬にキスされた。 「――――……おやすみ優月」 「ん。おやすみ……」  髪に触れる優しい手に、すぐに眠気を誘われて。  あっという間に眠りに落ちた。 ◇ ◇ ◇ ◇    翌朝、玲央と朝食を済ませてから、オレのマンションに寄ってもらった。  久しぶりに着るので、ついたままだったクリーニングのタグを外してから、シャツを着て、パンツを履いてベルトをしめる。襟を立ててネクタイを締めていると、玲央がふ、と笑った。 「……似合わない?」 「いや。似合う」 「何で笑ったの?」 「スーツってさ……初めて思うんだけど」 「うん」 「すげえ脱がせたくなるんだなあって」 「……っ……着たばっかりだから、やめて」 「今じゃなきゃいーって事?」 「……そ、んな事は、言ってない……」 「きっちり着こまれると、崩したくなるなー……なんか、エロいな腰回りとか……」 「わー、触らないで……っ」  腰に触れてくる玲央から一歩引きながら、ネクタイを締め終えて、ジャケットを着た。 「……崩さないでね」 「……今度崩させて」 「……えっと……いつかね」  真っ赤にならないよう、何とか対応してるのに、楽しそうな顔をした玲央に手を引かれて、キスされてしまうと、また頬が染まる。  もうどうしようもない……。 ◇ ◇ ◇ ◇  それから、駅に向かって、電車に乗った。  ドアの隅に玲央と並んで立つ。 「チケットを受付に見せれば案内してくれるから。あと、打ち上げどーする?」 「とりあえず蒼くん来てからにする。あんまり玲央の近くに居れないだろうし、邪魔になっても困るから」 「分かった。……って、邪魔にはなんねーけど」 「うん」 「あのさ」 「ん?」 「オレ、もう誘いには乗らねーから」 「――――……」 「オレからも誘わないし」 「――――……」 「今日はまだ周りにそういう奴ら来ると思うけど……気にしなくていいから。その内来させなくするし」  黙って玲央を見上げて。  うん、と頷いた。  とりあえず。  今の玲央がそう思ってくれてるんだって事は分かった。 「じゃあな、優月。あとでな。気を付けて来いよ?」 「うん」  ポン、と頭に手が置かれて、くしゃ、と撫でられた。  さすがにこんなに人が居るとこでは、キスしないんだ。  って当たり前か。なんて、可笑しくなりながら、玲央が電車を降りていくのを見つめる。  玲央は、歩いて行かずに、電車が出るのを、待っててくれてるみたい。 「玲央、オレすっごく楽しみにしてるから」 「――――ああ」  くす、と笑う玲央は。  本当、カッコいいなと思う。 「ライブ終わったら、とりあえず電話するから」 「うん」  頷いた所で、アナウンスが流れて、ドアが閉まった。ドア越しに見つめあって。ふ、と笑う。電車が進んで、離れていく玲央に、バイバイと手を小さく振った。  こんなにずっと居るのに、離れるのが寂しいとかまた思っちゃうし。  でも、別れる前の玲央を想うと、心が、ふわりと、弾むし。  どんだけオレ、玲央のこと、好きなんだろ。  今日。ライブ、ほんとに、楽しみだなあ……。

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