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第223話◇
――――……あ。
ふと玲央の方を見たら。
勇紀が言った女の子が離れた後で、昨日の、玲央が「奏人」と呼んだ男の子が、玲央の隣に座った所だった。
「勇紀、あのさ。今、玲央と居る子ってさ」
「ん?……ああ。奏人ね。奏でる人って名前ね」
うん。奏人くん。
「奏人、くんって、玲央と長いの?」
「うん。2年……もうちょっとかなあ。高校の時、ライブハウスで知り合ったんだよね。で、オレらとは別の附属校に居てさ。大学は一緒だねーとかいう話をしたのが、最初かな。綺麗だし、目立つし。――――……結構、最初はアピールもすごくて」
「――――……」
「玲央が、面倒なのが嫌いって知ったら、結構引いたりして、そういう空気読むのうまいからかな。長く続いてて」
「……そっか。玲央はさ、奏人くんとも、やめる、の?」
「あぁ。全部終わりにするって言ってたから。そうだと思うよ」
「――――……」
なんと言っていいか分からなくて、少し俯いていると。
蒼くんが、飲み物を持って戻ってきた。
「ほら、優月。お茶」
「あ。ありがと」
勇紀の隣に座って、蒼くんは持ってたグラスに少し口を付けた。
「あ、そうだ。ここの料金って、どこで払うのか分かる?」
聞かれた勇紀は、にっこり笑った。
「玲央が招待したって事になってる人からは取らないので、今回は大丈夫ですよ」
「――――……玲央のおごりって感じになる?」
「んー、ていうか、そこらへんは会社持ち、です」
「……じゃあまぁ、いっか」
そんな会話に、ちょっと不思議になって。
「玲央のおごりだったら、蒼くんどうしたの?」
そう聞いてみると。
「年下に奢られるとか、ないだろ?」
べ、と舌を出して、そんな風に言う。
あ、なるほど。蒼くんて、そういう人だった。
「それより、お前、変な顔してるけど。何?」
「?――――……変な顔?」
「あ。奏人ともやめるって話してたからかな?」
「何だそれ?」
蒼くんが勇紀に直で普通に聞いてる。
「あーと……蒼さんて、どこまで知ってます……?」
「んー…多分大体全部?」
クスクス笑って応える蒼くんに、勇紀がオレを振り返るので、うん、と頷くと。
「んーと……玲央が、優月に信じて欲しいから、セフレを全部ちゃんと終わりにしたいって、社長とかも込みでオレらに相談してきてて。今、玲央と話してる奴、見えます?」
勇紀の言葉に、ふ、と何気なく視線を流して。
「学校が一緒だから終わりにくいとは思うし、玲央の事がめっちゃ大好きで……優月も学校で会ってて知ってるから、奏人とも終わりにする気なのかな?ってさっき聞かれて」
「――――……」
「玲央は全部終わりにするって言ってたからそうだと思うよって言ったんですけど……そこで優月がちょっと固まってて」
「――――……だってさ。玲央のこと大好きなの、なんか分かるし……」
すごく綺麗な子だし。
――――……多分オレとなんて、絶対納得できないんじゃないかなって。
「……それは、玲央が決める事で、優月が気にする事じゃないだろ」
蒼くんがめっちゃため息とともに、苦笑いを浮かべながらそう言った。
「優月がセフレで良いとか言ってたの、もう違うんだろ?」
「――――……」
「あいつが今まで自由にしてたのは別に悪いとは思わないけど。どんな関係だって、色々変わる時はあるんだよ。 特に、あいつがお前と居たいって言い出したんだから、そこは、優月が気にしてもしょうがない」
蒼くんの言ってる事は、すごく分かる。分かってるんだけど。
なんか玲央の事、大好きなの分かるから。
オレ、今、玲央に。
他の人好きだから、もう会えないとか言われたら。
……どうしたらいいか、わかんないし。
2年以上も、玲央の事を好きだったのに。
多分、そういう人、他にもきっといっぱい居ると思うし。
…………なんか、それが、会って1週間の人のせいとか知ったら。
そんなの受けれるかな。と思うと。
「そういうのが嫌だから、玲央は、恋人じゃなくて、セフレって形にしてきたんだよ。 だから、多分、ほとんどの子は、納得せざるを得ないと思うんだけど……嫌がる子もいるかもしれないけど、もともと恋人とかではない訳だしさ――――……優月は、自分の気持ちだけ考えなよ?」
勇紀にも、そう言われて。
うん、と頷くけど。
なんか。好きな気持ちが分かりすぎる位、分かるから。
なんか、分かった、て、明るく言えない、というか。
――――……うーん……。
オレが気にしてもしょうがないっていうのも、分かってるんだけど。
「お前ほんと、考えすぎ。人の気持ち考えるのはお前のいいとこだけど、こういう恋愛問題で、そこは、考えんなよ」
蒼くんに、苦笑いされる。横で勇紀も、うんうん、と頷いてるし。
うん。2人が言ってる事は、分かっては、いる。
考えたからって、オレ、玲央から離れますとか、なれないし。
そうなんだけど。
2人で話してる、玲央と奏人くんの様子が、すごく気になってしまう。
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